これは誰のせいだ
風が揺れる大地、そこで密かに話し合う者たちがいた。
「この紙切れは?」
「シークスフィアの近辺で見つかった手記です」
「どうやら自分の人生を語っているらしいです。もしかしたら、何か調査に役立つかと思いまして」
「ありがとう、読ませてもらうわ」
「しかしなんだって、神官様がこんなものをお探しに?」
「少し黙っていて……今読んでいるの」
「はい……」
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私は占い師を目指す学生エルク・ウィン。
占い師の家に生まれ、悠々自適に育ってきた。
そして今エリートとしてシークスフィアに首席で通っている。
成績を上げると共に運勢も上がる、占い師の家系の力もある。
素質も権力もある私は、本当に何不自由なく過ごしていた。
周りに比べれば運勢の起伏などは無いが、浮き沈みがないありがたい生活をしていた。
だが、そんな僕にも運命の時が訪れた。
好きな人ができたのだ。
所謂一目惚れだ。恋は人を強くする。恋は人を狂わす。
私は一瞬で彼女の虜になった。
それからというもの、恋愛成就のお守りを大量に買ったり、
服装、身だしなみ、マナーなど自分が出来ることはすべてに気を使った。
恋占いの書物も幾つも読み漁った。
これで準備は万全。
告白すればきっと彼女はいい返事をくれる。
そう思っていた。
◇
そして運命の日。
私は彼女を食事に招待した。
だがそれが運……
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「ここで途切れている……続きが気になるわ。この続きはないの?」
「はい、残念ですが、この後のほとんどの文字が読めなくなってしまっていて……」
「かろうじて読める言葉のかけらを解読した部分しかないんです……それでも宜しいですか?」
「ええ、ぜひお願いするわ」
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これは誰のせいだ
これは誰のせいだ
きっと彼女は……が最悪だったのだろう。
僕は何もできなかった。
優れた一縷の占い師が持つといわれる能力。
未来予知……。彼女はその事を、誰かから聞いたのだろうか……。
僕がその能力を持っていたら、止められたのかもしれない。
これは誰のせいだ
これは誰のせいだ
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