武器は己の肉体のみでしょ
「ところで……敵はどんな武器を持っているんでしょう?」
「武器?」
あれ?まさかこの世界って武器とかないの?
「ほら、銃とか手榴弾とか剣とか」
「なにそれ?」
この世界の武器どうなってんの?さっきの男たちはナイフ持ってたよな?
「武器は己の肉体のみでしょ」
セリスさん、何かかっこいい事言ってますけど。
冗談なのか本気なのかわからないです。
そういえば今までこの世界で武器屋すら……いや剣すら見たことなかったな。
もしかしたら本当に武器などないのかもしれないな……。
◇
「すんなり奥まで潜入できましたね。
時折見つかった敵さんもお咎めなしでしたし」
「そりゃあ私たちは、無事に任務を果たせる運命になっているのだもの」
「ここで行き止まりですが、しかしこの部屋は……」
「黒い扉……だわ。とても縁起が悪い」
その扉は真っ黒で、少しも光を通さないような色になっていた。
「……そうですね」
セリスさん。そんなに怯えて……。
わかった、先入観があるんだな。
小さい頃から黒い物は危険だと脳に刷り込まれている。
だから無意識にでも、体が反応してしまうんだ。
まあ俺もやっとわかってきたことだけど、
実際に黒い物で運勢が下がるのが、この世界なんだよな。
でも俺はそんなに怯えるほど、気にはならないけど。
「俺が開けましょうか」
「できるなら頼むわ。触れただけでも運気が下がりそうで……」
「そんなことはないでしょう、ただの扉ですよ」
そう言うとクロアは扉に手をかけた。
「クロアは勇気があるわね……」
◇
扉の先には薄暗い部屋。ここは反抗組織のアジト。
つまり縁起など知ったことではないということか。
「どうやらこの部屋はいかにも怪しいですね。……しかし誰もいないとは」
おや?この紙は。
クロアたちは大量に散らばっている紙を拾い、内容を確認する。
そこには彼らの目的などの情報が書かれていた。
「やつら、シークスフィアで事件を起こすつもりだ」
期日は一か月以内。
しかも能力を封じる手立てが書かれている。
これは占い師でなければ知りえぬ情報だ。
もしこんなことをされたら、占い師の卵たちが……。
ジョーダン・ヒルトン。これがボスの名前だろうか?
「なんてこと!敵も大それたことを考えたものね」
セリスは紙を見るなり、驚いていた。
「……どうします?」
「この運命を変えることは私たちにはできそうにないわね。
規模がここまで大きいとは。こんなに大きなものは私も初めてよ。
何もできない占い師は非力よ、どうしようもない」
「やはり俺たちの力だけでは、どうにもできそうにないですよね」
「戻って上の者に、今掴んだ情報を話すしかないわ。
そしたら神官様達がなんとかしてくれる。
大丈夫、きっと運命を変えらえるだろうから、事件は起きないはずよ」
「そうですね、じゃあこの紙をもって一度外に出ましょうか。
もちろん帰り道には十分気を付けて……」
俺にはまだ複数人の運命を変える力はない。
いくら刹那が強力だったとしても。
例えばボスの運命を変えたとしても、部下の運命が交わるので無理だろうし。
俺にもう少し力があれば……。
……その後クロアとセリスはアジトの来た道を戻った。
幸いにも監視に殆ど気付かれずに、無事入り口までたどり着くことができた。
そして近くの商業都市カノンへ戻った。
街に戻るとすぐに、神官ゾルへと手紙を出した。
夜も更けていたので本日は宿屋に泊まることにし、宿屋のロビーで話し合っていた。
◇
「どうしてあんなことになるんですかね」
「そんなの簡単じゃない。運勢が悪いからよ」
「みんなの運勢を良くすることはできないんですか」
「みんなにチェンジを使えればできるかもしれないわね。
でもチェンジを複数人に使えるとすれば、どれほどの力を必要とするか。
そもそもチェンジを使えるのは基本、白の神官のみ。
今この国にはビア様とエルク様しかいないのよ?
私なんて……白の能力すら使えないのに……」
セリスは自分の非力さに落胆していた。
あの二人は協力してくれるのかな。チェンジは俺も使えるわけだけど。
でもセリスさんのこの落ち込みよう……。
「もしかして、それ結構コンプレックスになってます?」
「そうよ、悪い?
どうしても青の能力が手に入らない人の気持ちは、クロアにはわからないでしょうね。
勉強してもしても意味がないの。青い人たちの訓練をあんなに受けたのに」
青い人たちの訓練……。
クロアには青いお姉さんの記憶が蘇った。
……ちょっときついですね。
でもなんで青の能力が身につかないんだろうな。可哀そうだ。
……そうだ、ちょっと能力を使ってみてあげるか。
「セリスさん」
「なあに?」
「俺がおまじないをかけときましょうか」
「どういうこと?」
「青の能力を覚えられるようにとっておきのおまじないです」
「……まさかクロア」
「はい?」
「そんな高等テクニックを?」
「高等?」
まあ確かに高等だけど……。
「どこで身に着けたの?」
あれ?
「やっぱり私に気が合ったのね」
「いや、そんなつもりは」
「だってこれから……」
「だあああ、違います違います!」
◇
「能力を使ってくれるってこと?」
「はい、そうすれば能力を身に付ける助けになるかもしれません」
「なんだか勝手に勘違いしてしまって悪かったわ。……でもそれお願いするわ」
「では……」
目を閉じ念じながら、瞑想をし始めるクロア。
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白☆チェンジ
対象者一人の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。
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(そういえば……クロアも、白の神官になる予定だったわね。
クロアありがとう。見直したわ)
◇




