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やっぱりおかしい

 またお金が無くなってきたな。働くしかないか。


 一応この世界にもバイト的なものはある。

 ただ人がすぐ入ったりやめたりする。まあ自分もなんだが。

 それは何故か……やはり占いの力だ。


 運気が上がると職に就き、運気が下がるとやめていく。

 どうやらこの世界の人間は、普通このように運命の良し悪しが交互に起こるらしい。

 バイオリズムとかなんとかだっけか?なので定職に就けるものは多くはない。


 いうなれば常に毎日が運勢のジェットコースターのようなものなのだ。

 だから安定ということがない。常にふらふらしている。

 少しでも不安を安心させようと縁起が良いものを身に着けたり、

 少しでも運勢が良くなるようなことは何でも試す。

 でもそんな努力も、運勢の結果によってはこれっぽっちも意味はない。

 ……と思う。



「ほらあんた、何してんだい」


 おばちゃんたちの怒鳴り声がひと際目立つ。


「さっさと働きな。働けないならクビだよ、クビ!」


「どうして私があんたみたいな、

運が悪そうなおっさんを雇ってると思うんだい?」


「……」

 小汚いおっさんは黙り込みながらも、軽く俯く。


「今週は貧しい人に親切にすると運気が上がる……ってお言葉があったからだよ」


「はい……」


「わかったら、ちゃっちゃと働いて私の運気を少しでも上げておくれ」


 そう言われると小汚いおっさんは、嫌々そうに返事をしながらも働き出した。


「それと、そっちのあんたは今日でもうクビね。

今日分の給料はあげるから、明日からはもう来なくていいよ」


「そんな……ちゃんと働いてただろ」

 若そうな少年は必死に自分の言葉を伝えた。


「働いてりゃ良いってもんじゃないんだよ。わかるだろ……?」


「俺だって運気を下げないように、毎日頑張ってきたのに……」


「…………」


「こんな小汚いおっさんより働けるはずなのに……」

 そう言うと、若そうな少年は舌打ちをした。


 酷いもんだな……。

 きっと今日の運勢はかなり悪いんだろうな。

 思えば俺はこの世界に来てからというもの、そんな人間をいくらでも見てきた。


 運勢による理不尽な扱いの数々……。運勢が悪い者が虐げられる日々……。

 結局これって占いが人を狂わせている……のだろうか……?


 悪いのは一体誰なんだ……?考えれば考えるほどわからなくなる、この世界の摂理。

 何故こうなってしまったのか……。


 結局仕事が安定している人たちってのは、どうやら占い師だけなんだよな。

 ここに何か秘密があるんだろう。

 どうにかして、そのあたりの事を探ってみるしかないか。


 そんな事を思いながらも、俺は今日も何とかバイトに勤しんだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 今日は少し考えてみよう。

 この世界は色々とおかしい点が多いので、元の世界と比較してみようと思う。


 まずは朝。自分の今日の運勢を聞かされる。

 これはこの世界で決まっている毎日のルールだ。


 聞かないと罰せられる。そういう法律があるみたいだ。

 一度手を尽くして逃れようとしたが、すぐに警察に捕まった。

 なぜこうも強制力を持つのだろう?


 その運勢により人々は一日の予定を決める。

 そして大体運勢の通りになる。いや運勢に乗せられるとでも言うのか……?

 これだけなら良いのだが、問題はまだまだたくさんある。

 さすが占いの発展した世界といったところの問題が……。


 やれ手相を見てやるだとか、やれタロット占いしてやるだとか。やれ風水を見てやるだとか。

 そんなことを商売にしている輩が実に多い。

 特に俺は格好が格好だからか、一日に何十回と話しかけられる。

 そんな事をしている暇があったら、まず自分を占えよと思ったりする。

 でも自分自身は占えないんだろうな。


 あとは町がいろいろとおかしい。

 お店は某ディスカウントショップみたいに派手派手で……。

 建物は某テーマパークみたいに煌びやかで……。

 家はやたらとカラフルな家が立ち並ぶ。

 ……元の世界でこんなことがあっただろうか。

 想像するだけで元の世界が恋しくなる。


 そして極めつけは、ここに住んでいる人々だ。

 服は派手、身に着けるものはなんでも派手。なんなら歩き方も派手。

 で、口調はちょっと変。性格の方もちょっと変。

 過ぎた占いの力のせいで、おかしくなっているのは明白だ。


「お前に悪い相が出ている、まずはその服から悔い改めよ」


 この言葉を何度聞いたことか。

 もう嫌になる。一刻も早くこの世界から抜け出す方法を探さなくては……。


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