1 序章
俺の名はアロー年齢は十五歳中堅の商会の下働きをしている
「おいアロー、さっさとやれ役立たずが」
商会長の息子エディイに怒鳴られ蹴られた
「すみません、すぐに片づけます」
自分が散らかした部屋を片付けろと命令されたのはつい先ほど、そんなに簡単に片付く筈がない
「何だその目は」
いきなり再度蹴飛ばされたが何時もの事だから上手く対応して痛みを半減させた、エディイは何故か俺を虐待する事を楽しんでいるような処がある、商会の使用人たちは見て見ぬふりだ、使用人のみで主人の息子に意見は出来ないのだ
俺は旅の商人の子として生まれたが、旅の途中両親が其の町ではやっていた流行り病にかかり無くなってしまった、俺は十歳で孤児となってしまった、その時父と取引のあったこの商会の会長が俺を引き取り育ててくれたのだ、育てると言っても賃金を払わなくて仕える下働きとして働かされている、だが生き延びられた事に感謝している、あのままでは死ぬか奴隷にされるかしかなかっただろう、だからエディイの虐待にも耐えていたが、商会の仕事で街のいろいろな事を知るにつれ、俺でも紹介以外で生きていける手立てがある事を知った、冒険者と言う仕事がある事を知った、五体満足な体を持って居れば誰でもなれると言うのだ、生い立ちなどは関係なく保証人なども要らないという、エディイの虐待がだんだんひどくなってきたし、このままエディイの虐待に耐えて一生を過ごすより冒険者になって独り立ちした方が良いのではないか、そう考える様になって行った
おる日、勇気を出して
「店を辞めさせてください」
そういうと
「急に何を言う、今迄の恩を忘れたか」
そう言われたので
「恩は五年間無給で働いた事で十分帰したと思いますが」
そう言うと
「其れは、……そうだが、急にどうしてその気になった、これからは給料を払う事にしても良いのだぞ」
「虐待に耐えられなくなったから」
「・・・・・・・・・・・・・・」
俺が言わんとしたことはすぐに分かったのだろう、返す言葉が無かったと思う、知っていながら今まで無視して来たおだから
「分かった、からだにきをつけてな」
俺の結審の固さが雰囲気で分かったのだろう、近くにあった箱から金貨と銀貨を小袋にいれ
「持っていきなさい」
そう言って俺に渡すと部屋を出て行ったしまった、会長も良い処があるなと少し見直した
俺の私物何て数着の服くらいしかなかったから、荷物を纏めるとすぐに商会を出たエディに見つからないように、そして冒険者ギルドに足を向けた、ギルドの中に入るのは初めてだったからドキドキしながら入ると、中はガランとしていてカウンターに女性がいるだけだった
「今日は何しに来たのかな」
何故か子供扱いされた、俺は見た目が幼く見えると言われていたから
「あのぅ、俺、十五歳だけど」
「まぁ、そうなの、ごめん、もっと子供だと思った、それで、何の用で来たの」
「冒険者登録したくて」
「ああ、登録ね、分かった」
カウンターの下から用紙を出し
「此処に名前を書いて、それと何かスキルがあったら書いておくと有利になる事があるわよ、十歳の時教会で受けたでしょスキル授与の儀」
「俺は事情があって受けてないんです」
「そうなの、お金はかかるけど今からでも教会で受けた方が良いわよ、ひょっとしたら人生が変わるかもしれないわよ」
スキル授与の儀は知っていたが、十歳の時両親が死んでそれどころではなかった、だからスキル授与は諦めていた
「今からでも受けられるの」
「受けられるわよ、十歳以降ならいつでも受けられるけど、みんな待ち遠しくて十歳になると同時に受けるけど、別に十歳以上になれば受けられるのよ」
そう聞いて何だか嬉しくなって来た、何かこれからいい事が起きるかもしれない、そんな思いだった
「兎に角、名前と年齢、そしてこれに手を翳してみて」
水晶玉に手を翳すと僅かに光った
「犯罪歴は無く、えっ、スキルが出てるわよ、記憶 だって魔力は普通より少し多めね」
「記憶ってどういう事でしょう」
「分からないわ、ちょっと待っててね」
暫くすると戻って来て
「誰も知らないって、教会に行って聞いて見たらわかるかも、登録はこれで完了、Eランクから始めてね、薬草採取とか商店なんかの手伝いとか、スキルが役に立たなくても仕事はあるから頑張ってね」
「ありがとうございました」
ギルドを出るとすぐに教会に向かった、教会で授かる筈のスキルがギルドで分かって仕舞うなどという事は初めてらしいが、だが意味の分からないスキルの意味が知りたかったが、結果的に教会でも知る人はいなかった、記憶だから人より記憶力が良いという事だろう、つまりあまり役立つキルではないだろうと言われてしまった、ギルドの連中もそう思ったから珍しい事なのに騒がなかったのだろう、ガックリ、せっかく未来が明るくなると思ったのに数分で暗転してしまった、だが商会を出てしまった以上これからは一人で生きて行かなくてはならない、落ち込んでいる場合ではなかった、元々健康な体だけそれだけで生きて行くつもりで商会を出たのだ、薬草採取でも手伝いでもエディイに虐待されながら暮らすよりずっと良い、そう思うと元気が出て来た