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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第二章 中級 能力登場編
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ドッグレース2

 ん……あれは?今神官だと言わなかったか……?


「ゾル様は長らくこの功国をお離れになっておられました。

最近このあたりではギャンブルの正式な認可が下りたのです。

もちろんこのドッグレースも正式な認可が下りています」

 ピカピカのスーツを着た男性は自信満々に答えた。


「そうだったのか?」

 緑に輝くローブを着た神官ゾルは、付いてきていた護衛に問いかけた。


「はい、左様でございます」


「ならもっと早く言わんか」


「うわ……あの人緑に輝いてるよ」

 クロアは気付かれないよう、小声で呟いた。


 ついに俺の元に来たのか、神官。やっぱ間近で見ると衣装が迫力あるなあ。

 赤の能力、運命を変える力がこれほどまでとは。

 俺の運命、無事に変更されましたね。


 クロアは柱の陰に隠れ、チラ見を続けていた。

 あれ、でもあの胸に輝いているのって緑のバッジ……?


「おお、そこにいるのは……レイじゃないか?」


「誰ですか?あなたは?」


「そちらが知らなくても、無理はないか」


「はあ」


「だがこちらは知っているぞ。

蛇の国、随一のギャンブラーといえばレイ・ヴォルトをおいて他にいないと」


「それは光栄ですね、もしかして神官様ですか?」


「そうだよ、緑の神官ゾル、知ってるだろう?」


「存じておりません」


「そうか……お前ほどの腕を持つものならば、知っていると思ったのだが」


「あまり他人に興味がないので」


「そうだったか。しかしもうお金ならたくさんあるんじゃないのか?

なぜそんなにまでお金を求める?」


「お金じゃなくてですね……。最近この辺りには占い師が集まってきていて……。

なんでだかは知らないが」


 そう言うと、レイはクロアのいる柱の陰のほうをちらちらと見た。


 やば、まさか俺……ばれてる?


「それで今一度、自分の運を試したくなったので」


「なるほどな」


「ほらそこの……見たことのない妙なやつとかと、勝負したくなるんだよな」


「そりゃあいい。最近功国が占い師で賑わってきていると聞いている。

だからこそ私も帰ってきたのだ」


 まさかバレバレだったのか?俺。


「おーいそこの。陰でこそこそしてるやつ。ちょっと賭けで勝負でもしようじゃないか」


 すいません。完全にばれてました。

 もう隠れ通すのは無理そうだ。こうなったら……。


「え?俺のこと?」


 そう言うとクロアは、柱の陰から顔を出した。


「そうだ。ようやく姿を現したな。どうだ?勝負を受けるか?」


「蛇の国の星と新人の賭け勝負か、これは面白いものが見れそうだ」


「さあ、神官様もこう言われているぞ?どうする?」


 くっ、勝負を受けるか受けないか。どうすれば……。

 そうだ、こんな時こそ能力だ。えーっと使える能力は……。


「早く決めてくれ、決断が遅いならこちらで……」

 レイが急かすように言った。


 その時、大きなおばさんの声が木霊した。


「福ちゃん、頑張るザマスよ!」


「ん?」

 クロアは咄嗟に声が聞こえた辺りを見渡した。


 あれは……。そうだ、前に見たことがある。奇抜なマダム!

 ということは……。


 奇抜なおばさんの目線の先には、クロアに懐いていた犬がいた。


 わんころ、お前レースに出るのか? なら……あいつを勝たせてやりたいな。


「くううーん」

 子犬は無邪気に尻尾を振っていた。


「じゃあ……受けます」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「クロアです、よろしくお願いします」


「レイだ。よろしく」


「緑の神官ゾルだ」


 ……クロアは周りの人物達と一通りの挨拶を終えた。



 ……まあ、こっちにはエルクさんの能力がありますしね。余裕ですよ。


 えーっと、確かレイの能力は……。

 偶然の中から必然を選びだす能力だったよな。

 つまりそれに打ち勝てる能力を出せば、こちらが勝てるってことだ。


「では本日最後のレース。第三試合が始まるよ!さあみんな賭けてくれ」

 実況者の声にはとても熱が入っていた。


 最後のレースとあって観衆は、またヒートアップしていた。


「一番人気は一番シャングリラ!

なんとここ最近の試合で勝ち続けていて、三連続優勝している実力派だ!

二番人気は五番スマイル!

尖った特徴はないが、最近の成績は常にトップスリーと安定している!

そして大穴は今回二匹。なんと二匹とも今回のレースが初舞台だ!

七番福ちゃんと八番パラダイスだ!

持っている力は全くの未知数。でももしかしたら、勝つかもしれない大穴だ!」


「わあああああ」

 観客は大いに沸き、みな一斉に犬券を買い求め始めた。


「よし、じゃあ俺はあのわんころに賭ける」

 クロアは福ちゃんを見つめながら言った。


 あの子犬にはちょっとした借りがある。

 こっちに来た当時、俺の癒しだったんだ。どうせなら俺の能力で勝たせてやりたい。


「えーっと、クロアは七番に賭けるのか?あんな小さな犬に?中々面白いやつだな」


「何か問題でも?」


「いや別に……。では俺はお祈りをして」

 そういうとレイは祈りのポーズを取り、静かに目を閉じた。


「ほほう、レイ君はなかなかやりおるな」

 神官ゾルはレイの能力を見破りながら、ぼそぼそと話した。


 ……俺も見破らなくちゃ。

 クロアは能力を使い能力を見破った。

 やはりレイはあの能力を使うか……。



「さあもう少しで締め切りだぞ、ほら賭けた賭けた」


「じゃあ俺は八番、パラダイスだ」


「ジャア、オレもそうする」


「じゃあ僕は一番シャングリラに少しだけ……」


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