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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第八章 明国編
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Money is power

 ところで情報屋はどこにあるんだろう?

 占いの館みたいな建物も、この街にもきっとあるはずだ。


 とりあえずこの辺の地図が欲しいな……。どこかで買うか。


「えーっと……」


 クロアは周りを見渡した。するとショップの大きな看板が目に留まった。


 あ、あんなところに占いのアイテムショップがあるんじゃないか。まずはあそこに寄ってみるか。



 クロアは店に入るや否や店員に尋ねた。


「あの、この辺の地図と……。人の居場所がわかるようなアイテムはありますか?」


「……ああ、地図ならここに。

あとは……あれ、あの水晶玉が無いな……。さっきの人ので売り切れだよ……」


「そんな……」


「……でもあんた、占い師でもないのにこれを扱えるのかい?冷やかしなら帰った帰った」


 あ、そういえば俺の神官の服はどこいったっけ?

 流れでそのまま普通の青い服のままでここまで来てしまった。


 借りていた神官の服はロルドさんの家だし、もともと着ていた俺の神官の服はどうなったんだ?

 あれが無いと神官の権力が使えないんじゃ……?


 あ、そういやこのバッジを見せれば良かったんだ。


「あの、これが目に入りませんでしたか?」


 クロアは輝く白いバッジを店員に見せた。


「これは……!神官様のバッジ……。

まことにすいませんでした。……今日はお忍びで?」


「それよりも、人の居場所がわかるアイテムは無いのか?」

 こうなったら、手のひら返すよね?


「先ほど買っていった占い師に言えば、まだ何とかなるかもしれません。

あのアイテムは神官様に使って貰うべきかと……」


「うむ……」

 じゃあこの権力を使って譲ってもらいますか。


「たしかこのあたりに住んでいる……。真面目そうな……。

……あ、思い出した。占い師のミル・ステイシーさんですよ。

たしかここから北のほうに家があったと思います。そちらにすぐに向かえばきっと出会えることでしょう。

黒い長髪に紫色のローブの方です」


「ほう、それではそこに行くことにしよう……」


 これは良いタイミングだったのでは?



 クロアは店を出て、北の方向に歩きながら周りを隈なく探した。

 そして黒い長髪に紫色のローブ姿のミルを見つけた。


「やっと見つけましたよ」


「…………」


「ミルさん……?」


「ああ、クロアさん……ですか?何故、こんなところに……?」


「ミルさん……?何だか前と雰囲気が変わりましたね?一体どうしたんですか?」


 ミルは以前の面影はなく、どんよりとした雰囲気を醸し出していた。


「私の能力が……無くなったのです。生命線であったのに」


「どういうことですか?」


「私にもわからないのですが、急に使えなくなったのです。

……これではお金を稼ぐことができません」


「それは……大変ですね」

 表情が明らかに暗いし、なんだか衰弱しているようだ。

 あんなにお金に執着していたミルさんが、お金を手に入れられなくなる。

 それでこんなことに?


「この、さっき店で買ってきたアイテム。

……これを使うことしか、道はもう残されていないのです」

 元気の無い声でミルは言った。


「まずは状況を詳しく教えてくださいよ。俺も協力しますから」


「……妹を探しているんです。あれからもう何日も帰ってこなくて。

確かクロアさんと出かけたはずだったのでは?」


「それが……」


 クロアはミアが行方不明になっていることを話した。



「そうだったのですか?あの時計塔の大爆発の事件の時から……。

でももうあれから日数が経っています。元気にしているか、心配なんです」


「だから、そのアイテムを俺も買おうと思っていて……。

みんなの居場所を知ろうと」


「じゃあ、このアイテムを使ってもらえますか?

今の私では使うことができないかもしれないので」


「はい、じゃあやってみましょうか……」


 クロアはミルから水晶玉のアイテムを受け取った。


「えーっと……」


「このアイテムの使い方を教えましょうか?」


「お願いできます?」



 クロアは水晶玉のアイテムを使用した。


「……この水晶玉に相手の居場所が映るんですよね?

……一向にミアちゃんのいる場所が見えてきませんね。何故でしょうか?

黒い靄がかかっています。……他の人も試してみますか?」


「……もうだめかもしれません。能力は無くなった。妹もどこかに消えてしまった。

普通に占うことさえ最近は身が入らなくて。何よりお金が手に入らないんです」


「そんな悲観的にならないでください」


 一体どういうことなんだろう。運勢が急に悪くなったということだろうか。



「……どうやら俺とあの時別れたあの四人は、

黒い霧がかかってしまって居場所を見ることができませんね」

 いったい何故なんだろうか?これ不良品か?


「……どうか助けてください。クロアさん」


「そりゃあ、助けてあげたいですけど、どうすれば……」


「まずお金をですね……」


「……そうだ、これから暇ですか?」

 ミルの話を遮るようにクロアは言った。


「……?」


「一緒に情報屋に行きませんか?まずはその場所を俺に教えてほしいんですけど」


「情報屋に妹の居場所を聞くのですね?」


「そういうことです」


「それでしたら、私が案内しましょう」



 情報屋はすぐ近くにあったので、クロア達は難なく辿り着くことができた。


「……情報屋はここですね。

とりあえずミアちゃんの居場所だけでもわかるといいんですけど」


「……どうか、その権力をうまく使って聞いてきてください。お願いします」


「はあ……」


 ……権力ねえ。結局この世界も金と権力なのか?

 いや、それを握っているのが運勢というものだったな……。



 クロアはそれから必死に情報屋に聞いたのだが、有益な情報は一つも得られなかった。


「どうやら情報がないようですね。おまけに一緒にいた他の四人の情報も……。

まるで誰かに隠されているかのように」


「そんな……」


「……仕方がないですから、生活費ぐらいは貸してあげましょうか?」


「本当ですか?」

 ミルは急に明るくなった声で話した。


「でも何で能力が突然使えなくなってしまったんでしょうね?

それについても情報が全くなかった」

 前にもこんなことがあった気がするけど。……あれはビアさんだったっけ。


「何でこんなにも情報が無いんでしょう……。思い当たる節はありますか?」


「いや、無いわけではないんですけどね」


 これは裏で組織が口止めをしているな……。

 さすがに俺が組織に関わっていることを言ったら、厄介なことになりそうだから……。

 今はやめておくか。


「こんな時、ミアに頼めば能力で何かわかったかもしれませんが」


「ミアちゃん、本当にどこに行っちゃったんでしょうね……」


「……」


「そう言えば、俺は至急占い力を上げなければいけないんですよ。

どこかこの辺に良い施設とかありませんか?」


「……神官なのに、まだ力が必要なのですか?近くに占いの城はありますけど」


「そんな場所が?」

 ついに占いの施設は、城に昇格したのか?


「はい、割と有名な建物ですが。ここからそう遠くないですよ。

連れていきましょうか?」


「じゃあ、お願いします」



 クロアとミルは占いの城に向かって、歩いていた。


「……あの、ちょっと聞いてもいいですか?お金にこだわる理由を」


「わからないですか?ミアから何も聞いていないのですか?」


「ミアちゃんから……。そう言えば聞いたような……?

確か貧乏な家で運勢も悪かったけど、エルクさんに会ってから事態は好転していったと……」


「その時まで……。そういう生活をしていたからですよ」


「なるほど……」


 つまり昔の貧乏性がずっと残っているということか?

 それだけで人は、こんなにもお金に執着するのだろうか?



 クロアの頭にはあることが思い浮かんでいた。


「俺、今何だか良いことを思いついたんですけど」


「……何ですか?」


「ミルさん……。俺の護衛になりませんか?」


「え?」


「一時的でいいんです。ミルさんからは学べることがあると思うんですよ。

この国のことも俺はまだ全然知らない。だから教えてほしい。

なので、俺の護衛になってくれませんか?もちろん給料は弾みますよ」


「……こんな私でもお役に立てるなら」


「じゃあ……」


「ところで給料は一時間あたりおいくらですか?」


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