私をこの世界に呼んだ人
シロンは朝、ベッドから起きて座って考えていた。
夢を見ていたんだよ。
確か白い龍が出てきて……何かを言われたんだよね。
夢占いではどんな意味があったっけ。
なんでか思い出せないな……。
ここ数日、白いものばかり見ていたから、あんな夢を見たのかな……。
でも、嫌な夢じゃなかった。
……数分後、ドアをノックする音が聞こえた。
「シロン様、入らせていただきます」
「起きているよ、どうぞ」
扉が開かれると、そこには白く輝く衣装を身に着けたミリアが立っていた。
金色のサラサラの綺麗な長髪が、白く輝く衣装に見事に似合いオーラすら醸し出していた。
今までのミリアとは明らかに違う。シロンはすぐに感じ取った。
「……ミリア?これはどういうこと?」
「起きてください、シロン様。
なんてね、やっと会えたわね?ずっとあなたを待っていたのよ」
今までの雰囲気と違うミリアに、シロンは少し困惑した。
「もう演技することに飽きちゃってね、数日が限界だったのよ。
もうメイドのフリはこりごり」
「……やっぱりそうだったんだね」
シロンは、俯きながら答えた。
数秒でシロンは状況を把握した。
数日一緒に暮らしていればわかるよ。
お城で暮らす日々、気付けばいつもミリアの目があった。
最初にあった時からの妙な違和感。
毎日話しているときの、ふとした動揺。それは仲良くなればなるほど、顕著に見えてきた。
「……おこっちゃった?」
ミリアは不安そうに話した。
「それは未来予知で見れないの?」
「未来予知は時間もかかるし、体も疲れるの。それがデメリット」
「そうなんだ……人の感情まではわからないのね?」
「もちろんそうよ」
◇
「シロン。いや敢えて二人だけの時は明華と呼ばせてもらっても良い?」
「その名前は……話したんだね」
未来予知で分かったのね。
私は未来でミリアと仲良くなった。そして話してしまったのね。
「理解が早くて助かるわ」
「未来予知って他人の未来を追体験できる感じなの?」
「そうね、追体験という言い方が合っているかもしれないわね」
「……他にデメリットは?今まで騙していたんだから、それぐらい教えてくれても良いでしょ?」
「そんなのたくさんあるわ。
視る時期を指定できなかったり、未来がほんの少し変わってしまったり……。
それに未来予知に何度か失敗しているの」
「確か載ってたよね、上級七巻に。未来予知は黒い素質を持つものに阻害される」
「そうね、未来が変わってしまうことが多いの。それでクロアには随分と苦しめられたわ」
「クロア?」
「シロンと同じ日本から来た転移者よ。
本来なら彼が私の仲間になるはずだったのに……」
「……私じゃ不満ってこと?」
「そんなことないわ、明華はとっても優秀だもの」
「……わかった、クロアに気があるんだね?」
「そ、そんなことないけど。未来予知の未来で少し一緒に暮らしてただけだし……」
ミリアは少し顔を赤くした。
「あ、照れてる照れてる」
◇
「それで、最初に言っていたはずだけど、一緒にこの世界の闇を正すために協力してくれる?
もちろん騙していたことは謝るわ。
でも明華の未来を見て、考えられる最高のもてなしをしてきたつもりよ」
「どうしようかな?」
「え?」
「最初から協力してほしいと、お願いをしてくれたら良かったのに。
なんでこんな回りくどいことをしたの?」
「それには色々事情があって……。
協力してくれると約束してくれるなら話すわ」
「……じゃあすぐにその理由を話してくれるなら、協力してもいいよ」
「本当に?」
「それが私が納得いく理由であれば……ね」