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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十二章 異世界の日常編
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お前は選ばれた

「新しい大神官様はこれからは何でもオープンにするって言っていたが、それも信用ならなくて……」


「…………大丈夫です」


「え?」


「今の大神官様は神官達が推薦して決められたので、何の不安も問題もないです」

 たぶんね。


「そうか……そう、だよな。

あの一度だって姿も見せなかった前の大神官が、突然辞めるって聞いた時は驚いたことだが。

今の大神官は、その大神官のお墨付きでもあると聞いたしな……。まあ神官様達が推薦してるなら間違いないはずだよな」


「そうですね……」

 そういう話になっていたのか。


「すまねえ、俺は何か勘違いしていたみたいだ。

……これはお布施ってことで置いていくぜ」


「ありがとうございました」


 一般人は何の疑問も持たないってわけではないみたいだが……。

 何となくは状況を理解しているのかもしれない。

 これはもう少し話を聞きたいところだ。



「私、低い声の人しか恋愛対象にならなくって。

でも見た目は好みなのに声だけが残念な場合は……。

神官様はどうすれば良いと思いますか?」


「それは……」

 そんなことは知らん。


「自分でも努力したけど、どうしてもだめなんです。

前に他の占い師さんに運命を変えてもらったはずなのに」


「では、できるだけのことをやってみましょう」

 こういうのは早めに能力に頼るに限るな。

 やっぱり手っ取り早くいくなら赤☆刹那の能力かな。


「……ちょっと待ってください。前にも祈りをささげられたけど全然治らなかったんです」


「……」

 祈り?能力を掛けられたってことか?


「どうにかしてこの考え方を変える方法とかありませんかね?」


「……」

 もう自分で努力したんなら無理なんじゃね?


「祈りとかじゃなくて何か他の方法で……」


「じゃあ……タロットカードでも引きますかね」


 こういう時使う能力はグレー☆予感かな。

 どういう予感がするか、分かればいいわけだから。

 クロアはできる限り念じて、グレー☆予感の能力を発動した。


 ……なるほどね、それで良いのか。



「出たカードはこれですね」


「……このカードの示す意味は何ですか?」


「簡単に言うと、逆も考えられるのでは?という意味です」


「それってどういうことですか?詳しく教えてください」


「逆にあなたと正反対の高い声の人しか恋愛対象にならない人もいるでしょう。

偶然にもあなたは高い声を持っていられる。

そういう人に会うんです。占いではそれで釣り合うと出ています」


「それはいい考えですね!」


「でしょう?」

 納得してくれたみたいで良かった。


「……それでどうやったら、そんな人と出会えるんですか?」


「えっ?そっ、それは……」


 どうやらこの話はまだ続くらしい……。




「神官様、少し時間をよろしいですか?」


「いいですよ?何か問題でも?」


「私は仕事をしている時に、最近よく思っていることがあって。

仕事って金を時間で買ってると思うんですけど、神官様はそれについてどう思いますか?」


「うーん。まあ実際そうなんじゃないですか?」


「なるほど、神官様はそう思われますか。金は時間で買える……じゃあ逆についてはどうお考えですか?」


「えーっと……時間は金では買えない……。それは無理じゃないですか?」

 たぶん。


「なるほど……やはり私の考えは間違ってはいなかった。

神官様本当にありがとうございました。では私急ぎますので」


「え……」

 終わり?金も貰ってないけど行ってしまった。一体今の人は何だったんだ?



 クロアの元には、子供が相談しに来ていた。


「ねえ占い師さん、占い師さんにはどうやったらなれるんですか?」


「それは占いの勉強をしてたら、やがてなれるはずですよ」

 たぶん。


「そーなんだ……。じゃあ、能力ってのはどうやったらみにつくんですか?」


「それも占いの勉強をしてたら、きっとみにつくでしょう」

 だったと思うけど、明確な条件は俺もまだ知らないな。

 どこかの上級の本にでも詳しく載っているのだろうか。


「さっきといっしょだね」


「そうだね。わかったならもういいかな?」

 子供はお家へおかえり。


「うーん……」


「……」

 まだ何かあるのか?

 この世界ではとても偉いはずの神官様が、子供のお世話係になっているんだが?

 この子供は受付で何故弾かれなかったの?どうなっているんだ?


「ねえ神官様、ひとことだけ言ってくれますか?」


「……何ですか?」


「お前は選ばれた、って私に……」


 なんだ、その中二心をくすぐる単語は。


「うーん?それを言って何になるのかな?」


「神官様が言ってくれれば、私もなれる気がするの」

 子供は目をキラキラさせて言った。


「……」

 ここは素直に言うべきなのか?

 それでこの話が終わるなら……。


「お、お前は選ばれた」



「すみませんね、子供がどうしても神官様に会いたいって言うもんですから」


「……」


「何か悪いことでもされませんでしたか?」


「ここは子供の預り所じゃないんで。よほどのことがない限り子供はNGで」


「はい……うちの子供は最近運勢も良くて、神官様に見てもらうまでもなかったですよね」


「……あと一応、子供でも相談料はもらいますよ?」


「はい……そうですね。よく言って聞かせておきますので」


 お前は選ばれた……か。

 そんな言葉を子供に教えたのは、たぶんあの人だろうな……。


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