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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第五章 中級 続・占い師の仕事編
42/130

武器は己の肉体のみでしょ

「ところで……敵はどんな武器を持っているんでしょう?」


「武器?」


 あれ?まさかこの世界って武器とかないの?


「ほら、銃とか手榴弾とか剣とか」


「なにそれ?」


 この世界の武器どうなってんの?さっきの男たちはナイフ持ってたよな?


「武器は己の肉体のみでしょ」


 セリスさん、何かかっこいい事言ってますけど。

 冗談なのか本気なのかわからないです。

 そういえば今までこの世界で武器屋すら……いや剣すら見たことなかったな。

 もしかしたら本当に武器などないのかもしれないな……。



「すんなり奥まで潜入できましたね。

時折見つかった敵さんもお咎めなしでしたし」


「そりゃあ私たちは、無事に任務を果たせる運命になっているのだもの」


「ここで行き止まりですが、しかしこの部屋は……」


「黒い扉……だわ。とても縁起が悪い」


 その扉は真っ黒で、少しも光を通さないような色になっていた。


「……そうですね」


 セリスさん。そんなに怯えて……。

 わかった、先入観があるんだな。

 小さい頃から黒い物は危険だと脳に刷り込まれている。

 だから無意識にでも、体が反応してしまうんだ。


 まあ俺もやっとわかってきたことだけど、

 実際に黒い物で運勢が下がるのが、この世界なんだよな。


 でも俺はそんなに怯えるほど、気にはならないけど。


「俺が開けましょうか」


「できるなら頼むわ。触れただけでも運気が下がりそうで……」


「そんなことはないでしょう、ただの扉ですよ」


 そう言うとクロアは扉に手をかけた。


「クロアは勇気があるわね……」



 扉の先には薄暗い部屋。ここは反抗組織のアジト。

 つまり縁起など知ったことではないということか。


「どうやらこの部屋はいかにも怪しいですね。……しかし誰もいないとは」


 おや?この紙は。


 クロアたちは大量に散らばっている紙を拾い、内容を確認する。


 そこには彼らの目的などの情報が書かれていた。


「やつら、シークスフィアで事件を起こすつもりだ」


 期日は一か月以内。

 しかも能力を封じる手立てが書かれている。

 これは占い師でなければ知りえぬ情報だ。

 もしこんなことをされたら、占い師の卵たちが……。


 ジョーダン・ヒルトン。これがボスの名前だろうか?


「なんてこと!敵も大それたことを考えたものね」

 セリスは紙を見るなり、驚いていた。


「……どうします?」


「この運命を変えることは私たちにはできそうにないわね。

規模がここまで大きいとは。こんなに大きなものは私も初めてよ。

何もできない占い師は非力よ、どうしようもない」


「やはり俺たちの力だけでは、どうにもできそうにないですよね」


「戻って上の者に、今掴んだ情報を話すしかないわ。

そしたら神官様達がなんとかしてくれる。

大丈夫、きっと運命を変えらえるだろうから、事件は起きないはずよ」


「そうですね、じゃあこの紙をもって一度外に出ましょうか。

もちろん帰り道には十分気を付けて……」


 俺にはまだ複数人の運命を変える力はない。

 いくら刹那が強力だったとしても。

 例えばボスの運命を変えたとしても、部下の運命が交わるので無理だろうし。

 俺にもう少し力があれば……。


 ……その後クロアとセリスはアジトの来た道を戻った。

 幸いにも監視に殆ど気付かれずに、無事入り口までたどり着くことができた。


 そして近くの商業都市カノンへ戻った。

 街に戻るとすぐに、神官ゾルへと手紙を出した。

 夜も更けていたので本日は宿屋に泊まることにし、宿屋のロビーで話し合っていた。



「どうしてあんなことになるんですかね」


「そんなの簡単じゃない。運勢が悪いからよ」


「みんなの運勢を良くすることはできないんですか」


「みんなにチェンジを使えればできるかもしれないわね。

でもチェンジを複数人に使えるとすれば、どれほどの力を必要とするか。

そもそもチェンジを使えるのは基本、白の神官のみ。

今この国にはビア様とエルク様しかいないのよ?

私なんて……白の能力すら使えないのに……」

 セリスは自分の非力さに落胆していた。


 あの二人は協力してくれるのかな。チェンジは俺も使えるわけだけど。

 でもセリスさんのこの落ち込みよう……。


「もしかして、それ結構コンプレックスになってます?」


「そうよ、悪い?

どうしても青の能力が手に入らない人の気持ちは、クロアにはわからないでしょうね。

勉強してもしても意味がないの。青い人たちの訓練をあんなに受けたのに」


 青い人たちの訓練……。

 クロアには青いお姉さんの記憶が蘇った。


 ……ちょっときついですね。 

 でもなんで青の能力が身につかないんだろうな。可哀そうだ。

 ……そうだ、ちょっと能力を使ってみてあげるか。


「セリスさん」


「なあに?」


「俺がおまじないをかけときましょうか」


「どういうこと?」


「青の能力を覚えられるようにとっておきのおまじないです」


「……まさかクロア」


「はい?」


「そんな高等テクニックを?」


「高等?」

 まあ確かに高等だけど……。


「どこで身に着けたの?」


 あれ?


「やっぱり私に気が合ったのね」


「いや、そんなつもりは」


「だってこれから……」


「だあああ、違います違います!」



「能力を使ってくれるってこと?」


「はい、そうすれば能力を身に付ける助けになるかもしれません」


「なんだか勝手に勘違いしてしまって悪かったわ。……でもそれお願いするわ」


「では……」


 目を閉じ念じながら、瞑想をし始めるクロア。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 白☆チェンジ

 対象者一人の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


(そういえば……クロアも、白の神官になる予定だったわね。

 クロアありがとう。見直したわ)



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