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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第六章 上級
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いざ冒険の旅に

 ビアが馬車を引き連れて、クロアの家の前に来た。


「待たせたわね、じゃあ行くわよ」


「いよいよ冒険に出発ですね」


「なんだか嬉しそうね?」


「そうですか?普通ですけど」


「遊びじゃないのよ?目的のある仕事だと思うべきよ」


 国境の辺りには始めて行くから楽しそうとか、言えないんだったな。

 しかし白い輝く衣装の神官が、三人もいると周りに嫌でも目に付いちゃうよな。

 普通に異様だけどもう慣れちゃってる。やっぱり俺もうおかしくなってるな。


 あれ……?ビアさんの隣にいるのは……?


「ところで一つ聞きたいんですが」


「なあに?」


「その表情筋がおかしくなっている可愛い子は何でいるんですか?」


「私の新しい護衛よ」


「え」


「言ったでしょ?お金で買うって」


「あれは冗談では?」


 まさか本当に買ってしまうとは……。


「ほら、ミアちゃん、お手」

 そういうとミアはビアに手を差し伸べた。


 この女完全にミアちゃんを手なずけてやがる。ミアちゃん、逃げて。


「えへへ……」


 だめだ。ミアちゃん、意識がどっかに飛んじゃってるよ。


「ミアちゃん、大丈夫?」


「えへへへ……」


 ミアは笑顔のまま微動だにしない。


「……本当に今のミアちゃんに護衛が務まるんですかね?

いざというときに行動できないと困りますが」


「それは大丈夫よ、見てて」


 大丈夫じゃないだろ、どう見ても。


「ミアちゃん、私の言うことを聞いたらエルク様に会えるわよ」


「ご用は何でしょう、ビア様」


 ミアちゃんは一瞬のうちにシャキッとした。


「ほらね」


 嘘だろ、この短時間で一体ミアちゃんに何が起きたんだよ?

 ミアちゃん完全にビアさんの操り人形と化してるよ。

 これは、誰かが止めないと……。そういやシロンさんは?


 クロアが隣を見るとシロンは、ミアちゃんを愛でるような目で見ていた。

 シロンさん、その目は一体どういうことなの?



「ということでまずは私の馬に乗って北の町、商業都市カノンにむかうわ。

今からだとそこで一泊することになるわね。

そのあと学校シークスフィアを越えて、もう一つの町の戦町ディオンに行くの、ここで一泊ね。

その後にようやく国境に着くはずよ」


「ということは行くまでに二泊三日かかるということですね」


「そういうことね。ところでクロア、あなた馬に乗れる?」


「いや、直接乗ったことはないです」


「どうやって他の町に行っていたの?」


「普通に馬引くタクシーみたいなのに乗りましたよ。御者っていうんだっけ」


「そうなの。ところでタクシーって何?」


「あ」


「あ!」


「えへへ……」


「……さあなんだったかなあ、たくさん乗ったって事ですよ」


「……そうね、今のは聞かなかったことにしましょう」


 ビアさんは空気を読んでくれたが、つい元の世界の事を言ってしまった。

 まあでも……大丈夫か。そもそもこの世界には存在しない言葉なのだから。


 そうして四人の馬車での移動の旅が始まり、数時間で商業都市カノンに着いたのであった。



 あたりはまだ明るく、四人は馬車から降りた。


「ここで一泊する予定だけど、まだ夜まで時間があるわね。どうしようかしら」


「まずは最近の情報でも手に入れますか」


「情報屋ね、今は少しでも情報が欲しいところよね。行きましょう」

 そういうとビアは先陣を切って歩き出した。


 しかし、さっきから隣のシロンさんの様子がおかしいぞ。


「あの、シロンさん」


「私のことはお気になさらず」


 そんなこと言われてもね、気になるよ。そんなにきょろきょろと周りを見られては。


「初めてなんですか?この町」


 シロンさんはこくりと頷いた。


「明国からシャボンの町に来たのなら、この町を通るはずだけどなあ」


 シロンはばつの悪そうな顔をした。


「素通りしたってことかな」


 シロンはうんうん頷いた。


「そっか、ところでミアちゃんはここに……」


「えへへ……」


 ミアちゃん、相変わらずか……。

 しかしどっちの護衛もまともに会話できないとは。なんだか先が思いやられるな。



「ここよ、ここがこの町で最大の情報屋」


 情報屋、お金で情報を買うことができる。

 情報屋のネットワークは世界で繋がっていて、各国の情報は各地に集まる。

 確か情報を得る人のことをシーフって言うんだっけ。情報を盗むってことだったかな。

 なりたい職業ランキングでは上位に食い込んでいたな。それぐらいこの世界で情報は重要なのだ。

 ……ということを少し前に知ったんだよな。


「何か真新しい情報はある?」


「これはこれは神官様ご一行ですね、とても珍しい」

 情報屋の男は驚きの表情を隠しつつ言った。 


 そりゃあ神官が三人もいるわけだからそうなるよな。

 今後もこの驚きは続きそうだな。


「そりゃあ、もちろんお金をはずむだけ情報をご用意いたしましょう」


「そうね、情報次第では大きな額も出せるわ」


 なるほど神官の立場を利用して、こちらの消費を最低限に抑えたんだな。参考になる。


「ありがとうございます、では最近の重要な情報として黒い噂のことはご存じですか」


「黒い噂?」


「もちろん知っているわ」


「今その噂が蔓延しているらしくて、なんでもある日突然体調を崩すらしいんですよ。

それで黒い霧のようなものを見るようになるんだとか。

どうやら黒の素質が関係しているらしいです。あくまで噂ですが」


「風邪とは違うのか?」


「違いますね、明らかに症状が違います」


「やはりこの町でも」


 ビアはクロアに耳打ちした。


「まさかとは思うけど、エルクがもう行動を始めたのかしら」


 クロアもビアに耳打ちする。


「例の黒い炎計画ですか?」


「だとしたら辻褄が合うわ、国境あたりで炎を放ったとしたら……。

この辺りはそのぐらいの影響が出てもおかしくはないわ」


「まだ、そう考えるのは早いと思いますが」


「……あの、話を続けてもいいですか?」

 情報屋の男は仕切りなおす。


「なるほどわかったわ、他には何か情報はある?」


「他には覆面の反抗勢力の活動が、最近また活発化しているとのことです」


 あれ、確か前に明国の神官が事件を解決したはずでは?また活動をしているとは。


「懲りない連中ね、私はどうでもいいけど」


「お気に召しませんか?神官様のお力があれば何とかなるのではないのですか?

活動を止めてほしいという声が市民から多数あります」


「単純に興味がないのよ、仕事の依頼も来ていないし」


 結構ひどいことするからな、あの連中。

 俺もあまり関わりたくないな。仕返しはしたいけどな。


「……それとこれはとっておきの情報なのですが」


「何?」


「物を女の子に変える能力を持った占い師がいるようです」


 あれ?それって……。


「そんな……いったいどこからの情報なの?お金なら追加で出すわ」


「ありがとうございます。それは……ずばり蛇国です」


 それもしかしなくても俺か……?レイさん変な風に情報を流したな?


「もう少し、詳しく教えてもらえる?」


「元の情報は蛇国の大きな男から提供された情報で、

その占い師は物を女の子に変える能力を有しているとのことです」

 

「そうなの……。そんな能力があるとはとても思えないけど、不思議な話ね」


「そうでしょう、そうでしょう」


 なんだか滅茶苦茶飛躍してるな。確か俺、あの時レイさんに話したよな?

 ……そういや能力をばらすのが嫌だから、詳しく説明してなかったっけ。だからこんな噂に?



「……そういえばこの国の神官についての情報はないかしら?」


「それは、貴方様達の事では?」


「違うわ、私たち以外の神官のことよ」


「……今は特に情報は入ってきていませんね。

新しく神官になった方の情報はちらほら入ってきますが、大きなものは何も。

神官様の情報ともなれば、瞬く間に飛び回るのですがね」


「そうよね……。じゃあもういいわ」


「では……お代を」


「仕方ないわね」


 ビアは情報屋の男にお金を渡した。


「ありがとうございました」


 俺っていい出せなかったけど、良かったのかもしれない。

 情報屋にばれたら、今度は物を女の子に変える能力を持つ神官の噂が出回ってしまうもんな。


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