3 普通の冒険者として
生活費だけ稼ぐつもりで依頼を受けていたが、押さえても知らず知らずに狩る魔物のランクが上がってしまい、稼ぎもランクも上がって行った
「そろそろAランクの試験を受けてくれって、ギルド長が言ってたわよ」
そう受付嬢に言われたが
「俺はB以上はいらないよ、金持ちとか貴族とかと関わるのは嫌だから」
「どうしてなの」
「俺は生活していければそれで良いんだ、名誉とか名声は欲しくない」
「変わってるわね、普通男だったらそれらを望むんじゃないの」
「変わっているかもしれないけど、俺はそうなんだ」
そう言って昇格試験進められても受けない俺の事が噂になり
「Aランクの連中のなかには貴方がギルドランクを馬鹿にしている、って怒っている人もいるらしいわよ」
どうしてそうなるのか分からない、秘密にしている力を醸し出してしまっているのか、だったら気をつけなければ、冒険者も上位になると雰囲気から力を見抜くと言うが、実力がAランク以上と言う噂がギルド内を独り歩きしているのだ、事実ではあるがそれを知る者はいない筈だ知っているのは俺自身だけだ、Aランクはおろか以下のランクの誰とも一緒に行動を共にした事は無いが、そう言う事でAランクの連中はのなかには誤解している者もいるようだ、ほとんど全ての冒険者は出来る限り上のランクになりたいと望んでいる、それを断る奴がいたら面白くないと言う気持ちは分かる、だが噂が噂だけに俺の実力が分からないからか、用心して突っかかってくる奴はいないで済んでいる
独り立ちしてから一年過ぎただけだが、冒険者になろうと決めた時考えていた事とは恐ろしい程違う、何十倍も何百倍も内容の濃い一年だった、それを記念して自分を祝う為一人高級レストランに行く事にした
始めてはいる高級な店で始めて食べる高級な料理を味わい、紅茶を飲んで寛いでいると
「おや、アローじゃないか、お前生きていたのか、こんな高級な所に来るなんて場所を間違えているぞ、料理が不味くなるから出て行けよ」
商会の会長の息子エディイだった、顔を見てももう怖くも何ともない、そう言えば同じ街に居て今迄合わなかったのが不思議なくらいだが、今迄合わずに居たので存在を忘れていたが相変わらずうざったい奴だ
「煩いな、お前の店じゃないだろう、俺にかまうな向こうに行けよ」
「何だとぉ、てめえ、何時からそんなに偉くなった」
「だから煩いと言っているだろう、相変わらずギャンギャンうるさいやつだなぁ」
「貴様、恩を忘れてその口の利き方は何だ」
「恩はただ働き五年で十分返した、それは会長も認めている、大体おまえに何の恩がある、恨みこそあれ恩など欠片もないぞ、クズが」
エディイの取り巻きだろう連れていたその一人が
「エディイさんに対してなんて口の聞き方だ」
これは話しだけでは済まない、店に迷惑をかけ手は申し訳ないので
「煩い奴らだな、野良犬の集団より始末が悪い、相手をしてやるから表に出ろ」
相手は五人だが対して強そうなやつはいなかった、レストランの客や従業員が見ていたが支配人らしき人に
「すみません、野良犬の様な者達がお店に迷惑を賭けてはいけないので、御仕置きしに外に出ますが戻りますので、おつりはその時」
そう言って金貨を渡した、エディイ達にわざと聞こえる様に言ったので全員が青筋を立てて俺を睨んでいた、レストランお外に出ると通りはまだ結構な人通りがあった
「さて、野良犬共もどうする」
そう言う俺に向かって全員が殴り掛かって来たが、俺が避けただけで同士討ちして三人が倒れた、取り囲んで俺を殴ろうとしたが目標の俺がいなくなれば、正面の味方同士の殴り合いになるのは当然だ、殴る為に腕に神経が行っているので体は隙だらけ、殴りかかる拳を避けながら隙だらけの体をすり抜け円の外に出ると、後ろから四人を蹴飛ばして行くと四人は地面に転がった、立っているのはエディイ一人になった
「さぁ、どうする、もうお前一人だぞ、かかってこい」
「お前、どうしてそんなに強くなった」
「お前には関係ないよ、来ないならこっちから行くぞ」
「ま、待て、俺に何をする気だ」
「殴り合いをする気で俺にかかって来たんだろう、殴るに決まっている」
「待て、元主人の俺を殴るのか」
「主人じゃあないよ、お前は俺にとって仇のような奴だ。商会をためたのもお前の顔を見るのが嫌になったからだ、そのくらい分かれよ」
「やめて、止めてくれ、俺が悪かった」
「お前は何もしない俺を何回殴った、何回蹴った、その分のお返しをしてやるよ、親の威を借るなきゃ何にもできないクズに、世の中って言う物を教えてやるよ」
「頼む、勘弁してくれ」
股間が黒くなっている、小便を漏らしたようだがこれで許す気は無い、腰を抜かして尻餅をついているエディイに近づき
「はをくいしばれ」
「ひ~~~」
往復ビンタの後軽く顎を殴ると気絶した、それをみていた取り巻きの者達に
「まだやるか」
そう言うと全員がブンブンと音がするかと思うほど首を左右に振った
「だったら此奴を連れて帰れ、通行の邪魔だ」
「はひー」
エディイが抱えられて去るのを見送った後店に戻り、飲みかけの紅茶を飲んでいると
「貴方、やるわね」
俺と同年位で傍にメイドを連れた女性が声をかけて来た、ハッとするほどきれいな人だったが俺には縁の無い世界の人だと分かる
「今の騒ぎの事ですか」
そう言うと
「そう」
「あいつらが弱すぎるんですよ、弱い犬ほど良く吠えるってあいつらの事でしょう」
「それにしても一人で素人とは言え五人相手に余裕だったわね」
「見ていたんですか、もの好きですね」
昔なら身分のありそうお嬢様にこんな口は効けなかっただろうが、今の俺はどこか怖いもの無しと言う気持ちがある事に気づ居た、慢心は良くない気をつけねば、そんな事を思いながら
「失礼しました、それで何か御用でしょうか」
【お名前を教えて頂けるかしら」
「冒険者のアローと言いますが」
「冒険者なら指名依頼が出来るわね」
「指名はAクラス以上です、俺はBクラスなので指名は無いです、もしあったとしても俺は断りますけどね」
「どうして」
「育ちが悪いので、上流階級の人達と関わりたくないんです、じゃあすみませんが俺はこれで失礼します」
一礼してカウンターに向かうと
「トラブルを未然に防いでいただきありがとうございました」
そう言っておつりを渡してくれた
「いえ、あいつら、原因は俺ですし、御馳走様でした」
「またのお越しをお待ちしております」
レストランを後にした、偶然ながらエディの泣きっ面を見る事が出来て、気分は爽快だった、俺ってそんな人間だったんだ