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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
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これでようやくハッピーエンドってことか?


 クロアは明国にあるカフェで人を待っていた。


 組織の使いの人の情報によると、エルクさんがここに来るってことか。

 ボスも詳細な時間と場所を教えてくれるとはね……。

 まあ確かに教えてとは言ってたけどさ。


 それにしても……。ここは、始めて来たカフェだな。

 というか、この街にはどんだけカフェがあるんだ?

 行く先々で見かけるんだが?

 日本のコンビニぐらいあるんだけど、どういうことなんだろう?


「クロア君……」


 ん?その声は?


 クロアが声のするほうに振り向くとそこにエルクはいた。


「エルクさん……」


「ようやく会えたね」


「そうですね……」

 エルクさんはいつも肝心な時にいないからな……。

 だが俺としては女性陣に会いたかったのだが?



 二人は共に席に着き、ゆっくりと話し始めた。


「……あれから君に何が起きたかをベアトリーチェに色々聞いたよ。

それで私たちは、彼女に協力することになったんだ」


「そうですか……」

 達はってことは、ビアさんもミアちゃんも組織に入ったってことか?


「あまり、驚かないんだね?」


「いや……なんとなくそうなりそうな気はしていたので。あ……ということは?」


「ああ、君のお陰で会えたんだ」


「あれ?もうボスに会ってきたんですか?」


 何だか話が違うような?


「ああ」


 ボスめ、約束が違わないか?いや、先に俺の約束を果たしたというだけか……?


「……それでどうなりました?」


「何がだい?」


「その、言いたいことは伝えられたんですか?」


「ああ、そういうことか。誤解は……完全に解けたよ。

言いたいことも言えた。……君には本当に感謝しているよ」


「はあ……。これでようやく呼び出し主の願いが叶ったということか。

思えば俺は、ただこの瞬間のためだけに……呼ばれたようなものだからな……」


 何だかあっけなかったけど、気持ちが晴れた気がする。

 これがリンさんが言っていた感覚なのだろうか。


「そうだね……本当に君には申し訳が無いことをしたと思っているよ。

……そういえば何でも言うことを聞くという約束をしていたね?

私は約束を守る主義でね。何か願いはあるかい?」


 約束を守る主義でね。……が妙にイラつくんだけど。

 上から目線感があるんだが?この人本当に自分が悪いと思っているのか?

 ……自分だけ清々しい顔をしてるし。


「……どうしたんだ?」


「いや別に……。そうか、俺の願い……か」

 うーん……。もはや無いかもしれない。

 これで元の世界に帰れたら良いんだよな?

 何だか心に引っかかるものが……ある気はするんだけど……。


「……まあすぐには思いつかないかもしれないな。

いつでもいい、何かあれば言ってくれ。できる限りのことはするよ」


 できる限りねえ……?


「それで……その、先ほどの話なんですけど。

相手に自分の気持ちはうまく伝えられたんですか?」


「そうだね……快い返事をもらえたよ」


「やはりそういうことでしたか。なんだか会った時から清々しい顔してますもんね」


「そうかい?」


 こちらがイラつくほどにね。



「ビアさんも話を聞いてね、結局一緒に大神官に抗議をしに行くらしいよ」


「そうですか。まあ元から事情をちゃんと説明すればわかると思っていましたが。

何であんなすれ違いが起きたんでしょうね?」


「さあ……。起きる時は起きてしまうものじゃないか?すれ違いってものは。

でもその隙間を後から埋めることはできると思うよ?

……それで君はどうするんだい?もはやこの世界に留まることもないのではないか?」


「いや、俺はまだ帰れませんよ。ここまできたら二つの勢力が最後にどうなるのか……見届けたいので」


「そうか。まあここまできたら、そうだろうね」


「あとは……ミアちゃんはどうしたんですか?」


「ああ、元気にしているよ、ミアちゃんも。

私の護衛になりたいということらしいんだけどね。……今は前向きに考えているところだ」


「なるほど……」


 なんだかみんなが良い感じになっているんだが。

 どうなっているんだ……?

 これで大神官にうまく話をつけられたら、無事にハッピーエンドってことか?



「……じゃあ俺、そろそろ行きますね」


「私と一緒に行かないかい?」


「俺、話が終わったら、一人で協会の別館に来るように伝えられているんで」


「そうか……。どうやら運命は、定まったようだね」


「大きな運命の事ですか……?何故エルクさんが知っているんですか?」


「ちょっと知り合いから情報を聞いていてね。これからきっと本館のほうに行くんだろう?」


「はい、おそらくそこに行くんだと思います」


「……君は今や私に匹敵する力を持っているはずだ」


「そうですか?」


「ああ。確かに占い力だけを見れば、君はまだまだかも知れない」


「ですよね……」


「だがそれ以上に他の……占い力以外の部分があると思うんだ」


「何だかそう言われると、そんな気がしてきました」


「だから、自信を持っていいと思う」


「そうですか……。まあやれるだけのことをやってきますよ。

……しかし、大神官はこちらの話を分かってくれるでしょうかね?」


「それは……これからわかることだろうね」


 クロアはエルクに軽くお辞儀をして、カフェを後にした。


 エルクさん、今回ばかりは少し良い人に思えたよ?

 今までの憤りは……まだ俺の心の中に残っているんだけどね?


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