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青いお兄さんと

 リンさんと別れて数日。


 ああは言ったものの、俺なりにできるだけの風水を生活に取り入れてみた。

 さすがにメイクはしなかったが……。

 だがそれでも俺の運勢は相も変わらず、悪い運勢のままだった。


「ほら、やっぱり良くならなかった」


 果たしてリンさんと一緒に生活していれば、

 今頃運勢は少しでも良くなっていたのだろうか……。

 でも嫌々やるのも違う気がするんだよな……。

 


 それと同時に神官様探しをしているが、中々情報は得られない。

 やはり占い師より、格が上の神官様に頼み込むしかない。


 それに何故かわからないけど……。

 もしかしたらあの少女なら、悪い運勢をすぐにでも直してくれるんじゃないか。

 ……という思いが日に日に増してきている。

 職業協会で聞いたときは20年と聞いたけれども……。



「確か前に見た時はこの辺りにいたんだけどな……」


 前に来た路地裏。たしかここで喧嘩したんだっけ?

 それで疲れ果てた時に、あの少女が……。

 あの時の光景を思い出し目を閉じると、神々しい白い衣装が瞼の裏に浮かんだ。

 一瞬の出来事だったはずだけど、結構記憶に残っている。


「ここに……いたんだよな……」


 路地裏はこの辺りでは薄暗く、元の世界を思い出して気分が落ち着く。


「ここは落ち着くな。もう少し……この辺りを見て回るか」



「ここにもいないな……」


 クロアはつい思ったことを口に出していた。


「誰か人をお探しかい?若そうなのに頑張るねえ」


「ん……?」


 このパターンは……?どっかで見たな?


「そうなんです、探している人が見つからなくて……」


「そうかい、どれどれお兄さんが少し見てあげよう……」


「えっ……」


 近づいて来たのは、やっぱり……全身ブルーのお兄さんだ!


「どれどれ……」


 正面から顔をまじまじと見られる。その顔はばっちりメイクされていた。


「人の顔をじっと見て……人相を見てるんですね?」


「君、わかってるねえ……その通りさ」

 青いお兄さんは少し驚いた様子で相槌した。


「……じゃあ次は手ですね?」

 クロアはさっと手を出した。


「なんでわかるんだい?あ、さてはこれを見たな?」


 その胸には青いバッジが輝いていた。


「まあ、それもありますね」


 ……正式な占い師って、まさかこんなのばっかなのか?


「ふむふむ……なるほど、君は……なかなか複雑な運勢だね?」

 青いお兄さんは神妙な面持ちで答えた。


「……ですよね」

 例の言葉はないんですね……?



「……って今はそれよりも人を探しているんです」


「誰を探しているんだい?」


「神官ビア・チェレーチェ様です」


「ああビア様ね。……ってあのビア様か」


「はい」


「あの人は本当にすごいお方だからね。伝説になってる話もいくつもあるんだよ。

詳しく聞きたいかい?」


「ほとんど知らないんで、お願いします」


「では立ち話もなんだから、ちょっと場所を変えようか」


「はい、でもできれば手短に……」


「わかった、わかった」


 そう言われると、クロア達は近くの喫茶店に向かった。



 店内は相変わらず派手な装飾が目に付く、落ち着かない場所だった。

 それでも最近は少し慣れてきていた。俺も変わってきたのかもしれない。


「ふう、落ち着いた。少年……名前は?」


「えーっと……クロアです」


「そうかい。俺はロルドだ、よろしくな」


 そう言われてがっちり握手され、顔をまじまじと見られた。


「また見るんですか?」


「いや、ごめんな、青占い師の癖だよ」


「はぁ……」



 二人はコーヒーを飲みながら、話し合っていた。


「……ビア様のことだったよな」


「はい」


「シークスフィアを首席で卒業。

卒業後は占い師になるも、すぐにその実力を認められて神官に昇格。

今じゃ神官の中でもトップ3の実力を持っているって話だ」


「なるほど、すごい力を持っているんですね」


「そりゃあそうさ、一日で貧乏人を億万長者にしたって事もあるって話だよ」


「それはすごいですね」

 これは期待できそうだな。


「そして今はこの功国を拠点に幅広く活動しておられるんだ。

君は見かけたことがあるかい?」


「えーっと……一度だけ」


「そうかい、それは運がいいね。見た目は本当に可愛い少女なんだよ」


「はあ」

 確かにそうだったような気がするな……。


「でも、本人の前で言ってはいけないよ、失礼だから」


「……なんかそんな感じですよね、オーラがあるというか」


「そうだね、ビア様は白く光り輝いていただろう?」


「すごい衣装でしたね」

 今でも鮮明に思い出せるほど、存在感を放っていたんだよな。


「神官様はみな特注の衣装を着ている。一流の青占い師が作るんだよ。

一般人は中々出会う機会がないから知らないだろうがね」


「なるほど」


「しかし、君はもう少し風水に気を使ったほうがいいね」


「……これでも自分では頑張ってるほうなんですがね」


「そうだったのか、まあ嫌々するのもあれだけどな」


「そうですよね」

 おっ、意外と理解ある占い師だな。


「おっと、もうコーヒーが無いな……。だいぶ長くなってしまったようだな」


「いえ、とても興味深い話でした」

 いや結構コーヒー飲むの早いよ?青い人。



「それで、今ビア様がどこにいるかが知りたいんだったよな?」


「知ってるんですか?」


「ああ。だが、やはりただで教えるわけにはいかない」


「……お金ですか?」


 ロルドは顔の前で手を組み、強い口調で答えた。


「いや違う、コイントスで決めようじゃないか。

蛇国がギャンブルで有名なのは知っているよな?」


「は、はい……」

 出たよ、蛇の国。もちろん初耳です。


 ロルドはおもむろにポケットからコインを取り出した。


「今持っているのがこれしかなくてな。この縁起の良い白蛇のコインを使って行おう。

表には白蛇、裏にはシークスフィア協会のマークが刻まれている。

クロア君がビア様に合うべきならば、コインが導いてくれるだろう」


「はい」

 当てられるか……?


「それじゃあいくぞ」


 そういうとロルドはピンと勢いよくコインを弾き、落ちてきた白蛇を手中に収めた。


「さあ……?どっちだ……?」


 和やかだった雰囲気が、コインをはじいた直後、一転して緊張の雰囲気に変わった。

 コインはまったく見えなかった。

 ……だがこれは見るものじゃない。俺の運を試しているんだ。ここは直感を信じよう。


「……裏……ですかね……?」


 一瞬の静寂がその場を包んだ。


「本当にいいのかいクロア君。今ならまだ、変えられるぞ?」


 そう言われると、変えたくなってくる。

 それでも最初の勘を信じるしかない……。


「……はい」


「クロア君、人の宿命はあらかじめ決まっているんだ。

君もこの世界の人間ならわかるだろう?」


「はい……?」

 宿命とは?


 ロルドは残念そうな顔をして語りだした。


「はあ……。本当に残念だな、教えてあげたかったのだがな。

どうやら君はビア様に会うべきではないらしい」


 ロルドが手を開くと、白蛇が顔を覗かせた。


「あ……」

 やっぱり、俺の運勢が悪いからこの結果なのか……?


「どうしても会いたいなら、自力で頑張って探すことだな」


 そう言うと、ロルドはそそくさと立ち上がった。


「すいません、お勘定を」


「あの……もう一回とかは無理ですか?」


「それは無理な話だな。何度やっても結果は同じさ。

わかるだろう?でも俺は君を応援しているよ……それじゃあね」


 そう言うとロルドは早々に動き出し、扉に手をかけた。


「……折角のチャンスが潰えた」



「あの少年がビア様の言っていた例の少年か。これは面白くなるかもな……」


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