6話 初めての……
アリスが、鼻歌交じりで軽いスキップをしながら、先頭をご機嫌で歩いている。
「そりゃあ、パーティだよ? ……あ、そういえば! ふたりはもう、魔物と戦った?」
アリスが、後ろを振り向いて尋ねてきた。
さっきはユキノが活躍して……。俺は格好良く応援をしたのに、応援をした本人が戦闘が無経験って恥ずかしいよな……
「……俺は、無いかな。魔物に出会わなかったし」
「わたしも、ない」
ユキノも申し訳無さそうに返事をした。
ユキノは僧侶で、戦闘職じゃないから戦闘経験は無くて当たり前だ。
俺の返事を聞いても、バカにする様子もなく安心したが、表情が変わったような気がした。
「うんうん、大丈夫! 今から戦いに行くから!」
なに? え? ちょ、今から?? 俺、魔法の練習中なんだけど? ここに来てから魔法を1回しか使ったことがないんですけど?
アリスの言葉に動揺をして、ユキノと顔を見合わせていると重たい足音が聞こえてきた。アリス表情がニヤリと笑いながら、アイテムボックスから剣を取り出した。
初めての魔物が現れたので、俺は軽いパニックを起こした。
「俺は、どうすれば良いんだ? 魔法を放てば良いのか?」
「こわいっ」
「ユキノは、周りに気を付けて隠れてて」
取り敢えずユキノに安全な場所に隠れるように指示を出し、魔法をいつでも放てるように腕を魔物に翳した。
アリスは戦闘に慣れているようで、怯えた様子どころか……なんだか、振り返った表情が嬉しそうに見えるのは気のせいか?
視線を魔物に戻したアリスが、剣を構え直した。
「ふふんっ、君たち〜。このアリス様が、戦って差し上げましょう!」
慣れた感じで戦うアリスを眺めているだけになってしまった。アリスって強いんだな……
剣を上手く使い魔物のヒョウに攻撃を喰らわせ確実にダメージを稼いでいた。傷を負ったヒョウから血が滴り落ちていたが、簡単には倒れることはなかった。
「ミスティー! 魔法!」
突然、アリスが指示を出してきたが、完全に観戦モードに入っていて油断をしていた。
「あ、うん」
少しタイミングが遅れたが2回目だったので、スムーズに全身から魔力が手のひらに集まるのが分かった。
「アリス、退いて!!」
アリスが合図で退いたのを確認し、手のひらに魔力が集まったのを一気に放った。
ドンッ!と手のひらを押された様な衝撃を受けて、体が後ろに突き飛ばされた。
アリスの攻撃で弱っていたヒョウの頭に命中した。その衝撃でクロヒョウの大きな身体が、大きく後ろへ吹き飛び地面に倒れた。
その地面に力なく倒れるクロヒョウの身体が、紫色に光り霧散して消えていった。
アリスが、魔物を倒したことでニヤッと笑い嬉しそうにし、独り言を言っていた。
「やった! お金! って、何してるの?」
俺達に気付き声を掛けてきて、心配そうな表情をして首を傾げて聞いてきた。
この状況を見て分かるだろ……と、思うが……言えない。 それに自分の魔法に耐えられずに吹き飛んで……ダメージを受けたなんて言えないってば。
アリスが、近づいてきて心配そうに手を差し出してくれた。
え? アリスが手を? 女の子の手を握るなんて……久しぶりすぎる! 中学の時の幼馴染の……って、そんな仲じゃないから手は握ってないか。なら、覚えてないくらい久しぶりなんじゃないのか!?
ドキドキ……しながらアリスの手を掴むと、柔らかく温かくて、とてもゲームだとは思えない。そのまま手を引かれ立ち上がった。
「ありがと。助かったよ! 俺達二人だけじゃ……終わってた!」
ユキノも心配そう駆け寄ってきて、俺達二人に治癒魔法を掛けてくれて、恥をかかずに済んだ。
実は腰を強打していて、痛みがあったが恥ずかしくて言えずにいた。
「あ〜じゃあ、次もサクッと倒そう!」
は? まだ討伐を続ける気? ムリムリ、精神的に疲れてきたし。ユキノも嫌そうな顔をしている。
「ん〜? なぁに?」
アリスが独り言を言い始めた。
誰かと話をしているのか? 良くわからない? 離れた場所に他にもパーティとか友達と一緒にプレーをしてるのかな?
「え〜! 戦いたい! 剣欲しい!」