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運命の変更



 クロアとエルクは元いたテーブルがある部屋に戻ってきた。


「話し合いは済んだ?どうなったの?」


「クロア君がこちらの代表者で決まった」


「すいませんビアさん。俺は乗り気がしてないんですけどね」


「仕方ないのね……?」


「はい……」


「こちらも話し合った結果……。こちらの代表者はシロンに任せることにしたわ」

 ビアはシロンに合図をした。


 ビアさんのあの能力が無いなら、それが最善策だと思いますよ。

 あの様子じゃ、ミアちゃんに頼むわけにもいかないし。


「そうか、まあそれもいいだろう。どちらにせよ運命はもう決まっている。

私はこの勝負を見守らせてもらうとしよう」


 エルクはテーブル近くの豪華な椅子に座り、勝負の行方を見守る。


「でも、味方同士で戦うことになるとはね……」


「では早速、始めようじゃないか」


 ロルドがカードをシャッフルする。


「カードのシャッフルは公平性を期すため、交互に行う」


「いいわ」


「シャッフルをした者が、イカサマが起きていないか見張る」


 なんだか異様な雰囲気だ。

 俺は今まで隣にいた人と、こうして向かい合って勝負をしているんだから。

 おまけに同じ日本から来た人ときたもんだ。


「やるからには、お互い全力でぶつかりましょう」


「いや……」

 シロンさん今の状況がわかってるのか?

 なんだか全力で楽しんでいるようだけど。


「カードのシャッフルは終わった。互いに山札から一枚ずつ引いてくれ」


 クロアは勝負に負けるため、能力は使わずカードを引いていった。


「1、3、7だ。スペードは無い」

 よし、それほど大きくない数字だ。


 シロンは勝つために、能力を使い引いていった。


「私はここで勝たなくちゃならないよね。きええええええええい」


「すごい声出してますね?」

 ほんとうにどこから声出してるんですか?


「ごめんね?気合を入れているの。……5、10、12で、スペードは10の一つか」


「これは、11対22でシロンさんの勝ちですね」


「……ではカードをシャッフルして下さいビア様、次はそちらの番ですよ」


「あまりいい気にならないでね?ロルド?」


 ビアはカードを受け取り、華麗にシャッフルしていく。


「まだ勝負はどうなるかわからないわ、油断はしないでね?シロン」


「じゃあ次はそちらが先に、カードを取ってくれ」


「よし、気合を入れてっと。きええええええええい」


 まさか……。すかさずクロアは能力を使った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 青☆凝視

 対象者一人が発動している能力を見破る。力があるほど正確にわかる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「8、12、13でスペードは無しか……」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 グレー☆運命掌握

 あなたの力では能力の詳細はわかりません。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「この能力は……」

 シロンさん、この能力は……。

 名前しかわからないけど、これはチート能力ではないですか?


「まさか私の能力がわかったというの?」


「だって明らかにカードの出がおかしいんですもん」


「この勝負は能力の使用は禁止していない。物理的なイカサマは禁止だが」


「ならクロアも少しぐらいは使ってもいいんじゃない?

いくら負けたいからって言っても、これだと楽しくないから……」


「そりゃあそうかもですけどね……」


 その後も二人は互いにカードを捲りあっていく……。

 出ていく数字はやはりシロンの優勢で進んでいった。


「9、11、ジョーカーだ。スペードは無い」


「これはもう勝負は決まったも同然かしら?」



 そしてあからさまに運命は決した。

 驚くほど簡単に決着はついた。


「まさかこちらが本当に負けるとはね……」


「だから言ったでしょう?私たちが勝つって」


「これは……。どうやら話が違うんじゃないか?ロルド君?」


「いいえ。これでいいんですよ、ほらようやく来たようですよ」


 その瞬間、入口の扉からぞろぞろと人が入ってきた。


 部屋は瞬く間に覆面の集団に埋め尽くされ、クロア達は逃げ道を塞がれた。

 覆面達は完全に四人を取り囲んだ。


「……」

 覆面達を従えるように、豪華な仮面の人物はそこに立っていた。


 あれは……?あの豪華な仮面は……。いつかのミスティックのボスか?

 あの時、俺をじろじろ見てきたことはまだ忘れてないからな……?


「ミスティックの覆面達……?こんなところまでやってくるとは何事なの……?

どうやら私たちを逃がさない気のようね。これは一体どういうことかしら?エルク。

私たちは勝ったのよ?約束が違うじゃない?」


「……すまないが、私にもわからない。ロルド?一体これはどういうことだ?」


「さあどういうことなんでしょうかね……?」


「ロルド……。まさかあなた……?」


 パチパチパチ、という音が部屋全体に響く。

 豪華な仮面は急に大きな拍手を始めた。


 その音は力を持っているかの如く、皆の注意を引くとともに場を静かにさせた。


「……これは良いものを見させてもらったわね。

今から行われるショーはとても楽しいものになるでしょう」


 豪華な仮面の声が、部屋中に響き渡った。


「あの声は、まさか……」

 ビアは驚きを隠せない声で言った。


「ベアトリーチェ……なのか?」

 エルクは驚いた表情で、豪華な仮面の人物をじっと見つめた。


「え?誰?」

 ベアトリーチェって誰だろう?初めて聞く名前だけど。


「さあ、これを受け取るのです」

 豪華な仮面は一枚のカードを、クロア達の頭上へと投げた。


 なんだろう?あのカードは……。


 うっ……。


 クロアは頭を抱えて、その場に屈みこんだ。


「一体どうしたのクロア、大丈夫?」

 ビアはクロアに必死に声をかけた。


 シロンも頭を抱えて、その場に屈みこんだ。


「……シロンまでも、いったいどうしたというの?」


「やめて……」

 ミアは誰にも聞こえないような、か細い声で言った。


 そのカードは二人の頭上に不自然に浮いていた。


 クロアの体からはカードへと、黒い炎が溢れ出していく。


 シロンの体からはカードへと、白い炎が溢れ出していく。


 二つの炎が均衡を保って、カードに向けて火花のように溢れ出していく。


 そして眩い銀色に光ったカードは……。

 やがて黒いオーラを身に纏い、瞬く間に黒い靄のようなものを次々と生み出して……。

 辺りを黒く塗り潰していく。


「これは一体どういうこと?

まさかあの塔で起きたことが、今ここで再度起きているというの?」


「ロルド、これは……どうなっているんだ?」


「これだよ、この展開なんだよ。最高だ。そうだろう?」


「ロルド……」


「く……そ、あの時と同じか」

 誰にも聞こえないような力の無い声で、クロアは言った。


 薄れていく意識の中でクロアは……。

 何故かこの世界に来る前のことを思い出していた。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 

「これは誰のせいなんだ。みんな自分勝手すぎるよ」


「でも人は誰でも自分勝手なものよ」


 そうだ。あれはビアさん……?

 いや違う。あれは……。


「じゃあ君も?」


「もちろんそう。だからこうやって人は集まってこないし、文化祭の準備は滞る」


「そういうもんか」


「でもそんなものじゃない?やりたい人だけがやればいいんだよ」


「あいつら爆発すればいいのに」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 そしてカードに集まっていった炎はどんどん勢いを増し広がり……。


 ……やがて、その炎は一点に集結して大きな塊となり、

 勢いを貯め続け、最大限に大きくなると弾け飛び、とてつもない大爆発を引き起こした。


 大きな衝撃音と共に、大地は振動し、建物は悲鳴を上げた。 


 そして周りにいた人々は気を失い、その場に倒れこんだ。


第一部はこれにて完結です。

ここまで読んでくださり、ありがとうございました。

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