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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
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お代は……いりませんよ?

 それからクロアはメーティスに言われたことを考えながらも、ミルを探してトルシュの街を見て回っていった。


 ……ミルさん、この店にもいないか。ここは広い街だし一人で探し出すのは無理があるな。

 他に探す方法といえば……やはり占い師か。

 またあの人を訪ねてみるか。俺とミルさんのことを知っているし……。


 クロアはそれから占いの城を訪ねた。



 クロアが神官の権力でセレネを呼ぶと、セレネはすぐに応対に出て来てくれた。


「こんにちは、白の神官クロア様。今日は一体何のご用件で?」


「セレネさん、早速なんですけどミルさんは今日ここに来ていませんか?」


「……今日はお見えになってないと思いますけど……何かあったんですか?

最近はクロア様の護衛をしていると聞いていましたが」


「いや……そういうわけではないですけど……。

そう言えばあの時の能力をまた使ってもらうことは可能ですか?」


「もちろんですよ」


「じゃあ、早速お願いします」


 セレネはミルの運命を変更するように、赤☆改認の能力を使った。



「……どうやらあの時と同じようですね。私の力では運命が変えられなかったようです」


「……何か別の力が働いているってことか」


 今ならわかる気がする。

 運命を変更するのにも、黒い炎の影響が働いているということか。

 だとすれば他の人にも……?


「……お役に立てなくてすいません。

でも夜にはさすがに家に戻っていると思いますよ。

あの性格ですからね、宿に泊まるなんてことはないと思います」


「……俺もそう思いますよ」




 そしてその日の夕方、クロアはミルの家を訪ねた。


 家の前ではミルが誰かを待つように静かに佇んでいた。


「……ここにいましたか」


「……」


「俺の護衛が急にいなくなったら駄目じゃないですか。

それに今日の給料も貰わないつもりなんですか?」


「それは……」


「いや。あれもこれも仕組んでいたんですね?俺の情報を得るために」


「そんなことは……」


「この護衛になることさえも。もうその表情に全てが出ていますよ」


 ミルは俯きながら、クロアの目を見れずに話していた。


「……私は上からの命令を聞いていただけなんです」


「本当に?スパイみたいなことやっていたんじゃないんですか?」


「それは……そうですけど、それは仕方なく」


 確かにミルさんは大神官の家系というだけで、理不尽な目に合っているだけかもしれないが。


「……さすがに嘘は言ってなさそうですね」

 やっぱ組織も組織だけど、協会も協会だな。


「……こんな私を軽蔑しますか?」


「さあ……?最近こんなことが多いので何とも言えませんね」


「……それで私に何か話があるんですか?

あんなことをしてしまったので……。

わかってるんですよね?もうこの関係は終わりでも……」


「そうですね……。でもまだ俺は護衛としての契約は終わってないつもりなので」



 二人は家に入り、向かい合って話をしていた。


「……とりあえず、ミアちゃん達がどこにいるかわかりましたよ。

いや、もしかして知ってましたか?」


「……知らないですよ。私は上からの命令を聞いているだけなので」


「そうですか。それでミアちゃんもスパイみたいなことしてるんですよね?」


「あの子は何も知りませんよ……」


「本当かなあ?」


「本当です。私だって自分の得た情報を少し流していただけで……。

だから自分の能力が何故消えたかも、本当に何もわからないですし……」


「……じゃあメーティスさんとの会話中、なんで逃げたんですか?

事実を正直に話せばよかったのでは?」 


「言えないんですよ。聞いたら最後言わざるを得ないでしょう?

あの時はああするしかなかったんです……」


「で、俺なら大丈夫と?」


「少なくともあの方よりは……ですね」



「今三人は蛇国にいるようです。もうすぐこちらに来るらしいですけど。

しかしよくよく考えてみると……護衛はもう解消ですかね。

俺の情報を流されたら困ることもあるので」


「やっぱりそうですよね」


「少しは……止めたりとかは、しないんですか?」


「ええ。わかってしまっては仕方のないことです。これも運命だったのでしょう」


「らしくないですね……給料がどうのこうのは言わないんですか?」


「そんなもの、もう……いりませんよ」


「え?」


「……それは都合の良い設定なんです」


「そうですか……」


 あれがすべて演技だったとは。

 もうこうなるとどこまでが嘘で、どこまでが本当かわからないな。

 心が読める能力でもなければ、人の真意などわかるはずもないか。


「……そういえばミルさんの能力のことなんですけど」


「はい……?」


「メーティスさんに頼まれたんで俺の能力で治します、けどね。

このことも……協会に情報を流すんですか?」


「それは……」


「なんかわかってきたんですけど、俺に能力を戻させて良いというメーティスさん。

敵対する協会なのに……。情にでも訴えてきてるんですかね?

俺が能力を戻せば、情報を流さないとでも思ったんでしょうか?」


「つまりメーティス様が組織の一員という情報を……。

私の能力を戻すことで口止めすると?」


「まあそういうことなんですかね?直接は言われなかったですけど。

そうでなければ組織が、わざわざミルさんの能力を戻す必要性はないでしょ?

でも結局はミルさん次第ですけどね。……では、やりますね」


 クロアは白☆チェンジでミルの黒い炎の影響を解除した。



「……どうやら無事に能力が使えるようになったみたいです。

……ありがとうございます。何だか温かい感じが致しました。

これでまた占い師として活動できます」


 やはりメーティスさんのあの話は本当だったようだな。

 白☆チェンジは黒☆黒い炎の対の能力……か。


「じゃあ俺は……そろそろ行きますね。……一応これまでについてのお礼は言っておきます」


「…………はい」


 これで良かったのだろうか……。

 確かに俺の情報をこれ以上協会に流されたら困るが、俺も向こうから情報を得たわけだし。


「あの……せめてもう一日泊っていきませんか?

もう夜も更けてきますし。お代は……いりませんよ?」


「……そう、ですね」

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