これでようやくハッピーエンドってことか?
クロアは明国にあるカフェで人を待っていた。
組織の使いの人の情報によると、エルクさんがここに来るってことか。
ボスも詳細な時間と場所を教えてくれるとはね……。
まあ確かに教えてとは言ってたけどさ。
それにしても……。ここは、始めて来たカフェだな。
というか、この街にはどんだけカフェがあるんだ?
行く先々で見かけるんだが?
日本のコンビニぐらいあるんだけど、どういうことなんだろう?
「クロア君……」
ん?その声は?
クロアが声のするほうに振り向くとそこにエルクはいた。
「エルクさん……」
「ようやく会えたね」
「そうですね……」
エルクさんはいつも肝心な時にいないからな……。
だが俺としては女性陣に会いたかったのだが?
◇
二人は共に席に着き、ゆっくりと話し始めた。
「……あれから君に何が起きたかをベアトリーチェに色々聞いたよ。
それで私たちは、彼女に協力することになったんだ」
「そうですか……」
達はってことは、ビアさんもミアちゃんも組織に入ったってことか?
「あまり、驚かないんだね?」
「いや……なんとなくそうなりそうな気はしていたので。あ……ということは?」
「ああ、君のお陰で会えたんだ」
「あれ?もうボスに会ってきたんですか?」
何だか話が違うような?
「ああ」
ボスめ、約束が違わないか?いや、先に俺の約束を果たしたというだけか……?
「……それでどうなりました?」
「何がだい?」
「その、言いたいことは伝えられたんですか?」
「ああ、そういうことか。誤解は……完全に解けたよ。
言いたいことも言えた。……君には本当に感謝しているよ」
「はあ……。これでようやく呼び出し主の願いが叶ったということか。
思えば俺は、ただこの瞬間のためだけに……呼ばれたようなものだからな……」
何だかあっけなかったけど、気持ちが晴れた気がする。
これがリンさんが言っていた感覚なのだろうか。
「そうだね……本当に君には申し訳が無いことをしたと思っているよ。
……そういえば何でも言うことを聞くという約束をしていたね?
私は約束を守る主義でね。何か願いはあるかい?」
約束を守る主義でね。……が妙にイラつくんだけど。
上から目線感があるんだが?この人本当に自分が悪いと思っているのか?
……自分だけ清々しい顔をしてるし。
「……どうしたんだ?」
「いや別に……。そうか、俺の願い……か」
うーん……。もはや無いかもしれない。
これで元の世界に帰れたら良いんだよな?
何だか心に引っかかるものが……ある気はするんだけど……。
「……まあすぐには思いつかないかもしれないな。
いつでもいい、何かあれば言ってくれ。できる限りのことはするよ」
できる限りねえ……?
「それで……その、先ほどの話なんですけど。
相手に自分の気持ちはうまく伝えられたんですか?」
「そうだね……快い返事をもらえたよ」
「やはりそういうことでしたか。なんだか会った時から清々しい顔してますもんね」
「そうかい?」
こちらがイラつくほどにね。
◇
「ビアさんも話を聞いてね、結局一緒に大神官に抗議をしに行くらしいよ」
「そうですか。まあ元から事情をちゃんと説明すればわかると思っていましたが。
何であんなすれ違いが起きたんでしょうね?」
「さあ……。起きる時は起きてしまうものじゃないか?すれ違いってものは。
でもその隙間を後から埋めることはできると思うよ?
……それで君はどうするんだい?もはやこの世界に留まることもないのではないか?」
「いや、俺はまだ帰れませんよ。ここまできたら二つの勢力が最後にどうなるのか……見届けたいので」
「そうか。まあここまできたら、そうだろうね」
「あとは……ミアちゃんはどうしたんですか?」
「ああ、元気にしているよ、ミアちゃんも。
私の護衛になりたいということらしいんだけどね。……今は前向きに考えているところだ」
「なるほど……」
なんだかみんなが良い感じになっているんだが。
どうなっているんだ……?
これで大神官にうまく話をつけられたら、無事にハッピーエンドってことか?
◇
「……じゃあ俺、そろそろ行きますね」
「私と一緒に行かないかい?」
「俺、話が終わったら、一人で協会の別館に来るように伝えられているんで」
「そうか……。どうやら運命は、定まったようだね」
「大きな運命の事ですか……?何故エルクさんが知っているんですか?」
「ちょっと知り合いから情報を聞いていてね。これからきっと本館のほうに行くんだろう?」
「はい、おそらくそこに行くんだと思います」
「……君は今や私に匹敵する力を持っているはずだ」
「そうですか?」
「ああ。確かに占い力だけを見れば、君はまだまだかも知れない」
「ですよね……」
「だがそれ以上に他の……占い力以外の部分があると思うんだ」
「何だかそう言われると、そんな気がしてきました」
「だから、自信を持っていいと思う」
「そうですか……。まあやれるだけのことをやってきますよ。
……しかし、大神官はこちらの話を分かってくれるでしょうかね?」
「それは……これからわかることだろうね」
クロアはエルクに軽くお辞儀をして、カフェを後にした。
エルクさん、今回ばかりは少し良い人に思えたよ?
今までの憤りは……まだ俺の心の中に残っているんだけどね?