捕獲作戦決行日
ついにその日が来た。
俺は逃げも隠れもしない、真っ向勝負だ!と言いたいけど。
そうも言ってられないか。えーっと相手は……。
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こちら
リンさん(青)
ミルさん(赤)
ミアさん(赤)
俺
むこう
セリスさん(黄)
レイさん(黄)
ジョセフさん(黄)
ロルドさん(青)
ビアさん(白)
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「あれ、向こう黄色ばっかりじゃない?」
「そうだねー」
「そういや捕まえるのってさ、勝負事に入るの?」
「さあどうだろう、私は黄色の知識はさっぱりでね」
「捕まえる勝負だから、入るんじゃないですかね……?」
「それについては心配無用です。
やはりあの黄色の三人は私たちに任せてもらえますか?」
「三人も相手に、本当に大丈夫なんですか?」
「私に秘策があるんです、内容は教えられませんが……。三人を確実に引き離してみせます」
「ごめんね、クロア様。ついていってあげられないけど……。私も頑張るから」
そういうとミアは大事そうに、ダイヤモンドペンダントを握りしめた。
「いや、三人を何とかしてくれるなら、ものすごくありがたいよ」
さすがは赤の姉妹といったところか。
「じゃあ私たちは準備がありますので、これで」
「はい。よろしくお願いします」
そういうと赤の姉妹は、どこかに駆けていった。
◇
「じゃあ作戦通り、私はロルドさんを担当するね」
「本当にいけますか?相手はリンさんより、レベルが高そうですけど」
「同じ青の占い師、クロアを捕まえるという目的が分かっていれば、
やってくることは自ずとわかるよ」
「じゃあ、よろしく頼みます」
「まあ精々頑張ってみるよ」
◇
じゃあ俺はビアさんと……。
しっかり話をして、今後をどうするのか決める。
まずは話し合って、それから逃げるのか……。戦う事になるのか……。
少しの油断もできないな。
こちらから乗り込む……。いざシークスフィア協会支部へ。
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シークスフィア協会支部に着いたか……。
相変わらず色鮮やかな建物で落ち着かないな。
よし、気合を入れて、乗り込むとしますか。
◇
中に入ると、すぐにカラフルなスーツの男性がクロアを待ち構えていた。
「クロア様ですね?ビア様がお待ちです。どうぞこちらへ」
カラフルなスーツの男性は言った。
「はい」
クロアはスーツの男性に言われるがまま、ついていった。
「こちらです」
カラフルなスーツの男性は虹色の扉を開ける。
扉を開けると広い空間が現れ、
その中央にぽつりと白い輝く衣装に身を包んだビアさんが椅子に座っていた。
「では、私は……」
そういうとカラフルなスーツの男性は扉を閉めた。
どうやら他の占い師の対処はみんながしてくれたようだな。
ビアさんの周りに他の占い師はいない様子だ……。
いや……。
「……わかっていたんですね」
開口一番にクロアが言った。
「そうね」
……おそらくビアさんは能力で俺が一人でここに来ることが分かっていた。
だからあらかじめここに誘導できた。
何とも言えない緊張感が、場に漂った。
「クロアがここに来るのはわかっていたわ。わざわざ仲間に協力してもらうなんて。
あの子たちもよくやるわね……」
「こっちもわかってましたよ」
お互い中々話し出さない。妙な間が生まれていた。
「……どうやらクロアはチェンジが使えるみたいだけど。
他にどんな能力を手に入れたのかしらね?
場合によっては、神官になれるかもしれないわよ?」
「……」
俺が何の能力を持っているのか、話で探るつもりか?
悪いがその手には乗らないよ。
俺もビアさんの持っている能力が何かはわからない。
チェンジが使えることだけしか。でも大体の予想はつく。
「ビアさんも未来が見えるなんて、すごいですね」
「……」
無言なのは、当りが近い証拠だな。よし、ここはもう一押し。
「今、未来を見てみたらどうです?」
「はぐらかさないで。先に質問したのは私よ?
前にも言ったでしょう?正式な申請をしないと意見は聞けないと」
ビアは強い口調で言った。
「……」
「どうやら能力を手に入れて、運勢を良くして天狗になってるみたいだけど。
あなたの立場は変わってないのよ?」
「……それよりビアさん、ひどいと思います。俺を縛り付けて、またマグマをつけるなんて。
今回だって俺を捕まえる作戦を立ててたみたいじゃないですか」
「そうね。でも全てあなたを思ってのことなのよ」
「そんなこと俺は望んでません」
「でもそうしなければ、黒の力が暴発していたわ」
「黒の力?」
「そうよ、黒の素質をエルクから受け取ったでしょう?だからあなたは危険なの」
「そんなの知りませんよ、それにもう力が暴発することはありません。
力は抑えられました。それに聞いた話じゃ、俺の黒の素質を取り去るらしいじゃないですか」
「そうよ」
「でもそれは無理ですよね。今までマグマで抑え込んでいたのに。
取れる力があるわけない。取れるなら最初からそうしているはずです」
「私だけならそうだったかもしれないわね、でも……協力者がいたら……」
「協力者……?」
誰かが黒の素質を取り除けるとでも?
「はあ、もう話すのも飽きてきたわ。そろそろいいわよ」
ビアがそういうと虹色の扉が開かれて、数十人のビアの護衛がぞろぞろと現れた。
「これ以上、手を煩わせないでね。クロア」
護衛たちはあっという間に、クロアの周りをとりかこんだ。
「この少年をすぐに捕まえても、よろしいですか?」
護衛のリーダーは言った。
「やはり話をしても無駄よね、クロアは強情だもの」
「くっ……」
「この状況で逃げられるとでも思っているの?」
そうだよな、占いの力でどうやって戦う……。
剣も魔法もない、この世界では戦う術がない。
例え拳で殴っても……相手の数に負ける。俺はどうすればいいんだ……?
「なにか考えてるみたいだけど、この状況を打開できる能力があるのかしら?」
そうだ。考えてたことがあった。戦わないで戦う。
確か戦わずして勝つってことわざがあったんだよな。今はそれしかないか……。
クロアはミアと話していたことを思い出した。
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刹那は対象者一人の運命の一つを変えることしかできない、という決まりがあります。
複数の人間の運命が絡み合う場合は無効というデメリットも。
ですが瞬時に運命を変えれるという、途轍もないメリットがあります。
これはどんな状況でもきっと役に立つでしょう。
エルク様に能力を授けられたクロア様なら……きっとうまく扱うことができるはずです。
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運命が絡み合わないように変える……。
クロアは最初に刹那を使った時のことを瞬時に思い出した。
なるほど……これだ。
「戦わずして勝つ」
クロアは小さな声でそういうと、あることを頭で念じ、能力を発動した。
「無駄よ。私も能力を見破るくらいのこと容易くできるわ。刹那を使ったところで、もう未来が変わることなどありえないわ」