赤の時代が来た
能力が自由自在に使えるようになってきたな。
クロアは目を閉じ念じながら、瞑想をする。
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白☆チェンジ
対象者一人の毎日の運勢を変える。力が大きいほど思った通りに変えられる。
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これはなかなか使える能力だな。
普通こういうチート能力には、デメリットが存在すると思うのだが……。
今のところ念じるのに多少時間がかかる事以外、不都合は出ていない。
瞬時に出ないとなると……。
寿命が縮まるとか、そのうちすべての能力を使えなくなるとかか?
それか、今まで良くしてきた運勢が……。
いつか自分に悪い運勢として降りかかるとかだろうか?
そんなことはないのだろうか……?不安になる。
俺の元の世界での創作物の知識が、安心の肯定の邪魔をする。
でも神官さんは日常茶飯事に使っているだろうし……。
そうだ。神官は別にビアさんだけじゃなかったな?
たしか俺の調べによると、この功国にはビアさん含め数人いたはずだ。
その人たちを見つけられれば、何か秘密がわかるかもな。
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運良く億万長者になったトム・ベイノンは、今日も必死に占っていた。
「今日はどのようなご用件で?」
ミルの営業スマイルが炸裂した。
「今日はこの犬の運命を占ってもらいに来ました」
シルバーの首輪にカラフルな洋服。
その犬はトムと比較すると、とても小さく見えるのだが実際は大きかった。
「まあお可愛いワンちゃんですこと、お名前は?」
「パラダイスです」
「まあ、とても縁起がいい名前ね」
ミルは屈んでパラダイスにも笑顔を振りまき、頭を撫でた。
パラダイスは尻尾を振って、その喜びを示した。
「それで……今度の週末ドッグレースがあるんです。
それに出場して……できれば優勝してもう一山当てたくて……」
「なるほど。それはいい考えですね、ではいつものように」
「よろしくたのみます」
そう言うとトムは、ミルに重みのある封筒を手渡した。
ミルは大事そうにその封筒を懐にしまった。
「ではまずはパラダイスちゃんの生年月日を教えてください」
「えーっと……」
トムは、パラダイスの情報を詳細に教えた。
するとミルは水晶玉に手を翳し、のぞき込み念じ始めた。
「はっ……」
……暫しの沈黙の後。
「そうですね、パラダイスちゃんが優勝できる運命にあるのは、
今度の週末の第三回戦、夜8時のレースです。
優勝することができれば、とても大きな賞金を手に入れることができるでしょう」
「そうですか!わかりました!」
トムは大きな声で返事をした。
「いつも言っていますが、運命は完全確実ではありません。お忘れなきように」
「そういって当たるんでしょう?90パーセントは当たるらしいじゃないですか」
「10パーセントを侮ってはいけませんよ」
「そうですね、一応気を付けます。ありがとうございました」
そういうとトムはニコニコしながら、パラダイスを引きつれ店を出た。
ミルはそれに付き添い、営業スマイルで見送った。
◇
「まあこれで良くなれば吉、悪くなってもまた次があります」
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クロアは神官の居場所を聞くため、シークスフィア協会支部を訪れていた。
功国の中心部に聳え立つ、ひと際大きな建物。
外壁は虹の色で埋め尽くされ、ところどころに宝石があしらわれている。
内部には色鮮やかでカラフルな、虹を模したカラーが溶け込んでいる。
「くっ、シークスフィア協会め」
つい出てしまった愚痴を飲み込みながら、クロアは虹のソファに腰を掛けた。
先ほど聞いた話では、神官さんの居場所を知るには、お金がいるらしい。
お金は運勢が良くなるにつれ、徐々に舞い込んできているのだが……。
まだそこまでの額ではなかった。
残念なことに、俺の今の能力では神官さんの居場所を知ることができない。
……こんな時は赤の能力。
だがこの系統の能力は今、圧倒的に経験不足だ。
能力を授かったのは良いが、使いこなせなければ意味がない。
確か占い中級書には青の能力で相手を知った後、
赤の能力で運命を変えることが基本だと書いてあった。
黄色はいらない子なんだよなあ。
えーっと、今役に立ちそうな手持ちの赤の能力は……。
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赤☆刹那
対象者一人の運命を一瞬のうちに変える。力があるほど正確に願った通りに変わる。
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今回はこれを使ってみるか。
ビアさんじゃない神官さんにすぐに会える会える会える……。
ビアさんじゃない神官さんにすぐに会える会える会える……。
クロアはできる限り念じて、能力を発動した。
◇
そしてその時はすぐに来た。
シークスフィア協会支部の建物内に、アナウンスが聞こえた。
「先ほど神官ゾル様が功国にお戻りになられることとなりました。
至急、手の空いたものはお出迎えに出発してください。繰り返します……」
「……すごい効果だ」
なるほど赤の運命を変えるのはかなり使えるな。
まさか向こうから来てくれる運命になるなんて。
なんなら青と黄色はいらないんじゃないか?
俺の中で赤一強説が浮上した。
◇
近くまできたら、神官様とやらに会いに行くとしますか。
……でもこの辺りまで本当に来るかはわかんないよな。
赤の能力がちゃんと発動しているならば、向こうからこちらに来るはずだけど。
地図で功国がどのぐらい広いかとか、どこにどの町があるかとか、色々と確認しておかなくては……。
あとはお金のほうも何とかしないとな。
生活費はもちろん、これから活動していくうえで、いくらあっても困らないはずだし……。
何か手っ取り早く稼げる方法があればいいんだけど……。