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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
95/112

反乱

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「大きな運命が見事に捻じれてしまいましたね」


「こうなってはもう私たちの力でも……無理かもしれないですね」


「どういうことですか?せっかく久しぶりに三人が集まったというのに」


「つまり……こういうことです」


 序列3位の神官は、胸に付けていた白く輝くバッジを強く地面に叩きつけた。

 バンっという衝撃音が、辺り一帯に木霊した。


「……この静かな場所でそのような行為は、結構響きますよ?」


「……なんてことを」


 そして序列3位の神官はその場から立ち去って行った。



「序列3位の神官はついに協会を捨てましたか……。

最後までよくわからない人でしたね。

もはやこうなってしまったら、この序列という制度そのものも、あまり意味をなさないようですね」


「……そうみたいですね。それであなたはどうなのですか?」


「はい?」


「私にはわかりますよ?

少しずつ滅びに向かってきた運命を一緒に見てきたのですから」


「……そうですね。大神官がこうお望みならば仕方ないでしょう。

全てを手にしたものが、全てを壊したくなるのもわかる気がします」


「そうですか。私にはわかりませんね」


「人間、全ての事に満足してしまったら、逆につまらなくなるんじゃないですか?

最初は気持ちが良くても……。目標も願いも欲望も全て瞬時に叶ってしまうんですよ?

全てが自分の思い通りに動く。でもいつからかそれがマンネリ化してしまう。

そう考えてみたら……おかしくはないでしょう?」


「そういうことですか。私はそんなことを一度でも思ったことはありませんね。

死ぬまで自分の思い通りに生きたい」


「考え方の違いですね。絶対に相容れない相性は存在するという宿命ですね」


「そうですね、それはわかる気がします」


「……例えばクロアの影響を受けたのかもしれませんね。

いや、それすらも操っていたんでしたっけ?」


「それを結局楽しんでいたのでしょうか?犯罪ではないとしても……」


「それを思いだしたらキリが無いですよ。

それに能力のお陰で犯罪は抑えられているじゃないですか……?」




「サラ様……」


 庭園に、遠くから女性の小さな声が聞こえてきた。


「おや、どうやらお客人が来たようですよ?」


「そうみたいですね」


「たまには大きな運命より、小さな運命に気をかけてみてはいかがですか?」


「そうですね。もうこのままでは協会が崩壊するのも時間の問題でしょう。

……最後に教えてもらえますか?あなたの能力で大神官の居場所を」


「…………もうこの街まで来ています」


「そう……さようならミゲル……」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「ついに今日が……。その時がようやく、来たのね……」


「ボス、準備はできています」


「神官達が少ない時間帯に、直接忍び込むのですね?」


「私も用意はできてますよ?」


「じゃあついに大神官のいる場所へと出向くわけだな?

これでようやく本当の正体が……」


「……ところでクロアはうまくやっているかしら?」


「問題ないみたいですよ。無事に神官アメルから情報を手に入れたみたいです」


「世界各地の今の状況は?」


「問題ないです。

各国にある黒い扉で、運勢が悪くなった人物を問題なく感知できています」


「じゃあ……何でもいいの。何か特別、今日から変わったことはない?」


「……それなら今日の朝、私の今日の運勢が大きく変わりましたよ?

今までに見たことも聞いたこともない運勢でびっくりしました」


「ふふ……相変わらず、アイさんは面白いことを言うのね?」


「……そうですかね?」


「ではこれから……。アイ、ロルド、メーティス、ミゲル……そして新たな仲間レイ。

今日は最高のショーをみんなで楽しみましょう」


 ……そして組織のリーダーは5人の側近を引き連れて……。

 大神官の座するとされる、明国の中心、協会の総本山へ向けて歩みだした。



 難なく協会の別館に辿り着いた組織の六人は、入口に待ち構えた神官達と相対していた。


「今ここが手薄だとよくわかりましたね?

徹底的に未来予知は封じていたのですけどね」


「なるほど、だからこんなにも苦労させられたのね。

それにしてもみんなガードがお堅かったわ」


「抵抗しなければ、何も危害は加えませんよ?」


「そりゃあもちろん精一杯の抵抗はさせてもらいますが。

協会が絶対正義、組織は悪ですからね。

最初に制度を作った方が勝つのは、歴史から見ても当たり前ですから」


「なるほど、そういう考え方もあるわけか……」


「こんなところで立ち話をしている状況ではないのではないですか?

時間が経てば、この街に集まってきている全国の神官がここに来てしまいますよ?」


「確かにそうかもしれないわね。でもこちらの準備は万端よ?

その言葉はそちらに返す必要があるのではなくて?」


「ほう……。いったいどういう策を講じてきたのですかね?」


「それはすぐ近くの未来でわかることでしょう」



 その日、組織による協会に向けての大規模な反乱が世界各地で起きた。


 組織の者は世界中の人々に、協会の是非を問いただした。

 それからたった数時間で、協会の者は続々と淘汰されていった。


 もちろんこれは武器を使っての実力行使ではない。

 それは能力、策略、知恵、情を巧みに使った……。

 組織の、今までを含む全ての作戦の総合的な結果である。


 そして組織のリーダーは……。

 大神官へと繋がる虹色の大きな扉を目の前にして、ある命令を側近たちに伝えた。


「クロアを呼んできて」


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