2 記憶
エディイは俺の寝ている時でも部屋に来て蹴飛ばしたり殴ったりした、それが無いと思うと久しぶりにぐっすり寝る事が出来た、そして嬉しかったのは父ちゃんと母ちゃんの優しい笑顔の夢を見た事だ、朝起きると枕が濡れていたが今までのような悔し涙ではなく、父と母の夢を見られた嬉し涙だと思う、独り立ちした初めての夜に父ちゃんとお母ちゃんが頑張れと言ってくれたような気がする、顔だけははっきり覚えていたが内容は覚えていなかった、夢なんてそんなものだ思いその時は深く考えなかった
ギルドに行き初めての依頼を受けた、安全な薬草の依頼で採取袋を狩りて
「頑張るぞ」
張り切ってギルドを出た、薬草の見本を何種類か見せてもらいなまえとやくそうの花の色や葉の形を覚えた、忘れないように名前を口ずさみながら歩いた、名前を呟くたびにその薬草が写真のように頭に浮かんだ
「夢の事は忘れるが、現実の事に関しては生まれた時から結構記憶力だけは良いからな、スキルのお陰だったかもしれないな」
商会に居る時も記憶力の良い事は色々と重宝した、中でも働くのに必要だからと文字と計算を教えられた時、すぐに覚えられた事は今でも不思議に思っている、それもスキルのお陰だったのかもしれない、その時は言われたから覚える程度に考えていたが今は凄く徳をしたと思っている、今後大いに役立つと事だったと思う、商会に居て良かったと思うのはそれくらいだが、無給だが食べさせてくれ今まで生きて来られた事は感謝しなければならないだろう、そのお陰で虐待こそ受けたが奴隷に落ちる事もなかったのだから、薬草の採取ははっきり記憶していたお陰で薬草を探す事が楽だった、目的の薬草を見つけ採取に夢中になっていると、何処かから呪文のような声が聞こえて来た、声の方向を見ると冒険者らしい人が灰色の狼のような魔物と対峙していた、魔物に手を翳しその人の手から絵の様な柄の様な輪が飛んで行くと魔物が一瞬で倒れた、初めて見た光景に興奮したまま立っているとその人が近づいて来て
「坊主、薬草を採取するときは周りにも注意を払わないと危ないぞ、俺がいたから良かったがな」
あれはグレーウルフと言う魔物で俺を狙っていたのだと言われた、それを聞いてぞっとした、綺麗な輪が飛んで行ったなどと見とれている場合ではなかったのだ
「すみません、ありがとうございました」
「此処はほとんど魔物がいないギルド推奨の場所だから無理はないか、でも気を付けた方が良いぞ、魔物は何処に行っても絶対居ないという事は無いからな」
そう言うとその人は行ってしまった、男らしくて優しくてその人の居城姿を見送りながら、俺もあんなカッコいい冒険者になれたらなぁ、そんな事を思った後、言われた事を肝に銘じてこれからは気をつけよう、そう心に誓った
薬草採取何て楽勝などと甘い考えをして命拾いをしたのだが、考えなくてもあの人は命の恩人だったのに例の言葉だけで、何もせずに行ってしまったが良いのだろうか気になった、目標の量より量より多めに採取出来ていたので、時間が早いが今日はこれで帰る事にした、冒険者に言われたという事もあるが一人でいるのが怖くなったのだ、帰り道
「でも、あの人の打ち出した輪は何だろう、綺麗だったな、あの輪が当たったラウルフが倒れたという事は、あれが魔法と言うものかもしれないな」
魔法は習わなければ使う事は出来ない、習うのには莫大な金がかかるので平民で魔法を使える者は少ない、稀に魔力が多く才能に長けたスキル持ち生まれると、貴族が後援者となり魔術師になるそうだが、平民が自力で魔法使いになるのは皆無だろう、その点貴族は生まれながら居して魔力が多く生まれ財力もあるので、魔法使いのほとんどは貴族出身だという
「待てよ、あの綺麗な輪どこかで見た事があるような気がするぞ」
父ちゃんと母ちゃんの顔が浮かんできた、旅をしながら魔物に襲われた時父ちゃんが輪を放っていた、母ちゃんも同じ事が出来たのを思い出した、そう思いだした途端頭の中に父が母がどんな時にどんな輪を放っていたか、堰を切った奔流のように数々の詠唱を輪を鮮明に思い出した、父ちゃんも母ちゃんも魔法が使えたという事なのだ、不思議な事に父と母が使った魔法の詠唱と輪、あの輪は確か魔方陣と言った筈だはっきり思い出した、試しに立ち木に向かって火の玉を想像し父の唱えた詠唱と魔方陣を思い浮かべ
「行け」
魔力を打ち出すよう意識すると火の玉が出現して立ち木に向かって飛んだ、そして当たるとバンッっと音を立てて爆発した、それを見て頭が真っ白になった茫然と立ったまま動く事が出来なくなった
「夢じゃないよな、今朝の夢は父ちゃんと母ちゃんが俺に此の事を教えてくれていたのかも」
凄い武器を手に入れた気分になったが興奮した気持ちを落ち着かせて、ギルドに戻り完了報告を済ます師報酬を貰った、その後の俺のする事は一つだ忘れないうちにあの感覚を自分のものにしたい、記憶にある魔法の詠唱と魔方陣を思い出し,記憶にとどめなおした、人に話す事は出来ないまだ話す人もいないが、薬草採取で宿泊費と食事代を稼ぎながら、記憶の中の魔法を整理して行くそれが終わると、人のいない場所で実行してみてから、修行を兼ねて密かに魔物を倒して実践し獲物を商会に売る事にした、ギルドだと何かと経験者が多いから秘密を知られそうで不安だったからだ、そうした処で資金が溜まると剣と防具を買い冒険者らしい装備を整えた
「これで下級の魔物を持って行っても不思議がられないな」
それからは思わず修行で多く狩ってしまった過剰の分は商会に売り、ギルドへの貢献はなるべく地味にして冒険者のランクを上げて行った、その間魔法の修行は欠かさなかったし魔法を見る機会があるとそれを記憶した、剣と魔法両方を使い依頼を何度も繰り返すうち、剣の腕もおのずから上達して行って剣術も力がついたと感じて居た、記憶の中の魔法や見聞きして記憶したものを検証していくうち、詠唱にも魔方陣にも何処か足りないものがある、そんな気がして記憶の中を検証していくと
詠唱のこの文言を分かりやすく短縮、こう変えた方がより具体に目的が分かる、イメージがしやすい、という事に気が付き変えて行った
魔方陣に関しては、魔方陣は左右対称にバランス良く、欠けている部分に右と同じ模様を入れれば、思考の中で詠唱の文言と魔方陣のを形を整えていった、詠唱とは何をなさんとするか自分の創造を言葉にして、魔法陣に魔力を送り変換して目的をなす事、両方を一つのイメージにして一度に発動出来るよう記憶の中にしまい込む、使うときはそれを記憶の中から直接打ち出す、そんな事を修行として即実行出来るよう繰り返した、詠唱と魔方陣を整えると威力がとんでもなく上がるので、強い魔法を押さえる微妙な操作も覚えた、更に魔法の種類の記憶を増やす為、魔術師が腕を競う大会があると遠方でも迷わず出かけ観戦し、出場者の魔法を記憶して覚えた、流石にスキルだけあって俺の記憶力は異常だ一度見て聞けば記憶されるのだ、記憶したそれを後で俺流にを編集し魔方陣のバランスを整え、一つにまとめて記憶の引き出しの中に納めて行った、そうしている内に今度は魔法を複合させる事が出来ないか、そう思い試してみると魔方陣を重ねる事が出来る事が分かった、別々に詠唱しても魔方陣を重ねる事は出来ないが、あらかじめ詠唱と魔方陣を重ねその結果どうしたいかを創造して、記憶の中に一つにまとめて収納する、やって見たら出来た目的に応じて組み合わせを変えれば恐らく望む結果が得られる事になる、修行して全て瞬時に実行できるまでになった、例えば重力操作の魔法と風魔法を組み合わせれば空を飛べる、光魔法と雷魔法や光魔法に火魔法などはすでに実用化しているビーム光線として、そうして自分のスキルを十分に理解した、この事から俺は恐らくこの世界で一番の大魔導士だろうと密かに自負している、誰にも自慢できないが自分で自分を自慢した