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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第六章 上級
53/111

この中で一人を選ぶとしたら誰を選ぶ?の戦いがようやく……

「それでまだひとつわからないことがあるの。エルクが今どこにいるのか全くわかっていない。

私には居場所を探るのは難しいから、どうかみんなの力を貸してほしいの」


 ビアさんでも難しいのか。未来予知は恐らくガードされるもんな。

 俺にはそんな能力あったかな?えーっと……無いな。


「人の居場所がわかる能力なんてあるの?私にはないけどそんな能力が欲しいよね」


 青いお姉さん、そりゃ誰だって欲しいよ。


「私にはわかりませんが、明国の神官に力を借りてはどうでしょうか?

遠くを見通す能力を持っている方がいるという話を聞いたことがあります」


「それは駄目ね。エルクと会うのは協会には秘密だし、他の国に迷惑はかけられない。

もしその状況があるとすれば、もしもの時だけよ」


 別国に協力を依頼するのも、協会を通さないといけないんだよな。


「でももう大丈夫なんじゃないですか。クロアが悪さをしなくなった未来になったようですし」


「そんなことはないわ。エルクは今、昔よりも力をつけている。

たとえクロアがいなくても、一人でも行動を起こすかもしれない。

エルクも黒の能力が使えるのだろうから、話し合って確認するまでは安心できないわ」


 その話を聞き、周りは少し暗い雰囲気になった。


「それにこれは私にとってもいい機会だから……いや、私情を話すのはやめにしましょう」


「……エルク様は、ずいぶん前からこの国に帰っていないと聞いたのですが」


「そうね、この国の協会支部には帰ってきたという知らせはないわね」


 まあ年に一度くらい顔を見せに帰ってもいいよな。この国の出身なんだし。


「……」


 シロンさんは無言で話を聞いているようだな。寡黙なんだな。


「あの……それなら……私がわかるかもしれません。能力で」


「そんな能力があるの?」


「あまり言いたくなかったのですが……非常時みたいですし、仕方ないですよね」


 ミアちゃん、その能力はもしかして、あの……?


「確かにミアの能力を使えば可能かもしれませんね」


「でもこの能力は……相手の生年月日を知る必要があるんです……」


 やっぱり。ミアちゃん、エルクさんの生年月日を知りたいがために能力を打ち明けるとは。

 エルク様好き好き病恐るべし。


「それで……誕生日はわかりますか?わからないなら、どうしたらわかるのでしょうか」


「そうね、私は個人的に年齢は知っているのだけど、月日まではさすがに……」


「ならシークスフィアから機密情報を盗み出す!もうこれしかないね!」


 そんなスパイみたいなの俺もうこりごりなんだが。


「アイさん、それはさすがに法律に触れますわ」


「えー良い案だと思ったのになー」


 青いお姉さんは場を和ませたいのか、本気なのかどっちなんだ。


「あの……それでもいいです。年齢だけで……もしかしたらわかるかもしれません。

私の思いはそれほど強いのです」


「……?」

 ビアは首を傾げた。


「ビア様、妹の言うことは気にしないでください」


「ミアさん、あなたは……」


 その思った通りですよ、ビアさん。


「とにかくやってみますから、年齢を教えてください」


 ミアちゃん、エルク様好き好き病を必死に抑えているようだが、目の輝きが誤魔化せてないよ。


「じゃあ、個人情報なのでミアさんだけに特別に教えるわね」


 ビアはミアにエルクの年齢を耳打ちして教えた。


「はあ……。おっといけない、能力を使わなきゃです……」


 ミアちゃんそんな表情したら、エルク様好き好き病が完全にビアさんにばれるぞ。


 ミアは念じて能力を使った。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 紫☆運命透視

 対象者一人(自分以外)の運命を視る。視る時期を指定できる。

 相手の事がわかるほど、思いが強いほど、正確にわかる。

 誕生日を知らなければ無効になる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「……どう?わかった?」


「大体の位置はわかりました」


 年だけでいけたか。さすがの思いの強さだな。


「功国の北に……明国との境目の国境があります。どうやらそのあたりにいるようです」


「それはありがたい情報ね、まさか本当にわかるとは……」


「ミアちゃん、すごいすごいー。いいこいいこ」

 リンはミアの頭をなでる。


「えへへ……」


 ミアちゃんは褒められて喜んでるんじゃないぞ。

 エルクさんの年齢を知れたから、まだ興奮が冷めてないんだ。


「ミアさんすごい能力ですね。ぜひ私の部下にしたいところですわ」


「駄目だよ、私と一緒に組むんだから」


「でも適材適所に人材を配置するのも、神官の務めなのですわ」


「だってもう私が先に約束したし、そうだよねー?ミアちゃん?」


「えへへへへへ……」


 ミアちゃん、いつまで呆けてるんだ。勝手に話が進んでしまうよ。


「ほら、ミアちゃんもこう言ってるから」


「でも適材適所に人材を配置し……」


「あの……私の妹を勝手に取り合わないでくださいますか」


 あれ……まさかミルさん、シスコンだったの?


「……?私の妹とはどういうことですか?」


「あ、ミルさん、ミアちゃんを自分の所有物みたいに言ったー」


「いや、今のは決して、そういう意味ではなくてですね」


「えへへへ……」


 ミアちゃん、そろそろ正気に戻れ。


「……っ!」


 シロンさんが何かを言いたそうにしているのを必死に堪えているだと……?


「じゃあもう、みんなでじゃんけんでもしてミアちゃんを奪い合おうよ」


 どうしてそうなるんだ。


「それなら望むところですわ」


「言っとくけど能力禁止ね」


「もちろん。実力でミアさんを勝ち取って見せますわ」


「私の妹を賭けないで……」


「じゃあミルさんも参加して勝てばいいんだよ」


 ミアちゃん……どうすんのさこれ。

 しかしミアちゃんをみんなで取り合ってるのを見るのは、なんだか和むなあ。


 その後このやり取りは、もう少し続いた。


「……ちょっと、いつまでやっているの。元の話を続けるわよ。

あ、それとミアさんは私がもらいうけるわ。金で」


 ビアさんもちゃっかり入ってんじゃん。しかも金で買うな。



「仕切り直して……話を続けるわ。

とにかくそれだけわかれば十分よ。現地で情報を得ればより正確な位置がわかることでしょう。

功国の北……明国との境目の国境。これはすこし遠出になりそうね」


 国と国の境目。ここからどれほどの距離があるのだろうか。皆目見当もつかない。


「じゃあまずクロア、約束は必ず守るからついてきてくれる?

あなたもこの件に深く関係している訳だし」


「仕方ないですね」


 と言いながら、上級の書を全巻手に入れられてかなりラッキーだと思う。だが表情には出さない。


「もしもの時はエルクを説得して頂戴。

あの人クロアに似て頑固だから、似た者同士で説得できるでしょ?」


「はあ……」

 ビアさん、それはあからさまに悪口言っていますが?


「それで、一緒に行く人についてだけど……」


「あの、私も絶対に行きたいです」

 ミアはいの一番に手を挙げて叫んだ。


 まあ、当然そうなるよね。


「私も神官としてお供します」


 まあ……わかるよ。


「私は報酬がもらえるのなら、喜んで協力いたしましょう」


 さすがにもうわかった。


「もちろん、私もーーーー」


 青いお姉さんはどうなのかなー?


「そんなに大勢で行ってしまっては逆に危険よ。

……そうね、一緒に連れて行けるのはせいぜい一人よ」


「そんな……」

 四人の残念な声が響いた。


 ミアちゃんは確かに可哀そう。うん、これだけは言える。


「そうだ、これはいい機会だからクロア、この中から一人を選んで。

もともと神官には補佐役として必ず一人は護衛がつくものなの。

それは用心棒でもいいし、占い師でも誰でも良いの。だからそれを今決めるのよ」


 そうだよね、知ってた。

 そういや今日はビアさんの護衛に付いてた、ロルドさんはいないんだな。


「この中で一人を選ぶとしたら誰を選ぶ?の戦いが今ようやく……。

あの時はすっぽかされたけどここで決まるわけだ」


「そんなことがあったのですか?なんだか楽しそうですね」


 はっ……ここで予感したのがくるのか。

 本当に誰にすべきか選ばないわけにはいかなくなってしまった。

 大事なパートナーだ、慎重に決めなくては。

 どういう基準で選ぶか。好みか、能力か、気の合う人か……悩む。

 だとすると……まずはみんなの力を見てみるか。これが一つの指標になる。


 クロアは能力の目視を発動した。

 なるほどこうなったか……ならば……。



「どう?パートナーは決まったかしら?残された時間はあまりないの。

これからすぐに出発しなければならないわ」


「じゃあ……」


 みんなの視線がクロアに集中する中、クロアは決断を下した。


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