彼女に決めた
やはりここは純粋に力が大きい人にするべきだろう。
「じゃあシロンさんでお願いします」
「えええええええええええええ」
部屋中にみんなの声が鳴り響いた。
「それはだめよ。シロンは私の大事な護衛なのだから」
「でもビア様には他にも護衛がいるんでしょ?
シロンさんの力は見たところ物凄いので頼りになるどころか、俺を超えてますし。
他の国の神官さんにも興味あるので、決めました。ところでどこの国の神官様なんですか?」
「私は明国の神官ですよ」
「ちょっと……シロン、勝手に答えてはだめよ」
「なら余計に興味がありますね。
あとミアちゃん本当にごめん、この借りはいつか必ず返すから」
「大丈夫です……よ」
うーん、悪いことしたかな。
「普通におかしいでしょ、神官に神官の護衛をつけるなんておかしいわ」
「でも別にだめって決まってないですよね。それを言うならビアさんも同じじゃないですか?」
「そんなこと言ったって、人の護衛を奪うなんて違反行為よ」
「そんな法律が存在するんですか?」
「問題ありませんね」
「セリスさん?」
「ごめんなさい、なんだか余計なこと言っちゃいました?」
「じゃあ本人に聞いてみましょうよ。どうなんですかシロンさん」
ビアはシロンに必死に首を振るジェスチャーをする。
「私は……いいですよ」
「何言ってるのシロン、いや、め……」
「ほら、シロンさんもこう言われてますよ」
「それは禁句ですよ、ビア様。なんだか楽しそうなので良いじゃないですか」
ビアはそれを聞いて少し考えてから、話し始めた。
「……そうね本人がそう言うなら仕方ないわね。
じゃあ……みんなにうまく言い訳をして準備をしてさっさと来なさいね。
こちらも準備をして外で待っているから」
そう言うとビアは家を飛び出していった。
これビアさん絶対怒ってるよな……。後でちゃんと謝っておかないとな。
◇
さて、周囲の冷たい視線をどうするかだが。
「まあ一応みんなに謝っとくわ」
「はあ……ビア様とクロアは仲が良いんだか悪いんだかわかんないねー」
「喧嘩するほど仲が良いのではないでしょうか」
「報酬があったのならついていきたかったですね。損害額が発生いたしました」
損害額は言い過ぎでしょ。
「まあ一番能力が高そうな人を選ぶのは、賢明な判断かもしれませんね。
私も護衛を誰にするか決めなくては」
「でもこれは思ってた選ぶとは違いすぎるから、また今度選ばないとだねー」
「そうですね、今回は護衛を選ぶことでしたから」
もう勘弁してほしいな。
「どうせならもう少し考えてほしかったよね」
「時間がなかったからね」
「ほら、誰が一番合うかとかさ……」
「それは相性占いで簡単にわかることですよ」
「それだ!ミルさんならそれできるよね?お願いできる?」
「いいですけど、お金はきちんといただきますよ?」
「うーん、どうしよっかなー」
どうやらまだ女子会は終わっていなかったようです。
ところでこちらの子は……。
「ミアちゃん、ずっと黙ってるけど大丈夫?」
「わ、私は……エルク様に合いたかったです……」
ミアちゃん相当ショックだったんだろうな。表情でわかるよ。
「今度、機会があったら必ず合わせてあげるからさ……」
「約束ですよ……」
◇
その後みんなと別れ、出発の準備を始めたクロア。
持っていくものは旅行に行くときのような感じで、あとは……。
そういえば、ビアさんにどのくらいの日数がかかるのか聞いてなかったな。
地図を見る限りでは、国境まで数日はかかるんだろうな。
だとしたら必要なものは……。町にも寄るだろうし、必要最低限でいいか。
◇
クロアが準備を終えて外に出ると、家の前ではシロンが待っていた。
「ビアさんはもう少し準備に時間がかかるそうです。あの……一つだけいいですか?」
「なんとなく察しはついているけど、口封じてきなことだよね」
「わかっているならいいんですが、だいぶ制約がかかっているので。
言いたいことも言えないのって辛いんですね」
「そうだね、俺にもあるからその気持ちはよくわかるよ」
「ですよね。いつかいろいろ話せるといいんですけど。
でも少しでも話せて良かったです。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ護衛、いや仲間としてよろしく。
そういやビアさんは縛り癖があるから、いろいろと大変でしょ?」
「そうですね。でもクロアさんのお陰でましになったと言っていましたよ」
「そうですか」
あれでましになってるのか?