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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第一章 初級
9/121

黄占い師と黒い炎



「はあ……。この塔……縦に結構広いんだな」


 占いの塔には数十階に階層があり、それぞれの階に占い師がいるらしい。

 だがどこの階も、相談をする予約でいっぱいになっていた。


「ここは……。もう最上階か?」


 どうにか運勢を良くする方法はないものかな……。


「……おーい、そこのお客さん、ここで占っていかないかい?」


「うん?」


「今なら無料で占ってあげるよ」


 声のしてくる方をよく見ると、変な格好の人がいた。

 色んな絵柄が付いた、色とりどりの派手なスーツを着ている。


「それは本当ですか?」


 ……タダなのは少し怖いが、今は少しでも情報が欲しいところだ。


「占うならこっちに来て、ここに座ってくれ」


 クロアは言われるがままに付いて行き、変な格好の人の目の前に座った。

 相変わらずのカラフルな椅子とテーブルが目立っていた。


「……ああ名前は、ジョセフだ」


「クロアです」


 そう言うとジョセフは、なにやらゴソゴソとし始めた。

 大きなカバンから何かを取り出していった。


「早速だけど、すぐに占ってあげよう」


「今すぐに?一体どうやって?」


「そうだな、タロット占いにしよう」


「タロット占い?」


 ジョセフは準備を進めながら、時折クロアを見て話した。


「知っているだろ?偶然のきらめき、ぼく術を」


「えっ?」


「知らないのかい?

どんなにひどい運勢を持っていようとも、一度占えば一時的にでも人を救える。

魔法のような存在、それが卜術さ」


 卜術?そんなの聞いたことないけど……。


「例えば勝負事などがある時。

一時的にでも運勢を上げたい時に効果を発揮する。蛇国特有の占いさ」


 よく見るとその胸には、黄色いバッジがひと際輝いていた。

 黄占い師が蛇国特有の占いだったとは……


 ジョセフは話しながらも、手際よく準備を済ませていた。


「さあ、この中から好きなカードを一つ選んでくれ」


 テーブルにはカードがバラバラに並べられていた。


「はい……」


 タロットカードってなんだか聞いたことあるな。

 言われるがままに事が進んでるけど……。

 無料だしやってみるしかないか。


「これだ!と思わなくて良いんだ。

むしろ何も思わないでくれ。偶然にすっ……と取る感じで頼むぞ」


「……わかりました」


 どれでもない……どれでもない。

 テーブルの上にごちゃ混ぜになったカード。


 その上に手を翳し目を閉じて念じる。

 無心。無心。無心。


 手を上下左右に動かしながら、何も考えないで取る……。


「このカード……」

 すっ……と手になじむカードだ。


 クロアはカードを表に返して、テーブルの上に優しく置いた。


「あわわわ、あんた、これ」


 ジョセフはとても驚いて、腰を抜かした。


「えっ……」


 それは死神の正位置のカードだった。


 クロアがカードをテーブルに置いた次の瞬間。そのカードが黒く光りだした。


 眩い漆黒に光ったカードは……。


 黒いオーラを身に纏い……。


 瞬く間に黒い靄のようなものを次々と生み出し……。


 白い辺り一面を、黒く塗り潰していく。


 塔の内部の部屋中が全て闇色に染まると、


 今度はその塔にまとわりつくように、


 黒い炎が次第に勢いを増し、燃え盛っていく。


「なんて事だ……」



 塔にいる人々は、次々とその異変に気付いた。


 すぐに脱出を図ろうと者、身を守ろうとする者。

 どうにかして黒い靄を振り払おうとする者。

 だがそんなことはお構いなしに……。


 数十秒でその白い塔は、黒い塔に塗り替えられた。


 クロアは完全に意識を失い、その場に倒れこんだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 颯爽と馬で大地を駆け抜けていく、ビアとロルドの二人。

 その視線の先には、漆黒の塔を捉えていた。


「ビア様、始まったみたいです。予定よりだいぶ早い。どうするおつもりですか?」

 青いローブを身に纏っているロルドは言った。


「思いの外、占いの知識の習得が早かったようね」


 ビアの金色の透き通るような長髪が、風に揺れて靡く。

 白く輝く衣装は、すさまじいオーラを醸し出していた。


「まさかこの数週間で、ここまで理解するとは思いませんでした」


「マグマが取れてしまったようね。また封印するしかないかしら?」


「俺は、あいつ好きですよ。単純でどこか抜けてるけど、意外と考えてる妙な奴だ」


「……そうなの。ところでクロアの誕生日は?」


「10月29日です。この俺が透視したので、間違いないです」


「そう……」

 そう言うとビアは目を閉じ、瞑想を始めた。

 ロルドはその様子を、固唾を呑んで見守った。


 暫しの間瞑想をした後、ビアは口を開いた。


「他の方法もあるかもしれないわね」


「未来予知の結果はどうなったんですか?」


「わからない。でも少なくとも未来は変わっている」


「やはりあの少年は……危険ですか?」


「とにかく鎮めに行きましょう。話はそれから」


「はい、お供します」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


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