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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第二章 中級 能力登場編
14/128

ドッグレース

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 夜の薄暗い路地裏で二人の声が暗闇の中にひそひそと伝わる。


「クロアが喧嘩をしていた場所があそこよ」

 ビアが暗い表情で言う。


「ああ、あそこだったんですね……。しかし残念でしたね」

 青ローブ姿のロルドは少しがっがりそうに話した。


「そうですね。クロアには期待していたのですが」


「未来は確定ではないという……ことですかね」


「そうね、クロアに関しては、そういうことなのかも……」


「まあ終わった暗い話をしても運気が悪くなりますから……。

ところでこの辺りに何をしに来たんですか?」


 ビアはロルドにカラフルな洋服を手渡した。


「すぐにこれに着替えて、潜入捜査よ」


「おわ、青以外の服を着るのは何か月ぶりかな」


「任務の時は仕方ないのよ、私も着替えなくては」


「割り切るしかないか」


「いい?一般人として乗り込むのよ、必ずフードを深くかぶって」


「バレたらまずいんですね?了解しました」



 入り組んだ路地裏の細い道に、二人は入り込んだ。


「まずは地下に向かう階段を探します。確かこの辺りにあるはずよ」


 ロルドは辺りを隈なく見渡し、注意深く探した。


「見つけました」


 視線の先には地下へと続く階段が続いていた。


「こいつは結構、闇が深い」


「中はいつもと同じで派手なはずよ、入り口だけ縁起が悪いわね」


「そうですね……」


「今日この時間、この地下で何かが起こるはず。でも何かはよくわからない」


「ビア様でもわからないとは……まさかあの……」


 ロルドは核心には触れず、ビアもすぐに意図を汲んだ。


「そうかもしれないわね」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 地下に広がる広々とした空間。

 いたるところに煌びやかな装飾が施されていた。

 ここは夜のパーティ会場というのに、相応しい場所であった。


「今夜のドッグレースは見ものも見もの。なんと今日だけ!賞金がいつもの倍額だよ!」


 きっちりとしたピカピカのスーツを着た男性が、大声でギャンブルを促す。


「さあみんな、賭けた賭けた!」


 それを聞いた数十人の客は、各自予想を立てながら盛り上がっていた。


「なるほど、ここが噂の……」


 町で聞いた情報を元にここに来てみたが……。

 自分の能力も試せて、お金も手に入る。

 ここは今の俺には中々うってつけの場所だな。



「さあ、みんな賭けてくれ賭けてくれ!もうすぐ第二試合が始まるよ!」


「うああああああ」


 試合が始まる前、人々の熱気と興奮が沸き、鳴りやまない歓声が響く。


 これがこの世界の本物のギャンブルか?


 しかしこんなところがあったとは……。なになに?

 クロアはルールが書かれている看板を読んだ。


 ……なるほど。犬を走らせてその順位を予想して賭けるのか。

 元の世界の競馬みたいなもんかな?

 なんだか思っていた想像と違って、規模が可愛く思えるな。


「どれ、すこし賭けてみるかな……?ん?」


 ふと近くにいた三人の男が気になり、クロアはばれないように柱の陰に隠れて会話を観察した。

 三人はこの辺りでは見ない変わった格好をしていて、真ん中の男は妙なオーラを醸し出していた。


「オイ、ダレに賭ける?」


「俺は有り金全部だ」


「おいレイ、そんなことをしたら、もし外れた時……」


「今の運勢は俺に来てる、そんなことは絶対にない」


「ソウだな、レイはサッキも当たった」


「まあそうだけど、全額は……」


 あの自信……真ん中の彼は占い師だろうか?

 クロアは柱の陰から、レイをよく観察した。

 あの胸に輝いているのは黄色のバッジ……!



「はい。じゃあ僕はこの一番のラッキーに賭けます」


「おお、ありがとう。当たるといいねえ」

 ピカピカのスーツを着た男性はニコリとした。


「ちょっと待ってくれ、お祈りをしないとな」


「ソウだな、ヤハリお祈りはヒツヨウダ」


 そういうとレイは手を合わせ、目を閉じ瞑想をした。


 能力を使う気か?なんの能力だ?今がチャンスだ。

 クロアは凝視の能力を使い能力を見破る。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 黄☆セレクト

 偶然の中から必然を選びだす能力。勝負事で使え、力があるほど正確にわかる。

 正統な……しか使えない。

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 なんだこの能力は……。

 少なくとも中級の書物には載っていなかった能力だ。

 だとすると、彼はおそらく上級の黄占い師ということか?


「よし、ではこの八番ハッピーちゃんに全額だ」


「ジャア、オレもそうする」


「まじかよ」


 本当に全額かけやがった。

 ここはもう少し様子を見て、次に賭けることにするか……。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「八番のハッピーちゃん。見事優勝です!」

 実況者の興奮した声が、会場に鳴り響いた。


「やはりな」


「ヤッタ、レイすごい」


 当てやがった、あんなチート能力ありか?

 偶然の中から必然を選びだす……。

 よくわからないけど、今回の場合一位がわかるってことだろ……?


 お客たちは結果が決まり、最高の盛り上がりを見せていた。

 そんな中、一際大きな声が観客の声を押しのけて響いた。


「ちょっと待て!」


「何事でしょうか?」

 ピカピカのスーツを着た男性がピシッと身なりを整え、答えた。


「ここ、功国では賭け事は正式な認可が下りないと、禁止されているはずだが?」


「ああ、これはこれは神官様」



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