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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第二章 中級 能力登場編
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赤い妹の告げ口

 赤の能力が一番強いのではないか、ということが分かった。

 そして白の能力も強力みたいなのだが、いまいち使い方がよくわからない。

 だが今……俺にはこれがある。


 占いの書上級一巻。

 ギャンブルでお金をどっさり手に入れたので、満を持して買ってみた。

 通常は中々出回らないらしいが、裏のルートで……。

 もちろんこれは一巻なので、上級の知識すべてが載っている訳ではないだろうが。


 この本には、俺の知らないことがたくさん載っているのは間違いない。

 ちらっと見た感じ、白の能力のことも載っているみたいだ。

 今日はこの本を少しでも読んで、知識を高めようと思っている。


 あとはこれからの事も考えなければ。

 赤の能力の刹那はこの先も色々と使えそうだし何かと重宝しそうだ。 

 お金も手に入ったし……。あとは……元の世界に変えることか。


 元の世界……。今思えば帰る必要あるのかな?

 今運勢もどんどん良くなってきてるし。

 何不自由なく優雅に暮らせるなら、このままここで暮らし続けても……。


 いや、でもこの世界なんかおかしいしな。

 もう色々慣れてきちゃったけど……。

 派手なのはまだいい。でも西洋風かと思いきや、日本みたいなところも多々あるし。

 なんかいろいろぐちゃぐちゃなんだよな。

 まるで日本に中世の西洋文化が溶け込んだような……。


 ドンドンドン!ドンドンドン!


 クロアの家の玄関の扉をたたく音がする。


 ドンドンドン!


 誰だろう……怖い。まさかこないだの俺の賞金目当てに、強盗が金を奪いに来たのか?


 こんな時は能力だ、えーっと。

 クロアが考え始めた瞬間、扉の向こうから声が聞こえた。


「お願いですから、開けてください……」


 女性の声。か細く愛嬌のある声。いったい誰だろう。


「お願い……」


 でも今日の運勢も良いはずだから、強盗が来ることはないはずだ。

 クロアは玄関のドアをドアチェーンをつけて恐る恐る開けた。


 そこには赤紫色のローブを纏った、可愛らしい女性が一人立っていた。

 背丈はクロアよりも小さかった。

 その首元にはダイヤモンドのペンダントがひと際輝いていて、よく目に付いた。


「あなたは誰ですか?」


「あなたに……お話があります……」


「ええ?」


「どうしても伝えなければならないことが」

 深刻な表情をした女性は、今にも泣きだしそうな声で言った。


 表情を見るに、どうやら相当大変な事態らしいな……。


「仕方ない、とりあえず入って」


 そういうと事情を察したクロアは、女性を家に上げた。

 一応扉を閉める前にクロアは周りを確認したのだが、誰もいなかった。



「ここに」


 クロアの狭い部屋で、カラフルな丸いテーブルに向かい合って二人は座った。


「えーっと、まずどちら様ですか?」


「属性赤の占い師ミア・ステイシーです。クロア様」

 ミアはすこし安堵した表情で話した。


「ん?クロア様?」


「扉を開けてくれてありがとうございます。でもあの……まず聞きたいことが一つあって」


「はい……どうぞ」


「クロア様にエルク様がついているというのは本当ですか?」


 むむ。


「どこでそれを?」


「神官ビア様から」


「うわ」


「本当なのですか?」

 ミアはテーブルに身を乗り出し、クロアに迫りながら上目遣いで話した。


「ま、まあそういう感じかもなあ」


 ビア様から聞いたんじゃ、嘘ついてもばれるか……。


「やっぱり!」

 ミアは嬉しそうに微笑んだ。


 何がやっぱりなんだろ……?


「あの、それで……。本当は駄目だとわかっているのですが」


「うん」


「私はエルク様の味方なので」


「ほう」


「どうしてもエルク様を守りたいので」


「なるほど」


「言わさせて頂きます」


「はい、どうぞ」


「二日後にビア様がクロア捕獲作戦を決行します」


「ふーん……。え!?」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「いったいどういうことなんです?」


「あの……それは……」


 クロアはミアから会議の事の一部始終を聞いた。

 六人の占い師が招集された事。エルクがクロアに能力を受け渡した事。

 三日後に決行されるという事……。



「それはまずいね、教えてくれて本当にありがとう。

知らなかったら……多分俺は捕まってたよ」


「でしょう……?ですから」


「わかった。運命を変えればいいんだね?」


「あの……」


「じゃあ能力を使って……」


「違います」

 ミアは少し険しい表情で言った。


「え」


「違うんです。それでは変えられないんです」


「え?刹那の能力で変えればいいんじゃない?」


「刹那の能力の事をご存じですか……?」


「え?なんでもすぐに思い通りになる能力でしょ?」


「違いますね」


「ん?」


「それは沢山の人の運命が絡み合っているので、変えることができないんです」


「ええ、そうなんですか?」


「そうです。意味がないんです」


「そんなことはない、変えれるよ」

 クロアがそう言うと、ミアはクロアの腕を掴んで、首を左右に振った。


「ほんとうに……無理なんです」


「どういう事?」


「わたしは赤の専門です。多分今のクロア様より赤の能力については詳しいはずです」


 そういうとミアはクロアに赤の能力の説明を始めた。

 ミアはクロアに、赤の能力の基礎知識を色々と教えた。



「わかりましたか?クロア様。

今回の場合、例えば決行をやめるとか、延期するとかに運命を変えようとしても、

その変わる運命に、会議をした人とクロア様合計九人の運命が絡み合うので無効になるんです」


「じゃあ俺が逃げ切られる運命に変えたら?」


「それも同様です。会議をしてクロア様を知ってしまった事実がある限り、

九人の運命が絡み合うことになるでしょう」


「そうだったのか、とても勉強になった。ありがとう」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 赤☆刹那

 対象者一人の運命の一つを一瞬のうちに変える。

 複数の人間の運命が絡み合う場合は無効になる。

 力があるほど正確に願った通りに変わる。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 頭の中の能力の説明文が変わった。

 まさか、理解できていない事があるとは……。

 これは……他の能力も完全にわかってなさそうだな。



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