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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
94/110

交渉成立

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 ビア、エルク、ミアの三人は明国に向かう馬車の中で話をしていた。


「もうすぐ目的の明国に着くわね」


「ああ、そうだな」


「思えばとても長い道のりでした……」


「それにしても、能力を戻してもらったのは幸いだったわね」


「そうだね。シアラが優秀な白の神官と知り合いで助かったよ。

私にはどうすることもできなかったからね」


「え?もしかしてエルク様、能力を治す方法を知っていたのですか?」


「ああ……。でもどうすることもできないから黙っていたんだ。

私には白☆チェンジの能力は今は無いんだ。クロア君にあげてしまったからね。

下手な事を言って傷付かせてはいけなかっただろう?」


「エルク様……」


「でも、あれが最善の方法だったと思っているよ。シアラから助言も貰えたしね。

……それで、どうだい?未来予知の能力のほうは?」


「……駄目ね。見たい人の未来を見ようとしても、何だかすぐに途切れてしまうわ。

やはりまだ本調子じゃないのかも」


「私のもあまり調子が出ません……」


「能力が元に戻るまで、数日はかかるかもしれないな。

何しろあれだけ大きな黒い炎の影響を受けたのだから、無理もない」


「……クロアは、本当に明国にいるのかしら?」


「それは間違いないな。シアラの人を探しだす能力は本物だ」


「そうですよね。あれだけの人に慕われていたんですし……。

何よりエルク様の知り合いですしね……」



「……ところでミアちゃん?

この旅にひと段落がついたら、私の護衛をやめてエルクの護衛にさせて貰ったら?」


「ええっ!?」


「もうそれしかないわよ。だってあなた言われた通りにちゃんと仕事ができていないもの」


「一生エルク様の護衛……えへへ……」


「また余計なこと言ってしまったかしら……?ミアちゃんがまた壊れちゃったわ」


「いや、私は護衛は取らない主義なので」


「でもこれだけ慕ってくれる護衛はいないわよ?

ミアちゃんはきっといい護衛になるわ」


「いや……でも、それはまだ……」


「あ、それもそうね……」


「クロア君に無事に会えたら……その後であれば考えようか」


「その次は仮面の人物だものね……。心の準備はできてるの?」


「ああ、もちろんだ。そのために今日まで旅をしてきたんじゃないか?」


「それもそうね……」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ボスから情報を聞き出したレイは、建物から出てきた。


「……俺が建物に入っている間、何もなかったか?」


「ええ、能力は使わずに済んだわ。

……これで終わりよね?そちらの言うことは十分聞いたわよね?

早速サラ様に会わしてもらおうじゃないの?それが私への対価でしょ?」


「そうだったな……。約束は約束だ。だが、俺はあくまで仲介をするだけだ。

そこから先は君次第だ。あらかじめ言っておくが」


「それで十分よ」


「じゃあ早速、明国の協会別館へ向かうとするか」


「そうね……」



「それで……結局分かったの?二人の正体は」


「まあ、正体に限りなく近づいた事は確かだろうな」


「またそんな曖昧なこと言って?わかったんでしょ?

その満足そうな顔を見たら誰でもすぐにわかるわよ?」


「いや、100パーセント確実な情報ではないのでな」


「そりゃあ100パーセントの情報なんて中々ないでしょうね?

……どうもあなたとは話がかみ合わないわね。まあ、これで協力するのも終わりだろうけど」


「まあ、99パーセントはわかった、というべきかな」


「じゃあ、最初からそう言えばいいじゃない」



 二人は明国の協会の別館にいた。


「話は通しておいた。これでサラ様とやらに会えることだろう」


「……いったいどうやったの?」


「簡単なことだ、金だ」


「ふーん……って、サラ様に合うためにどれほどの額がかかるかわかっているの?」


「ああ、今の俺はとても気分が良いからな。しかしこれで貯金の三分の一は無くなったかもしれんな」


「ギャンブルとシーフの仕事って意外と儲かるのね……」


「まあそうだな、じゃあ俺はこれで……」


「……最後にひとつだけ」


「なんだ?」


「まさか二人の正体の情報を世界中にばらまくつもりじゃないでしょうね?

そんなことをしたら世界が混乱するわよ?」


「さあな……」


「さあな……じゃないわよ?本当に大事なことなのよ?」


「ああ、君の言いたいことは理解したつもりだ」


「本当にわかっているの?事の重大さを……」


 ……そして二人は、その場から別の道を進んだ。



 別館の受付の女性に、セリスは落ち着かない様子で話しかけた。


「今回はどのようなご用件で?……神官セリス様」


「サラ様に、面会に来たわ。重要な話があるの。お金なら払っているはずでしょう?」


「……わかりました。サラ様は奥の部屋でお待ちです。

話は通してありますので、そちらの赤い絨毯の道をお進みください」


「ありがとう…………。やっぱりいざ会うとなると緊張するわね……。サラ様……。

そしてこれが噂に聞いたレッドカーペットか……。トップ3の神官達へと繋がる夢にまで見た道……」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 クロアとアメルは、人気の少ない街の路地裏で話をしていた。


「あなたの言いたいことは大体わかりました。

実はそのことについては私も考えていたところなのです」


 この人よく話してみたら意外と話が分かる人だな。これは案外チャンスかも?


「じゃあ……」


「同じような意思を持った神官が複数人います。

私と同様に中立の立場の者です。事情を話せばその者たちも協力してくれることでしょう……。

……そこで中立の第三勢力を作るという気はありませんか?」


 話が急に飛んだな?何とか組織に入れ込むという所まで漕ぎつけたのに……。

 中立の第三勢力か。協会でもなく組織でもない新勢力ということか。


「……それはたぶん無理なんじゃないですかね?」


「何故そう思うんですか?」


「良いリーダーがいないから……」


「良いリーダーなら私の目の前にいると思うのですが?」


「そうやって俺を煽てても、誘い話には乗りませんよ?俺は頑固ですから」


「この状況を変える能力を持っている。

先ほど聞いた話が嘘でなければ、十分に可能だと思いますが?」


「仮にそうであったとしても……無理ですね」


「何故ですか?」


「多分、俺はもうすぐ行方不明になるので」


「ほう……。何故そう思うのですか?」


「俺の予感がそう言っているのでね」

 俺の予感(能力)がな。


「なるほど?」


「だからそんな考えは通用しないと思った方がいいと思いますよ。

俺のさっき言った通りに組織に入ってもらった方が、良い結果になると思います。

組織に入りこのまま行く末を見ていれば、すぐに決着は良い方向に着くはずです」


「そうですか。それにしても……予感……。本当に未来予知のようなものなのですか……?」


 しかし本当にこの人は厄介だな。ボスと同じ紫☆能力探知の能力を持っているとは。

 幸いなことに俺のオリジナル能力の事は詳しくわからないだろうから、はったりをかまし続けるしかないか。


「まあそのようなものですね……。それよりももう少し話を聞かせてくれませんか?

大きな運命についてはどうですか?」


「……では今からでも話を聞きに行きましょうか?」


「どこにですか?」


「協会の別館に今、トップ3の神官達が集っているんです」


「え?それはまずくないですか?」


「何故ですか?」


 俺より力が上であろうトップ3の神官達に、今会うのはさすがにまずいだろう。

 どんな能力を持っているかもわからないのに。

 最悪、組織側の人間になってきつつある俺は、捕まるぞ。

 ……だが、これは逆に情報を得る良いチャンスだ。


「……いつも話を聞いているんですか?そのトップ3の神官達に」


「そうですね、私には有り余る財産があるので、話に加わることができるのですよ」


 そこでマウントを取ってくるか。

 なるほど……。中立の立場で、資産もあり、トップ3の神官にも通じている。

 組織にとってこれほどの良い人材はいないということか。


「じゃあ、トップ3の神官とも知り合いってことですか?」


「そうですね。もう知り合いを超えて友達ですがね。ははは……」


 何て話を誘導しやすい人なんだ……。この人本当に序列7位の神官なのか?


「ということは……。例えば、トップ3の神官の所持能力何かも知っているんですか?」


「残念ですが、それは無理な話ですね。

7位の私でも能力探知の能力さえあれば、それができるとお思いでしょう?」


「能力をガードされなければいけるんじゃないですか?まさか三人とも……?」


「そうなんです、そのまさかでしたよ。やっぱりトップ3の神官様は明らかに格が違いましたよ。

……おっと少々話が過ぎましたかね?」


「いやいや、じゃあその…………」



 それからクロアは話をうまく誘導し、神官アメルから貴重な情報を得て、

 その協力者たち共々、組織に勧誘することに成功するのであった。


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