緑の神官
今日は神官ゾルに呼び出されていた日だ。
あの日俺は刹那を使って、神官ゾルに助けてもらったわけだけど。
すぐに実力を認められて、とんとん拍子に事が決まって。
成り行きで正式な占い師になれちゃうらしいんだよな……。
正式な占い師になればいろいろとメリットはあるが……。
逆にデメリットもあるかもしれないと思っている。
◇
「相変わらず立派で派手な建物だな」
クロアはシークスフィア協会支部を訪れていた。
中に入り、受付で聞いた部屋へ歩みを進めた。
クロアは数回ドアをノックしてから、虹色の扉を開けた。
「失礼します」
そこには白と緑の混じりあう立派な衣装に身を包んだ、神官ゾルが椅子に座っていた。
がたいは大きく貫禄があった。
「やあ、クロア君待っていたよ、そこに座って話をしようじゃないか」
そう言われるとクロアも虹色の椅子に腰かけた。
「先日はどうも。今日はよろしくお願いします」
クロアは軽くお辞儀をした。
神官ゾルは胸元に輝く緑のバッジをしている……。
緑とは即ち黄色と青で緑。だから黄色と青の能力に長けているらしい。
バッジの色は四種類だと思っていたのだが、
この国ではまだ認可が下りていないだけで、他の国には混色のバッジがあるという。
「何かお話があるようで……俺は本当に正式な占い師になってもいいんですか?」
「そりゃあもちろん。やっぱり君の能力を見ていたら見過ごせなくなってしまってね」
神官ゾルには緑の能力もあるのだろう。
おそらく人を見る能力だろうと推測している。
「じつは、協力して欲しいことがあってね。だがその前にまずは君に正式なバッジを渡そう」
神官ゾルは光り輝く白いバッジをクロアに手渡した。
「君の素質はグレーだ。私は素質の色が見える能力を持っているんだ。グレー、わかるよね?」
やはり能力があったのか。
つまり白と黒の素質が混じり合っているということか。
「意外と自分自身の素質が何色かわからないものは多い。
そもそも能力がないと、確実な色はわからないんだ。
それがわからないと困るから、シークスフィア協会にはあるアイテムが設置してあるのだが」
アイテム?自分の素質の色がわかるアイテムか……。
「話が少しそれたね。とにかく今はグレーを渡すわけにもいかないので、
君には白いバッジを授けることとなった」
「はい、ありがとうございます」
「これで君も立派な正式占い師だ。取り合えず君は中級の占い師だ。
それを常に目立つところに……できれば胸元あたりにつけていてくれたまえ」
クロアは胸元に白く輝くバッジを付けた。
「そういえばこれって、占い師の素質の色を表してるんですよね?」
「必ずしもそうではないよ。
今君の素質がグレーなようにね。一番似ている素質の色にしていると思うが……。
みんな大体は色が交じり合っている、単純な色の人は寧ろ少数派さ」
「なるほど」
「そういえば、君の黒の素質についてだが」
「はい」
「本来ならシークスフィアの教えに反するのだが……。
大神官様のお許しが出たのでね。大丈夫、周りにはうまく話をつけておいた。
大神官様の力は偉大だからね」
「そうでしたか」
大神官とは……?
「実は君の実力を大神官様に伝えたら実に興味深いと言われてね。
それで黒の素質があれど、正式な占い師として迎えることになったんだ」
大神官の権力が逆に怖いな。
すごい能力を持っているに違いないんだろうけど。
「えーっと、それでね、少しの間一人の占い師とペアを組んで仕事をしてほしいんだ。
良い仕事をしてくれたら君を神官に格上げすることも考えている」
「本当ですか」
「ああ。そういえば君は、白の能力チェンジが使えるんだって?
それだけで神官になれる条件は満たしているよ」
どこからばれたんだろう。
「だから仕事をこなせば神官になることも可能だろう。頑張ってくれたまえ。
もちろんそれに見合う報酬は用意しよう」
「はい、できる限り頑張ります」
これはいよいよ運勢が上向いてきたな。
神官になることが出来れば、この世界の頂点の職につけたと思っても良いだろう。
その上の大神官というのが少し気になるけど。
◇
「そういえば、君は神官エルクと知り合いなんだよね?」
「まあそんなところです」
「いや能力を貰うということは仲間か?
いやそれ以上に信頼関係があるのかもしれないな」
「何か気になることでもあるんですか?」
それから神官ゾルは、時折興奮気味に長々と話を続けていった。
「神官エルクはすごいんだよ。
私があんなに苦労した神官にあっという間になってしまった。
その実力は間違いなく、世界最強だったんだよ。
私にとっては突如現れた天才だったんだ。それでね……」