オレンジ色の占い師
クロアは一緒に仕事をする占い師を、シークスフィア協会功国支部で待っていた。
少し早めに着いたのもあってか、妙に落ち着かない様子だった。
ここで待ち合わせているんだけど……ペアを組むのは誰なんだろうな。
ペアを組む占い師。おそらくこの辺りで活動している占い師だろうな。
だとすれば……あの三人の内の誰かかもしれない。
そうだとしたら、気が知れてるから逆にやりやすいのだけど。
◇
クロアの方に、一人の女性が近づいてきた。
淡いオレンジ色のローブに身を包み、どこかほんわかとした上品な出で立ちだ。
そしてオレンジのバッジが胸元に輝いていた。
オレンジの女……。
そして二人はさっそく自己紹介をし始めた。
「セリス・メルヴィルです」
セリスは名を名乗ると、礼儀正しくお辞儀をした。
その立ち振る舞いには、どこか気品があった。
「クロア・ナッツォです」
相手の力はどんなもんなんだろ。
クロアはすかさず能力を発動した。
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青☆目視
対象者一人の占いの力の程度を見破る。
自分を基準に相手の力量を把握する。
力があるほど正確にわかる。
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セリスはあなたと同等程度の力です。
これは……。俺と同等の力を有するとは、やりますねオレンジの女。
◇
「私は今、この辺りのリーダーを任されているの。
実力は神官に一番近いと言われているのよ」
それ自分で言うのか?またちょっと変わった人が来たな。
「私この仕事が終わったら神官になれると約束されているの。
だからあなたには全力で私のサポートをしてほしい。ええと、クロアでしたかしら?」
「そうですね」
随分と上から目線だなあ。
「そういえば、黒の素質を持っているというのは本当なのですか?」
セリスは少し不安そうに言った。
「……そうですね。今はその力を自分で制御できているので何も問題は無いですよ」
「本当に?」
「一応ゾル様のお墨付きです」
「ゾル様がそう言われるなら、問題ないんでしょうね」
そう言うとセリスは安堵の表情を見せた。
神官ゾルはやっぱり権力あるんだな。この権力はうまく使っていかなくては。
「そういえば神官ゾル様について、どの程度知っていますか?」
「……正直あんまり知らないです」
「良ければ少し話しましょうか?」
「じゃあ」
クロアは神官ゾルについてセリスから話を聞いた。
この国で神官になってから、すぐに別の国を転々としていた話。
緑の神官はこの世界では彼しかいないということなどを。
◇
「色々教えてくれて、ありがとうございました」
さすがにこの辺りを仕切っているだけはある。
話もこちらに合わせてしゃべってくれて、聞き取りやすかった。
どうやらコミュニケーション能力は高いようだ。
「いいえ。これから仕事をするバディだもの。どうせなら仲良くしましょう。
年も同じくらいだろうし、敬語もやめて気楽に話しましょ」
バディって、なんかカッコいいな。
「……いいですよ」
「ではなくて」
「ああ、いいよ」
なんだか違和感がまだあるが……。
「それでお互いの能力について、ある程度知っておいたほうがいいと思うの。
簡単でいいから手持ちの能力を教えあいましょう」
「……そうだね、じゃあ自分から。
たぶん知っていると思うけどエルクさんに能力を貰ってるから、色々な能力が使える。
バッジを見ればわかると思うけど白の能力も」
「白の能力……」
セリスは少し俯き、考え込むような表情をしていた。
「どうかしましたか?」
「いいえ、なんでもないわ。ありがとう。
色々な色の能力が使えるのは頼もしいわね」
「そうですね、使いこなせないと意味ないけど」
「そうね、きっと私のほうがうまく使いこなせると思う。それじゃあ鬼にこんぼうよ」
セリスは自信満々に答えた。
「それどんな例え……?」
なんかさっきから上から目線すぎません?
「……それでセリスさんの能力は?」
「詳細には教えられないけど、大体のことなら。
赤と黄を混ぜた色がオレンジなのはわかるわね?」
「ということは赤の能力と黄色の能力が主にあるってこと?」
「そうね、もちろんオレンジの能力もあるわよ」
「それはどういった感じの能力?」
「運命を選べる能力、と言ったらわかりやすいかしら。私だけしか使えないオリジナル能力よ」
「オリジナルの能力?」
「知らないの?世界でたった一人にしか得られない能力のことよ。能力の説明文に書いてあるはず」
「そうなんですか」
「クロアも今知ったなら、そんな能力が自分にもあることに気付くかもしれないわね」
どれどれ……?あ、あった。こういうのかな?
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赤☆刹那
対象者一人の運命の一つを一瞬のうちに変える。
複数の人間の運命が絡み合う場合は無効になる。
力があるほど正確に願った通りに変わる。
エルク・ウィンにしか使えない。
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俺は能力を貰ったから、使えるってことなのか。
しかし刹那がエルクさん専用の能力だったとは……。
「実戦で使うこともあると思うから詳しいことはその時にして、今はここまででいいでしょう」
「わかりました」