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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第六章 上級
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嵐の前の休息

 夕方、各々自由行動を取ることになり、ビアとシロンは二人でディオンの町を歩いていた。


「この町はなんだか他の町と感じが違うね、あんまり派手じゃないし」


「そうね。でも今は観光よりも……。

今のうちに体も心も休めておかなければね。明日はどうなっているかわからない」


「そうだね。どうなるかわからないけど、なにか大きな事が起こりそうな気がする」


「……今日の夜クロアに話すわ。私の能力のことを」


「そっか……。クロアは別にそんな悪いことをする人には見えなかったね」


「でも人は見かけによらないものよ。この世界では特にね」


「何かあったの?……いやあったのか」


「そりゃあ神官として生活していれば、色々とそういう機会はあるわよ」


「まあ大変だってことは容易に想像がつくけど。

……ところでどうするの?クロアがもし向こう側についたら」


「それも含めて今日の夜しっかりと話すわ。後悔がないように……」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 すっかり夜になったな。今日はここで一泊か。


 夕方の自由行動が終わって、夕食を食べ、宿屋の部屋で一人……か。

 地味な感じだけど、なんだか不思議と落ち着く宿屋だな。

 この急に始まった旅も、明日でようやく終わりか。


 クロアがそう思っていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。


「ちょっといいかしら」


 今日の訪問者はビアさんか……。昨日のシロンさんといい毎日飽きないな。


「いいですけど、何かまた重要な話でも?」


「そうよ。とても重要な話があるの」


「立ち話も何ですから、部屋に入ってください」



「……単刀直入に言うけど、私の護衛のロルドが行方をくらましたのよ」


「……それは大変ですね。なんでいなくなったんですか?」

 あの人、何かやらかしそうな雰囲気ではあったけど。


「そんな簡単な話じゃなくてね、出て行ったのよ。この私に捨て台詞を吐いて」


 まさかビアさんに暴言を吐いて出ていったとは……。これは恐ろしい。


「……それでいつも一緒に行動していたのに、見かけなかったんですね。

どこに行ったか、目星はついてるんですか?」


「それは……よく考えてみたらわからない?エルクのところよ」


「エルクさんのところですか……?」

 ロルドさんはエルクさんと裏で繋がっていたのか?


「彼がエルクと共謀して何かを起こそうとしているのは間違いない。

あの情報屋に聞いた黒い噂も、おそらくエルク達のせいだわ。

……明日エルクと会う前にね、これだけは話しておきたかったの」


「……まあ聞いたからといって、何かが変わるわけでは無いですけど」


「でもそれなりの準備はできるでしょう?それでね……約束してほしいんだけど」


「約束?」


「どんなことがあってもこちら側につくことを……。

そしたらこちらもクロアを元の世界に返すことを約束してあげるわ」


「なるほど……。そう来るんですね」


 さあ、これは面倒なことになりましたね……。

 いつかレイさんに言われていたっけ、ビア様派かエルク様派かって。

 俺はどちら側にも付くつもりはないんだけどな。

 元の世界に帰れるのは魅力的ではあるが。


「まあ、言いたいことはわかりましたけど……。約束はできません」


「……どうして?」


「まずは相手の話を聞かないと……。それで総合的に判断してどうするか決めますよ」


「そう……」

 ビアは俯きながら、元気の無い声で話した。


「……そういえば能力を使えばいいんじゃないんですか?」


「能力?」


「誰かの未来を見ればいいんじゃないんですか?例えばロルドさんとかの」


「それがね……。ここだけの話なんだけど、使えなくなってしまったのよ」


「え?能力が?」


 ビアはこくりと頷いた。


「そうだったんですか……?」


 だからガードに未来予知の能力が来なくなったのか。

 未来予知が使えないビアさんなんて……。もはや何の特徴もないただの神官か……?


「どうして使えなくなったんでしょうね。まさか黒の能力のせい?」

 確か黒☆チェンジの能力は……。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 黒☆チェンジ

 能力を受け渡すことができる。

 送る側、受け取る側の互いの合意がないと、無効になる。  

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「でも黒の能力のチェンジは互いの合意がないと、無効になるはずですよ」


「……そうよね。どうやらクロアは黒の書の情報を知っているようね?私も知っているけど。

ロルドが去り際に言っていた事を推測すると……。

おそらくエルクが私の未来予知の能力を奪ったのよ」


 ……つい黒の書の情報を言ってしまったが、ビアさんも知っていたのか。


「そんなことができるとは思えませんし、まだエルクさんだと決まったわけでは……」


「だってそう考えるのが普通でしょう?ロルドがそう言っていたのだから。

クロアはエルクから能力をもらった時どうだったの?今回とは逆のパターンだけど、教えてくれない?」


「それは……。答えられません」


「何故?」


「……単純に言いたくないからです」


 クロアがそう言うと、少しの無言の時間が流れた。



「しかし遠隔で、しかも相手の合意無しに能力を奪うことができるでしょうか?」


「まさか私のことを疑っているの?」


「いや、別にそんなことは」


「確かに私が能力を無くした事が嘘という考え方もあるわ。

でも……信じてもらえるすべはないわね」


 ……そこまで考えてなかったけど、確かにあり得ない話じゃない。

 もはや誰を信じていいのかわからないな。


「……さっきの話ですけど。やっぱり明日の、その時の状況によって考えます。

でもなるたけビアさんのご希望に添えるようにしてみますよ」


 ビアさんはさっき嘘をついているようには見えなかったしな。


「そう……。それだけでも話したかいがあったわ。……いや、話せて良かった。

あと、言えず仕舞いだったけど、神官への昇格本当におめでとう。それじゃあね」


「……」

 なんか最後にデレたね。俺にあんな表情を見せるビアさんは初めて見たよ。



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