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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
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作戦のはじまり

 翌朝、ミルの家にフードを深く被った見知った人物が訪ねてきた。


「えーっと、あなたは……確か前にあったことがある……使いの人?」


「ボスが直接会ってクロア様と話がしたいとのことです」


「ついにボスが?」


「はい、場所はこの家から北にあるプディングカフェです。

出来れば今すぐにでも向かってください。では私はこれで」


 そう言い残すとフードの人物は颯爽と去っていった。


「……相変わらず風のように消えていったな」



「またあの方でしたね」


「組織と関わりがあると、前々から言ってましたけど……。その使いの人です」


「そうでしたか……。でも何故それを私に?」


「さすがにわかってましたよね?敵のことぐらい」


「いや気づかなかったですよ。それに敵というわけでもないですが。

……でもこれも協会の子として生まれた宿命ですね」


「宿命?」


「簡単に言うと変えられない運命のことです」


「それって本当にどうやっても変わらないんですか?」


「そうですね。本にも載っていたでしょう?

例えば私が協会の子でないとなると私の存在がなくなってしまいます。絶対不可避それが宿命です」


「なるほど……?」



「……じゃあ俺はそろそろ行きますね」


「お気をつけて」


「あの、昨日も言いましたけど俺は別にどちら側でもないですから」


「……そうでしたね」


「ただ、今から行く場所にはミルさんを連れて行けそうにないので……。

別に俺の護衛としてクビにしたわけではありませんから」


「わかっていますよ……。でもくれぐれも私のことは秘密にしておいてくださいね」


「それはお互い様ですけどね」


 ミルさん……。この数日間行動を共にしていたけど。

 結局よくわからない人だったな……。

 協会の人間、か……。色々と大変そうだけど……。

 まあ一つ言えることはお金に執着していない今のミルさんは……。

 今までのミルさんとは明らかに何かが違うってことだけだ。




 ボスはこのカフェに来るらしいな。またあの変な仮面をつけているんだろうか?

 入口のあたりにはそれらしい人物は見当たらないが?


 とりあえず空いている席に座るとするか。


「…………」


 クロアは席に座り周りをきょろきょろと見まわした。

 すると少し離れた場所の帽子をつけている人物が、クロアに手を振りサインを送った。

 ……あれはまさか?ボス?


「あの、もしかして?」

 クロアはその人物に駆け寄り、小さな声で言った。


「遅かったわね?すぐに来てと言っておいたはずだけど?」



 二人は席に着き、対面して話していた。


「ボス、お久しぶりです」


 しかし仮面を外しているとはな。

 今度は黒いメガネと変わったマスクみたいなのをしているけど。


「数日で見違えたわね。目標の15000は超えてるじゃない?」

 ボスはクロアを見た瞬間、目視の能力を瞬時に発動していた。


「まあ、一応頑張りました」


 といっても大したことはしていない気がするけど。

 ……これもあのアイテムの力のお陰だろうか。


「一通りの話は聞いてるわよね?」


「いや、あまり詳しいことまでは……。

それにしてもメーティスさんはボスに負けず劣らずの人でしたよ」


「私が信頼している神官の一人だもの。どうやら良い刺激を受けたみたいね?」


「まあそうなるんですかね?しかしその、俺を呼び出したということは……。

ついに作戦とやらを行うことになったんですか?」


「まあ、そういうことになるわね」

 ボスは自信ありげな声で言った。


「それでその作戦とやらは?」


「まずはね……大神官の、その力を見極めるの。

どのくらいの力を持っているのか……。恐らく私たちの想像をも超えてくるでしょうね。

噂では大神官は全ての能力を極めているらしいわ」


「全ての能力って」


「本に載っている能力全てよ。あの本は大神官が書いたと言われているの。

自分が能力のことを知らなければ書けるわけないでしょ?」


「まあ、確かに」

 実質この世界の王みたいな人だろうし、それぐらいの能力があってもおかしくはないか。


「そして力も相当なものよ?それに対抗するには……」


「そこでこないだ借りた青い鳥の像の出番ですね」


「そう。その力を借りて相手の情報を引き出す。

そしてどうにかして大神官の地位から引きずりおろすのよ」


「でも結構無謀なんじゃないですか?

協会も全国から明国に優秀な神官達を集めているらしいって情報がありましたよ?」


「もちろんこのままの状況では敵わないでしょう。だからこれからは数で勝負するの」


「……?」


「具体的に言うと、裏から協会の者を組織に入れていくの」


「……それは意味あるんですか?時間も相当かかりそうですけど」


「それでもいいじゃない。情報を得ても大神官をどうにかできるかはわからない。

簡単に協会が瓦解するとも思えないし。もちろん力業でどうこうなる相手じゃないし。

……直接歯向かわなくても別にいいの。こちらが裏から支配することができれば」


「なるほど?」


「裏から協会の者を組織に入れていく。そしたら、いつか協会の者はいなくなるのよ。

そうしたら大神官も黙っていられなくなる。その時こそ私の目的が達成されるの」


「協会の者がいなくなれば体制も変わらざるを得ないか……?

でもそううまくいきますかね?」


「その時こそ大神官に直接話すつもりよ。

でも近いうちに相手の方から話が来ると、未来予知は語っているのだけど……」


「未来予知も当てにならないですもんね?

とくに大神官相手じゃ効果ないんじゃないですか?

大神官にはもちろん黒の能力もあるんでしょ?あ、ガードされてそもそも見えないんじゃ?」


「それに相手の事も何もわからないのだから、大神官自身には未来予知は使えないわ。

それでもね、意外と隙間はあるものよ」


「ということは……大神官の関係者とかの未来を見るとか?」


「そういうことね。でもなかなか尻尾を出さないのよね。最近やっと釣れたのだけど」


「それって……まさかミルさんのことですか?」


「そうね、前々から予想はしていたのだけどね」


 やはりすでに目をつけられていたのか。


「ということは、普通に俺のことを監視していたわけですね?」


「さあ……何のことかしら?

関係者の未来を見れば本人を見れなくても、これから起きる展開の大筋はわかることがあるの。

ここまでやってきたのだから、最後までやりきらなければね」


 普通にスルーされたけど、これは俺……監視されてるな。



「……それであなたには新たな任務を言い渡すわ」


「俺はまだ協力するとは言ってませんが?」


「あなたはもう組織のことを知りすぎているし、一員みたいなものでしょ?」


「いや、違いますけど」


「今やあなたも作戦の一部に組み込まれているのよ?

無駄みたいだからもう勧誘はしないけど、断ったら……わかってるわよね?」


「まあ、正直組織からの報復は怖いですけど」


「……明国にいる神官。序列7位の白の神官アメル。

彼をこちら側に引き入れてほしいの。どんな手を使ってもいいわ。

まあお勧めは持っている能力をうまく使うことだけど」


「どんな手を使っても、ね……」


「無事に任務を終えたら、できる範囲で言うことを一つ聞きましょう」


「また交換条件ですか。ビアさんといいエルクさんといい、交換条件が好きだな。

そういやどっちもまだ果たしてもらってなかったっけ……?」


「だってそれしかないじゃない。

人に何かを頼むときに交換条件を出すのは当然。この世界では当たり前なのよ」


「そうですか?善意でやることもあると思いますけど」


「そんな人どこにいるの?」


「俺の世界にはいましたよ」


「そうなの?」



「……じゃあ成功した暁には、今度こそエルクさんとちゃんと会って話してください。

そしてその後、俺を元の世界に返してください」


「それでは二つになっている気もするけど……まあ、良いでしょう」


「あと、エルクさん達三人がここに来るみたいじゃないですか。

ここに来る日時と場所を教えて下さいよ」


「それでは三つじゃない?」


「一つ一つが簡単な事じゃないですか。それに前にも元の世界に返すというのは約束した気がするし。

十分釣り合うと思いますけど」


「なかなか言うわね……。仕方ない、あなたは言われたとおりに力をつけてきた。

彼らが来る場所を教えましょう」


 ボスは地図を取りだし、クロアに見せながら話した。


「三人は今蛇国の協会支部の辺りにいるはずよ。

そしてクロアの居場所を何らかの方法で必ず見つけ出すはず。

……そうね、それから数日もすればこの街のこの辺りに辿り着くことでしょう。それまでに先ほどの件、頼んだわよ」


「まあできる限りはやってみますよ。

……ところでシロンさんはどうしたんですか?組織の情報網があれば知ってるんでしょう?」


「そうね。……教えてほしい?」


「はい」


「……彼女は帰ったわ」


「は?」


「彼女は帰ったの。元の自分の世界に」


「え?」

 俺と護衛の契約をしていたのに一人で帰っただと?


「本当に残念よね……」


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