じゃあ俺は……
「クロアさん?何故今こんな話をしなければならないかわかりますか?」
「……いまいちわかりませんけど?」
「もう少し推理力を鍛える必要がありますね。
これだけ話をしても、頑なとして自分の信念を変えない。
つまり、ミルさんは大神官と繋がっている可能性が高いということです」
……確かにそうかもしれない。
でもそれで大神官と繋がっている、とはならないんじゃないだろうか?
「うーん?ミルさん……本当にそうなんですか?」
半信半疑の表情を浮かべてクロアは言った。
「…………」
ミルは口を紡いで、俯いていた。
「よく考えてみてください。ここまで指摘したのに自分の考えが変わらない。
普通の人ならさすがにおかしいかも?と思うはずですよ」
「それは……確かに」
この間話した時もそんな感じだったしな……。
◇
暫くの沈黙の後、ミルは口を開いた。
「……だから何なのですか?
まさかメーティス様が組織の一員だなんて……。私、正直失望致しました」
「……こんな話を聞いたことがあります。
大神官の家系の者には約束事があって、大神官については一切秘密で通さないといけないのです」
「……」
「あ、ミルさん……どこに行くんですか?」
ミルは話の最中にも関わらず、外に飛び出していった。
「ミルさん……」
なるほどな、どこかで聞いたような話だがそういうからくりだったか。
……そういえば、ボスの話も確か最初はそんな話だったよな。
「……聞くに堪えずに外に出て行かれましたか。まあ話を聞きたくないのは無理もありませんが」
「これじゃあ、余計にさっきの話が現実味を帯びてきましたね」
「そうですね……。これも予想していた事態ですが」
「わざわざミルさんに直接話す必要はあったんですか?例えそうだったとしても」
「これも必要なことなのです。特にクロアさんにとっては……」
「俺にとっても?」
なんだか……今回もうまく乗せられたようだな?
◇
「……ではミルさんの能力については後でよく話し合って、クロアさんがチェンジの能力で元に戻してあげてください」
「しかし大神官は敵側なのに、協力してもいいんですか?」
「敵と味方の区別ではありませんよ。捉え方としては、味方かその他大勢です」
……いや、それは結局一緒の事なんじゃないか?
「これで私の情報は大神官に筒抜けになるでしょうね。
私は神官の立場から降ろされるかもしれません」
「ということは、ミルさんが大神官のスパイ的な役割もしていたんですか?」
「おそらく、そうでしょうね」
……だとしたら、ミアちゃんも同じか?姉妹なら同じ大神官の家系のはずだろうし?
「……そして、ひとつ忠告をいいですか?私にはもうわかっているのですが、
力を上げたおかげで、クロアさんは黒い炎の能力が使えるようになったはずです。
くれぐれも力の使い方には気を付けてくださいね?」
「はい……」
黒い炎の能力か。もう少し早く使えるようになると思っていたがやっとか。
自由に扱えれるということは、もう強制的に発動されることは無さそうだな。
「それとクロアさんが知りたがっていた人の居場所の件ですが、組織はすでに居場所を把握しています。
話も一段落したことですし……お教えしましょうか。ビアさん、エルクさん、ミアさん……。
今三人は蛇国にいて、行動を共にしています。近いうちにこの街まであなたを探しに来ることになるでしょう」
「三人は無事でしたか……俺を探しに来るとはね。シロンさんはどうしたんですか?」
「それは残念ですが、まだ教えられませんね。
……ところで例の作戦の決行は数日後に決まったようです。
組織は大神官に接触を図ることになります……。それまでクロアさんはどうなされますか?
このまま力をつけていってもいいですが、やりたいことをやるのもいいでしょう。
もちろんここで元の世界に帰るのもいいでしょうが。どうします?」
「そうですね……。じゃあ俺は……」
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黒☆黒い炎 New!
黒い炎が自身の体から溢れ出す。炎はあらゆる物を黒く燃やす。
力が大きいほど威力は強くなる。白☆チェンジとは対の能力。
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