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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第六章 上級
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エルクの根城

 朝日が眩しいな……。昨日はビアさんと話し込んだけど、どうなることか。

 さて、宿屋を出てみんなに会うとするか……。


「あれ」

 宿屋の扉を開けようとしたクロアは、その場でよろけた。


 ……なんだか変だな。

 頭に映像が湧いてくる。この光景は……。

 これはいつかにも似た感覚。頭の中で何かが起こっている。


 また予感が、見えた……。

 今日俺はエルクさんと出会う。そして……。

 あれはなんだ。カードみたいなもので戦う……。それで今後の未来が決まる。


 これはたぶん……もうすぐ起きることなんだろうな。



 この二日間、長いようで短かったが、今日でようやく目的地の国境にたどり着くんだな。


 四人はディオンの町の北、国境付近にまで足を延ばしていた。


「すぐさま国境に向かいますか?」


「そうしたいところだけど……。まずは近辺の人に聞き込みをして情報を探る。

それからもう一度能力を使う。その時は、ミアちゃんあなたの出番よ」


「はい……」


「それで位置を完全に特定するの、まずはこのあたりで聞き込みをするわ」


「わかったよ」


 あの予感のことは……。どうせこれから起きるのだから言う必要はないか。


「今日で旅はおそらく終わりだろうけど……。みんな頑張ろうね」


 シロンさんいつになく意気込んでますね。

 何かが吹っ切れたようにも見える。


「……一応今は俺の護衛なので側にはいてくださいね」


「わかってますよ」


「ミアちゃんも、さっきから俯いているけど……大丈夫?」


「はい……」


 今度は緊張でガチガチになっているな。


「どうか何事もなく、終われるといいんですけど……」


「そうだね……」


 それから四人のエルク探しの捜索は続いた。



 数分後。


「……エルク様がいる建物がわかりました。北にある時計塔の中です」


「これでとうとう居場所がわかったわね」


 さて、どうなることか。俺も緊張してきた。


「そこに行けばエルクがいるのね……」


「エルク様……」


「ミアちゃん大丈夫?」

 今度は生気が無くなってきているように見えるけど。


「あのね、実はミアちゃんには昨日の夜色々と話しておいたわ」


「え?じゃあ俺のことも?」


「エルクと会うのに、もう隠してなんかいられないでしょ?

事前に知っておいたほうがいいと思って」


「もはや一緒に行動する以上、それは仕方ないよね……?」


 それはそうかも知れないど、シロンさんの事も話したのか?

 ミアちゃんはたくさんの真実を受け止めきれるのかな?


「あの、私……大丈夫ですから」


「全然大丈夫じゃなさそうに見えるけど」


「大丈夫です……」


 体が全く動かないで、か細い声だけ出してる。これもうダメでしょ。



 数十分後。四人は目的地にたどり着いた。


「どうやらエルクはこの時計塔の中にいるようね」


「はい……」


 とても大きな建造物。時計塔とは名ばかりの大きな城のようだ。

 まさしくボスの根城といったところか。


「もしかして一人は外で待っていたほうが……。

何かあったときにいいかもしれません」


「……じゃあ、シロンはここで一人で待っている?」


「でもやっぱり決着を見届けないといけない気もするし」


 そうだなあ。たとえ罠でもここはみんなで行きたいよな。

 本当の物理的な罠なんて、この世界には存在しないんだろうけど。



「……良い?……開けるわよ?」


 四人は恐る恐る、その大きな正面の扉を開けた。

 時計塔の内部は広く、大理石できた空間がその場に調和をもたらしていた。


 目の前には見覚えがある、青いローブの男が立っていた。


「……ロルド」


「やあ、みんなようやく来たね。首を長くして待っていたよ」


「ロルド、よくも私の前に堂々と顔を出せたわね」


「やあビア様、その後調子はいかがですか?」


「まあ、ここは相手の口車に乗らないで、抑えて抑えて……」

 シロンはビアを必死に宥めた。


 そうとう怒ってるな、これは。


「エルク様は奥の部屋でお待ちですよ。ついてきてください」


 四人はロルドに言われるがまま連れていかれ、奥の方へと歩いた。



「エルク……」


 四人の目の前には白く輝く神官の服を着た、エルクがいた。


「みんな、よくここまで来たね。

……言いたいことがあるのはわかるが、まずは黙って私の話を聞いてほしい」


「聞けるわけないでしょ?今までに自分がしたことを覚えているの?」


 まあその通りだけどね。


「何か思い違いをしていないかい?」


「してない」


 ビアさんは反論に夢中。

 シロンさんは冷静に事を見定めている様子。

 そしてミアちゃんは……。

 

 ……固まっている。完全に氷になっている。

 気絶してないよね?大丈夫か?


「早速なんだけど一つ勝負をしないかい?」


「勝負?」


「カード勝負だ。それでそちらが勝てば何でも言うことを聞こうじゃないか?」


「ふざけないで」


「ふざけてなどいないさ。そちらが勝てば何でも言うことを聞こう。

質問にも答えるし、能力も返すし、もう二度と邪魔をすることはしない。

そしてクロアにも自由を与えよう」


「やっぱりあなたが……」


 そこに俺が入るんだ?

 

「そんなこと承諾するわけ……」


「じゃあ、黒い炎で世界を焼いてもいいのかい?」


「それは……」


 これはどう見てもエルクさんが悪役にしか見えない。

 これは脅迫じゃないか?


「どうだい?勝負をする気になったかい?」


「こちらが負けたら?」

 シロンが唐突に言った。


「その場合はこちらに協力してもらう。もちろん黒い炎で世界を焼く協力ではないよ」


「具体的にはどういう?」


 シロンさん、それはナイスな質問。


「それは今は言えないな。でも君たちに不利になるようなことではないとだけ言っておこう」


「……」


「少し考える時間をあげよう。それからでも遅くはない。最も……断ることはできないだろうけどね」


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