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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第六章 上級
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あの二人って仲良さそうだよね

「このお店は……」


 立ち止まり、一軒のお店を眺めるシロン。


「どうしたんですか?シロンさん。このアイテムショップに興味ありですか?」


「シロン、寄り道している暇はないんだけど……。まあまだ夜まで時間はあるし寄って行きましょうか」


 四人はアイテムショップに入った。


 ここに来るのもあの時以来か。占い師の為のアイテムが売っているお店なんだよな。

 アイテムにはそれぞれに十二支のマークが割り振られている。そう、縁起がいいからだ。

 そんなことを気にしたことはなかったのだが、最近やっと覚えた。


「……シロン知らなかったの?この白い蛇の印が付いているものには、

蛇国の占いの力が秘められているの。そうやって十二支に対応する国が決まっているのよ」


 このマークはそういう意味だったのか。


「もっとも補助的な役割しか持たないし、基本的に神官には無用の物よ。

……例えばこれ、この水晶玉はすぐ壊れるように作られているの。どうしてだと思う?」


「普通に儲けたいからでは?また買ってもらうためにわざと脆く作ってるとか」


「それもあるけど、根本的には違うわよ」


 え?それ以外に何があるというんだ?


 頭を悩ませるクロアを尻目に、シロンははっきりと答えた。


「作る側の力が足りてない」


「そうなの、よくわかったわねシロン。だから品をよく見て買うことよ」


 でもその水晶玉は前に使った時に、結構役立ったけどな?


「じゃあ結局買う意味なんてないんじゃないですか、どれもすぐ壊れるなら」


「だから、それを見定めればいいのよ。

それに自分が使えない色の能力アイテムなら、買う価値はあるかもしれないわ」


 見定めるといっても、どれが壊れないかなんてわからないし……。

 青の能力で見定める能力でもあるということなのかな。


 その後四人は、お店のいろいろな品を見て回った。



 しかしシロンさんは神官なのに、意外とものを知らないんだな。それに……。

 うーん……見ている感じ、シロンさんはビアさんとまるで友達のように仲が良さそうだ。

 クロアが二人を見ていると、品物を見ながら無邪気に笑いあっていた。


 そういや忘れてたけど、この子もいたんだったな。

 クロアはアイテムを見ながら、ぼーっとしているミアの元に駆け寄った。


「ミアちゃん、調子はどう?あの二人って仲良さそうだよね」


「そう……ですね」


「どう?少しは落ち着いた?」


「はい、クロア様……。あの、ちょっと聞きたいんですけど、私はどうしてこんなところにいるんでしょうか……」


「え」

 これは重症だな……。


「ビア様に、エルク様の年齢を聞いたあたりからの記憶が曖昧で……」


 これは、記憶障害を発症しているな。どうにかして正気に戻さないと。


「そうなんだ、じゃあまずは……落ち着いて考えることからしてみようか」


「ええっと……確か年齢を聞いた後になんかあって、その後ビア様に……。

あ、あれ……私、思い出してきたらまた……」


 ミアはその場で頭を抱えて、俯いた。


「ちょっとミアちゃん大丈夫……?戻ってきて」


 クロアはミアの肩を必死に揺さぶったが、ミアの意識は元に戻ることはなく。


「えへへ……」


 あーあ、また表情筋が笑顔で固まってしまったよ。


「これ、駄目だね」


 ミアちゃん……何とか正気に戻す方法を考えないとな。時間が解決してくれるかと思ったんだけど。

 このままだとエルクさんに会ったら一体どうなってしまうのか、心配だな。



 カノンの町は薄暗くなり、明かりが灯る時間になっていた。


「あの、私そろそろお腹が空きました」


「そうね、この辺で夜ご飯を頂くことにしましょうか」


「ビアさん、もちろんここはおごってくれるんですよね?」


「そうね、食事代、宿泊費、施設代。

その他もろもろの費用は私が負担するけど、エルクを説得する使命だけは忘れないでね?」


「はい……」


 俺もお金がないわけじゃないけど、貰えるものは貰っておかないとな。

 ビアさんはお金持ちなんだし。……しかし、よっぽど信用ないのかな?俺。



 クロアは疑問に思ったことを、食事の席でビアに聞いていた。


「そういえば神官の仕事って具体的には何をしていくんですかね?」


「仕事の依頼があればやるけど、占い師よりは逆に全然自由よ」


「そうなんだ」


「あまり大きな声では言えないけど、民衆は神官に会うだけでも幸運に思うし、

一度の仕事で報酬は沢山貰える。町ではちやほやされるし、本当に好待遇よ。

それに逆に立場を利用しないときは、普通に生活していてもいいの」


「なるほど、じゃあ普段はこの衣装を着なくてもいいんですね」


「そのほうが気が楽だしね。ずっとこの服を着ていて過ごしていたら、精神が参ってしまうわよ」


「なんだか、神官の見方が変わってきました」


「一体どんな風に思っていたの?」


「ずっと衣装を着て、毎日忙しく働いているのかなと」


「クロアは変なところをまじめに考えるのね」


 まじめで悪かったな。



 そうして四人は料理を嗜み、その後宿屋についた。

 クロアは部屋で一人、頭の中で状況を整理していた。


 長くて忙しい一日だったな。

 しかし……この神官の服は慣れないし、慣れたくないな。

 どうしてこうなったんだっけ。俺の運勢は良くなったのだから、当初の目的は叶えられた訳だけど。


 あと一つの目的は……元の世界に帰ることか。

 ビアさんは前に何か知っていそうだったけれど、今日は聞きそびれたな。


 そのカギを握るものは、上級の書のどれかに書かれているのではないかと俺は予想している。

 こちらに呼び寄せる能力があるなら、その逆もあるのではないかと。

 黒の書を読んだが、黒の能力は全部で四つしかなく、該当の能力は無かったんだよな。


 あと考えられるのは……もしも元の世界で能力を使うことができるなら、

 向こうから俺を呼んで貰えば、元の世界に戻れるわけだが。まあそんなこと無理だろうしな……。

 元の世界では理不尽なことがいろいろあったけど、でも……。


 クロアがあれこれ考えていると、部屋のドアをノックする音が聞こえた。

 こんな時間に誰だろう?まだ話すこと何かあったかな。


「どなたですか?」


「私です」


 クロアが扉を開けると、シロンが一人、目の前に立っていた。


「ビア様から話をしていいとの許可をもらいました」


「そうなんだ」


「重要な話があります」


 シロンさんのこの感じは……聞く覚悟が必要そうな話だな。


 シロンに部屋に入ってもらい、椅子に掛けて二人は話し始めた。

 するとシロンから唐突に出た一言に、クロアは一瞬自分の耳を疑った。


「私、日本からこの世界に来たんですよ」 




 朝になり、クロアは昨日の夜のことを思い出していた。


 あまりに突然の出来事だったから理解しきれていないけど……。

 シロンさんが俺と同じ日本から来ただなんてな。


 なんでもビアさんが例の能力で呼んだそうで。

 その言葉を皮切りに、そこから先はシロンさんのお喋りが続いて。

 それでやっと日本から来たことが現実味を帯びてきて。でもあんなに快活に話す人だったとは。


 シロンさんはこちらに来てから、毎日がとても楽しいらしくて。

 そりゃあ最初から占い力が二万もあったら、楽しいんだろうな。

 元の世界でも占い好きだったみたいだし。それに夢の世界に来たみたいって楽しげに言ってたっけ。


 ……改めてこうやって考えてみると、彼女は最初の印象とは全然違くて、俺とは真逆の人間みたいなんだよな。


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