10 返り討ち
ロンバート伯爵家の専属と言ってもすべての仕事がそうではない、ギルドで依頼を受けてパーティー本来の形での仕事が主だ
「今日もしっかり稼げたし、すべて順調・・・・・・」
「サモンさん、俺も気付いていました、知らんふりして人気の無い所に誘い込みましょう」
俺達の後を着けてくる集団がいる
「みんな気を付けてください、用意は良いですか」
「魔術師団からの依頼を受けた者達だろう」
夕闇迫る時間帯人通りは少ないがさすがに人目に付く場所では来ないだろう、脇道に入り丁度あった空き地の中に入るとぞろぞろと男達が姿を現した、数えると十五人が出て来た恰好から魔術師が五人何らかの武器使いが十人
「悪いなお前達に恨みはないが依頼されてな、こんな人数はいらないと思うが念には念を入れてやったよ、殺しはしないが大けがをさせろと言う依頼だ、痛い思いは覚悟してくれ」
「暗殺ギルドのクズ達だろうが自分達の心配をした方が良いぞ、怪我をするのは自分達だからな」
「流石今有名な天空の翼の面々、たった六人で俺達腕利きが十五人勝てると思うか調子に乗っているのも今日までだ、やっちまえ」
魔術師たちは後ろにさがり槍と剣が襲って来た、ワイズさんが盾で振り払うと三人の剣と槍が吹き飛んだ、サモンさんが双剣で、槍の穂先を切り飛ばし剣を弾き飛ばした、ケリーさんが三人の剣を叩き折った、二人が肩に矢を刺したまま地面に転がっている、俺は五人の魔術師の魔法陣を無効化した
「その程度で大口叩いて」
「何と言う強さだ、話が違うぞAクラスからSになったばかりだから大した事は無いという話だったぞ、全員SS並みじゃねえか」
驚きの言葉を口走っているが内心驚いていたのは俺達の方だ、負ける事は無いと思ってはいたがこれ程の力が付いていたとは、戸惑ってしまったが
「残念だったな、暗殺を生業にしているのだろうが、今回で前たちは御終いだ、残念だったな」
ケリーさんが目で合図して一人を気絶させると手分けして全員を気絶させでた
「どうします、衛兵に任せるか、逃がして依頼主を突き止めるか」
「こいつ等も馬鹿じゃない、俺達が尾行すればわかるだろうし逃がしても依頼主の処には行かないと思うぞ」
ケリーさんがそう言ったが
「何時だったかサリーさんとメイさんが付けられた魔法紋、あれをつけておけば尾行しなくても何処に居ても分かるけど」
「そんな事出来るのか」
「あの時覚えておいたから」
「あの時って、一瞬で消えてしまったじゃないか、まぁ、アローだからな何でもありか」
「記憶力が良い方だから」
「記憶力ね、はいはい分かりました、じゃあその手で行きましょう」
呆れ顔で言うケリーさん、逃がしても依頼主を特定する事が出来るかは分からないが、泳がせ、手置けば何か手掛かりにつながるだろうと言う結論に達した、門を出現させると全員の首の後ろに刷り込んだ、本人に見えない場所と言うとやはり後頭部から背中という事になる、出来るだけ小さくほくろのようなもんを全員に付けた
「行きましょうか」
宿に向かいながらようやく自分達の話を始めた、やはり詩文たちの上達ぶりに全員が驚いていたようだ、メイさんを除いては
「驚いたな」
「ほんと驚いた、我ながら此処まで上達していたろは」
「連中の動きが冗談のように遅く見えたぞ」
「そうそう、そうなんだ」
「止まっている者を射るように簡単だったわ」
「アロー流の修行は凄いという事だな」
「そう言う事だ、仲間同士だけで修行していたから分らなかったが、奴らは暗殺を請け負っているくらいだそれなりに強い筈だが、まるで子供を相手にするようなきぶんだった」
皆興奮している、彼らにそれぞれの能力と体力に適した緻密な身体強化用の魔法陣を付与し、本人の努力で力と修練が調和して驚くほどの効果が現れたのだ
「私も治癒魔法を試したいけど、みんな怪我をしなくなっちゃったし」
メイさんが一人ぼやいていた
「まぁ、俺も驚いたが、だからと言って浮かれて油断しているととんでもない事になる、こういう時こそ気を引き締めなくてはな」
「返り討ちにしたまでは良いが、これからが大変だと思うぞ」
「そうだな、浮かれている場合じゃない」
一旦宿の帰って様子を見ようとしたのだが、敵に動きがあった
「ちょっと待って、流石に全員纏まっての移動はしなかったようだが、散っていた奴らが一ヶ所に集まり始めた、あの人数が集まれるという事は民家ではない、どこかの屋敷じゃないかな」
脳内に地図が浮かび魔法紋の赤い点が集まって行く
「奴らの隠れ家か、依頼主に関係する場所か」
「場所はどうやら貴族街のようです」
「じゃあ隠れ家じゃないな、という事は依頼主と言う事も管和えられるな、ロンバート家の通行証ががるから貴族街に入れる事は出来る、行くぞ」
貴族街に入り奴らが集合している場所に向かったが其処は
「ゴリアス侯爵、魔術師団団長の屋敷じゃないか、こんな分かりやすい事をしていて良いのか、余りに不用心だと思うが」
「ゴリアス公爵と言えば影の皇帝と言われ、魔法至上主義のこの国では王様より力があると言われているが、今でもその影響力があるのかは疑問だがな」
「バレても握りつぶせる自信があるからという事なの」
「そうとしか思えないだろう、犯人を自分の屋敷に匿っているんだぞ」
「流石に乗り込む訳には行かないよね、どうしようか」
「貴族がらみは伯爵に相談するしかないな」
ケリーさんの言う通り貴族がらみはいろいろと面倒なので、同じ貴族街にあるロンバート邸に向かった、運よくロンバート伯爵が屋敷に居たので面会を求めると、すぐに屋敷内に通された
「執事に暫くお待落ち下さい」
そう言われ待っていると伯爵がリリアさんと一緒に現れた
「何か事件でもあったのかな」
何時もながらの威厳ある笑みでそう言った
「ええ、事件と言うか魔術師団団長が刺客を俺達に向けて来ました」
「何と、それで怪我をした者は、大丈夫だったのか」
そう驚きの声を上げたが
「ええ、刺客は十五人でしたが全員を叩きのめしましたが、敢えて放置して黒幕を探ろうとしたのですが、そいつらがゴリアス侯爵邸に居るのが確認出来たので、伯爵に指示を仰ごうと伺った次第です」
「ゴリアス公爵邸とは分かりやすすぎるな、何か画策しているとしか考えられない、恐らく罠ではないか」
伯爵はしばらく考えていたが
「何れにしろ、今を逃せばゴリアスの悪事を裁く事が出来なくなる、奴の権力は王様さえ押さえが利かないが、現場を押さえれば反論できないからな、只罠を構えて待っているとなると相当に危険だが、皆は一緒に行ってくれるか」
「伯爵が乗り込むのですか」
「それしかないだろう、侯爵となれば衛兵は使えないから私が行くしかない」
ケリーさんが俺達の顔を見回す船員が頷くと
「分かりました行きましょう」
「では支度をしてくる、暫し待っていてくれ」
伯爵は部屋を出ていくと
「ゴリアス公爵は稀代の魔法使いです、大丈夫でしょうか」
リリアさんが心配そうに言うと
「心配ありません、アローがいればどんな魔法使いも只の人です」
「そうでしたね、魔法を使えるのを良い事に今迄王様さえ従えたような威張った態度だった侯爵、,魔法が使えなくなったらどんな顔をするか見てみたものだわ」
そう言ってくすくす笑った、此処は笑える雰囲気ではないのだが、リリアさんの俺達への信頼は相当なものだと思った、これからこの国の頂点ともいえる人物を失脚させるために行くのだが、そんな重い雰囲気ではないのは何故だろう




