白い蛇の形のかわいいパンがある!
シロンはあのふかふかのベッドで寝ていた。
ああ、夢から覚めてもまだ夢の世界なんて、なんて最高なんだろう。
朝の学校に行く時間だから、いつもの感じで目が覚めてしまったけど。
もうすこしだらだら寝よう。寝心地が良すぎだよ……。
「今日のあなたの運勢は……」
え?シロンの頭の中で運勢を告げる声が聞こえる。
「ピーキーケイオスシルバーソルトです」
え?なにこれ。どうゆうこと?
まあいいや、もう少し寝よ。
……数分後、ドアをノックする音が聞こえた。
「シロン様、入らせていただきます」
ミリアがシロンを起こしに来ていた。
「シロン様、起きてください。昨日は色々あって疲れたでしょうが。
食事を食べられた後、ゆっくり休まれたでしょう?」
「……そうだね。でもまだ眠いんだ。寝させて」
「だめですよ。朝食はしっかり決められた時間に食べないと。
昨日の夕食と同じ二階の食堂で待っていますから、必ず来てくださいよ」
ミリアはそういうと、ドアを閉めていった。
ごめんねミリア……あと少しだけ……。
シロンとミリアは昨晩、会話が弾んで仲良くなり二人の心の距離は縮まっていた。
◇
数分後、またドアをノックする音が聞こえた。
「シロン様、入らせていただきます。すいません、言い忘れました」
「うわっ、なに?」
「ちゃんと神官の服を着てから、下に降りてきてくださいね」
「……はい」
それから数十分後にシロンは目が覚めた。
お城に住むのはいいんだけど、階段が面倒だね。
エレベーターは……あるわけないよね。
私の夢の世界観の雰囲気ぶち壊しだし。
でもこれから毎日、あの衣装を来て過ごすのかな。
あの服にも唯一のデメリットがあったんだよね。
少し重いこと。見栄えは最高なんだよ、見栄えは。
◇
二階の食堂には数人のメイド達が集まっていた。
大きな縦長のカラフルテーブルがあり、料理が次々と運ばれてくる。
ミリアはシロンを見つけると、すぐに近寄ってきた。
「シロン様、食事のあとにこれから生活する上でのルールについて話すので、あとで三階に来てくださいね」
「はーい」
ルールとは何だろうね?
そして食事の時間になった。
朝からこんなに豪華なの……初めてかも。
テーブルには見たこともない形の色鮮やかなパンが、多数並べられていた。
もちろん、パンには一切の黒いものはなかった。
野菜も果物も様々な食器に入れられ、見栄え良く並べられていた。
これは何だろう。ひと際輝きを放つ白いパンが目についた。
シロアはそのパンを手に取り、ちぎる。
白いパンの中に白いクリーム。食べてみよう。
美味しい。上品な甘さの後に、ほんの少しの苦みがくる。
これホワイトチョコかな。こんなところにまで白に拘るなんて、さすが私の夢世界だね。
あ、なにあれ!白い蛇の形のかわいいパンがある!
シロンは料理の内容にとても満足して、よく味わいながら朝食を食べ進めた。
◇
えーっと食事が終わったら、三階に行くんだっけ。まずこの部屋の出口はどこだっけ?
「神官様、少しお話いいですか?」
一人のメイドがシロンに話しかけてきた。
「なんでしょうか?」
随分と若いメイドさんね。
「私を占ってもらえませんか?手短でいいので、どうかお願いいたしします」
「いいですよ」
私、能力なんかなくても全然占えますし。
「じゃあ……手の平を出して見せてください」
若いメイドの子は手を開いて、シロンに見せた。
ようし、それでは早速見て見ましょうか。
こっちの世界に来ても、私の手相の知識は衰えてないよ。
シロンは手のひらをまじまじと見ていく。
……えっ、何かが頭に浮かんできたよ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
青☆手相視
対象者一人(自分以外)の手相を見ることで、素早く情報を読み取れる。
通常の手相で読み取れる以上のことがわかる。
力があるほど素早くわかる。
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「どうかしましたか?」
「いいえ。もう一度手をちゃんと見せてください」
能力のおかげですぐに占える。
手の平を見ているだけで、頭の中に相手の情報が浮かんできた。
なにこれ、怖い。
「……何を聞きたいんですか?」
「仕事運です」
「真実をしっかり聞きたい派ですか?」
「うーん、良い事だったら聞きたいですけど、悪いことだったら聞きたくないです」
「よく居るんですよね、そういう人……。
あなたはあんまり占いに詳しくない方ですね?」
「はい……」
その後シロンは順にいくつかの質問をしていった。
質問をすることで、記された手相の不確定な要素を消していく手掛かりになる。
そして質問が終わると、シロンは言い放った。
「あなたは占い師になれます」
◇
シロンは城の三階、会議室に来ていた。そこにはミリアの姿があった。
「来られましたね、シロン様。では近くに座ってください。
ここで暮らすためのルールを読み上げますので」
「はい」
なんだろう、少しドキドキする。広い会議室だからかな。
シロンはミリアに対するように椅子に座った。
「えーっとシロン様は、このまま神官として日々を過ごしてください。
そしてそこに用意してある、占いの書中級と上級の、
一巻から七巻までのすべてをこの一週間で読み切ってください」
占いの書上級には色があり、本が各々の色に輝いていた。
すごい!赤、青、黄色、緑、紫、オレンジ。そして白!
七冊全て揃っている!これこそ神官のためにある神の本だ!
見るだけで読む気が湧いてくるよ。あーうずうずしてきた。
「興奮されているようですが……今ちらっと見てみてください」
「開いていいの?」
うわあ。なんだか開いたページから、光が見える気がするよ。
シロンは占いの書上級七巻を、ちらっと読んだ。
能力が身に付きました!
「どうですか?読めそうですか?理解できそうですか?」
「……もちろん。私が占い好きって知ってるでしょ?とても嬉しい」
「それは良かったです。あとは……」
紙を見るミリア。
「その紙は何?そこに全部書かれているの?」
「そうです。シロン様をこの世界に呼んだ人から託されたのです」
「いちいち言われなくても、紙を見ればわかるよ?」
「でも確実に伝えてほしいと言われているので」
ミリアさん、そういうところは真面目。
「大丈夫、ちゃんと理解できるよ。紙があるなら、ちょっと見して」
「じゃあ……」
ミリアは紙をシロンに渡した。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
☆シロンの訓練編☆
・神官として過ごす。衣装も着てね。
・占いの書中級と、上級1巻から7巻まで一週間で読み切る。シロンならきっとできるわ。
・一日一回は北西の占いの塔、もしくは南西のシークスフィア協会功国支部に出向く。
占いの実践を学ぶ。そしたら運命に導かれて、イベントが起こるはずよ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「……これで終わり?」
「いいえ。紙はもう一枚あります」
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☆シロンの生活編☆
・毎日お金を支給する。
・朝晩は必ずお城で食事を食べる。
他は自由よ。
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
「これで本当に終わり?」
「これで全部です。完璧に理解できましたか?」
「理解できたよ。やっぱり最初から紙を見せてくれれば良かったのに」
「質問に答えたり、補足説明がいるかと思いまして」
「じゃあ今聞いていい?この毎日お金を支給します、というのは何に使ってもいいの?」
「自由に使っていいとのことです」
なにそれ最高だね。
「あと聞きたいことは……私の秘密は誰が知っているの?」
「そうですね。少なくともこのお城では私とメイドリーダーだけです。
でもシロン様は神官として、この世界で普通に生活をして良いです。
その恰好なら誰にも怪しまれることはないでしょうし。
そして協会の許可はすでに取ってありますので、すでにシロン様はこの世界の本物の神官なんです」
「……そうだったんだ」
私をこの世界に呼んだ人は何者なの?徹底してるね。
「ルールっていっても、なんだか意外と自由なんだね」
「束縛はだめだと、考えたうえでの選択でした」
束縛?
「……何も言ってはいけなかったので、今の話は忘れてください」
私をこの世界に呼んだ人、やはり気になるね。
「私をこの世界に呼んだ人って……」
「今は何も答えることはできません。仮に別の人に聞いても無駄ですよ。
口封じされていますからね」
やっぱり口封じ。私をこの世界に呼んだ人は相当権力のある人。
未来予知が使えるなら、おそらく神官なんだろうね。
◇




