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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第四章 ☆もう一人の来訪者編☆
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夢と現実の勝負に決着がついた

「シロン様、何もそんなに大きな声を出さなくても」


「私は能力を発動する時に、勢い余って声が出てしまうことがあるのです」


「そうでしたか、それなら仕方ないですね」


 ミルさん。表情が明らかに変わったものを見る目になっていますよ。


「ですが、能力はきちんと発動しました」


 つもりだけどね。


「これで本当に運勢が良くなったんですね、実感がありませんが」


「もちろんですよ。神官様のお力があれば」


「ありがとうございました。えーっと、神官シロン様」


「ど、どういたしまして」


「今から明日の朝の運勢を聞くのが楽しみで仕方ありません」


 朝の運勢ってなんだろ?


「運勢が良くなったら、すべての物事は良くなるはずですので。今日はここまでですね」


「では、遅れましたがこれを」


 そう言うとトムは、ミルに重みのある封筒を手渡した。


 あれは……札束だね。

 封筒からはみ出るほどのすごい量に見えたけど、あんなに支払うものなの?


「それじゃあ、また来ます」

 トムは最後にミルとシロンに深々とお辞儀をして、その場から立ち去っていった。



「これはシロン様の分です。お納めください」


 札束、この世界のお金だ!でも私、今財布持ってないよ。


「あの今、鞄とかが無くてですね……」


 シロンがそう言った時、一枚のお札がひらひらと地面に落ちた。


「ではこの封筒と紙袋をお持ちください。お金を粗末にしてはなりませんよ」


 何だか今一瞬だけど、ミルさんの目がすごく怖かったような……。



「先ほどは失礼いたしました。シロン様を成り行きで呼んでしまって。

ところで頭が痛いのは治りましたか?」


 本当だよ。神官って嘘ついてる私が悪いのはわかるけどね……。


「まだ少し」


「最近このあたりでも黒い噂があります。

もしかしたらその影響も考えられるかもしれません」


「あ、頭が……」


「また記憶が飛びそうなのですね?」


「はい……」


「黒い噂というのは、黒い素質のことで最近このあたりで噂になっていて。

とにかく人々に恐れられているものなんです。

その影響で心身に異常をきたす者もいるとか……」


「そうなんですか」


 よくわかんないけど、黒いものは縁起が悪いもんね。


「もしかしたらそのことで、シロン様はここに来られたのかもしれませんね」



 シロンはあれから、占いの塔を少し散策して街に戻ってきていた。


 この世界でも占い師の仕事は想像した通り楽しいね。

 自分が占われるほうが好きなんだけど、占って感謝されるのって最高だよね。


 ……でもなんだか成り行きでたくさん嘘をついてしまった。

 夢だと思ってまた調子に乗ってしまったね。


 それに……さっきの塔でのやり取りをしていて、わかってしまったことがあった。

 記憶喪失のフリをしていたら、混乱していた私の記憶のピースがそろったんだよ。

 ついに夢と現実の勝負に決着がついた。


 この世界は私の夢の世界であり、現実でもあるんだ。


 もう少しこの街を見て回ろう。

 本当にここが私の夢の世界か、判断するためにも。

 占いのアイテムショップや派手な洋服が売ってるお店があったんだよね。

 見て回りたいお店がたくさん。



 もうこんな時間。

 あたりは夕方を過ぎ、暗くなり始めていた。


 あれから街のお店を巡り、これが自分の夢の世界で現実だと認めたシロン。

 その表情は、少し曇っていた。


 お金はたんまり貰ったから何とかなるけど、今日はどこに泊まろう?

 宿屋はちらほらあるみたいだけどね。歩き疲れたから、ちょっとここらで少し休もう。


 シロンはベンチに腰掛けた。その直後、町の明かりが一斉に付き始めていった。

 街は少しずつ、幻想的な雰囲気に包まれていった。


 わあ、綺麗。

 ……そうだ、思い出した。この光景を私は何度も見たことがあるよ。

 この街は夜でも明るくて素敵な街、シャボンだ。

 私は夢でこの街を訪れていたんだ。

 でもこれは現実なんだよね。まさか夢の世界が現実になるなんてね。

 シロンは休憩しながら、少しの間考えを巡らせていた。


 さて……どうしようかな。あの白いお城にもう一度戻ってみようかな。

 そう思いたつと、シロンは立ち上がった。

 何かに引き寄せられるように、朝通った道をまた歩んでいた。


 歩き通しで、まだ少し足が痛いよ。

 でも、夢のシャボンの街を歩き回るのは、楽しかったね。

 


 ようやく着いた。私の白いお城。

 でもこの建物こんなに大きかったっけ。

 出るときには町を見るのに精いっぱいで、城の外見を見る暇がなかったけど。


 縦に伸びる白いお城。頂上が尖がっているのが印象的。

 私が小さいころ、外国の景色を見て感動して生まれたんだっけ。

 なんだか懐かしさもあるよね……。


 お城の入り口の門の前には、白いメイド服を着たメイドさんが数人立っていた。


 そりゃあ見張っているよね。

 いくら明るくても、もうすぐ夜になるし。不用心だもの。

 これじゃあ中にも入れないね。一旦街のほうに戻るしかないね。

 シロンが踵を返そうとした時、メイドさん達は叫んだ。


「お待ちしておりました!」


 メイドさん達?大きな声で何を叫んでいるの?

 まさか私のこと?


「シロン様、お戻りください!」


 もう、やっぱり私のことじゃん。

 名前を大声で叫ばないで、何だか恥ずかしいよ。



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