運は実力
「そして、賭けるものは何がいいかな?」
「別に何でも……と言いたいですけど、何か有益な情報とか持ってますか?」
「ふむ……ないこともないな。おぬしの知りたい情報もあるかもしれん」
「じゃあそれで」
「それでおぬしが賭けるものはなんじゃ?」
「俺が賭けるものか……」
「クロアに賭けれるものなんてあるの?」
「俺も情報って……訳にもいかないか」
「それならシンプルにお金でいいんじゃない?
このあいだ、大神官様にたっぷり貰ったと聞いたけど?」
「なんでそれを知ってるんですか?」
「そりゃあ、わたしは情報通だからね」
「それならこういうのはどうだ?
わしが勝ったらこのアイテムをおぬしに買ってもらおう」
「おじいさん、それいいアイデアだね!
それでクロアは私へのお礼として、そのアイテムを私にプレゼントしてくれるわけだね」
「なんでそうなるんだよ」
「それもよかろう」
「おじいさんありがとう、わたし精一杯応援するよ」
青いお姉さんは一体どっちの味方なんだ。
◇
「すっかり話が長引いてしまったな。まずはそのアイテムを振って中の珠をシャッフルするんじゃ」
「はい」
「では強めにシャカシャカと振ってみい」
クロアは筒状のそのアイテムを、強めに数秒間振った。
三人はそのアイテムをじっと見つめていた。
「じゃあ本番じゃ、次はゆっくりと振って珠をだすんじゃ」
「あの、これよく見たら穴とかどこにも空いてないんですけど?」
「そりゃあそうじゃろう、珠は物理的に出てくるわけじゃないんじゃ」
「クロア、わかってなかったの?これは魔法のアイテムなんだよ?
その中から珠が魔法のように飛び出してくるんだよ」
「まあ、そういうことじゃな」
◇
クロアは速度を変えつつ、アイテムを左右に振った。
しかし珠はなかなか出てこなかった。
「……一向に出てきませんね」
「そもそもどういう仕組みで出るんだろう?おじいちゃん、何かコツはないの?」
「……ううむ、もう少し精神を集中して振ってみるといいかもしれんのう。
あまり強く振らなくてもいいんじゃ」
クロアは精神を集中させて、一振りした。
「あ、今もしかして」
その声を聴いた老人は、首を横に振った。
「……ようやく出ましたね」
アイテムから珠が下にすっと落ちたが、クロアはそれをキャッチした。
「見せて!
……ふむふむ珠は結構綺麗な青色だね」
「で、この珠の輝きはどのくらいなんですか?」
「青の能力を使うと、アイテムに数字が浮かび上がるはずじゃ」
「じゃあ私の出番だね……」
◇
「……輝きは3と表示されてるよ、これで中間なんだ」
「ということは合計で6点じゃな」
「最初にしてはまずまずなんじゃない?」
「そうですね」
「じゃあ次は、わしの番じゃな」
そういうと老人はアイテムを手に取り、青い珠をアイテムに戻した。
「これで元通りリセットされる」
「珠がまたアイテムに吸い込まれていったね、うーん……不思議な仕組みだね」
◇
「かるく、かるくじゃ」
老人はアイテムをそっと振った。
「あ、珠が出てきた」
「え?」
「黒い珠だ……」
「わしも最初からついてないの……」
「おじいさん元気出して、まだ勝てるからね」
「でも、これ割と輝いて見えるな」
「もしかしたら、最高の輝きなのかもしれないよ」
「そうかもしれんの」
◇
「とても惜しかったけど……輝きの値は4だよ」
「残念じゃの」
「6対0か……。でもまだ勝負は最後までわからないし」
「じゃあ次は俺の番ですね」
「クロア、ちょっとは手加減してあげて、相手はおじいちゃんなんだから」
「はいはい、そうはいっても出てくる珠はランダムだからな」
……この感じ、なんだか前にやったトランプ勝負を思い出すな。
◇
「えーっと……珠は緑で、輝きは2だったか」
「じゃあ5点だね……。おじいちゃん、このままじゃ負けちゃうよ。頑張って」
「うむ……。では少し気合を入れるとするかのう」
老人は目を閉じ集中して、アイテムを振った。
コロンと音を立てて、光輝く珠が姿を現した。
「白い珠じゃない!?」
「……これはどうやらそのようじゃな」
「なんか物凄く光り輝いている気がしますね。
こんなにも色が確認できないくらい、光るものなのか」
「そりゃあそうだよ!最大の輝きなんだもん、表示は5になってるよ」
「やはり最大だったか」
「5だけど体感では、10であってもおかしくないぐらいだね」
「これが実力というものじゃな」
「え?」
「いやなんでもない、次はおぬしの番じゃ」
「……これで11対10か、ほぼ並んだじゃん」
◇
「いよいよ、俺の最後の番か」
そういや前に誰かが言ってたっけ。
この世界では運も実力のうちじゃなくて、運は実力だっけ。
しかしさっきのお爺さんの珠は……。
さすがの俺も何かを感じ取ったが?
能力の使用はだめといっていたが、嫌でも気づいちゃうよね。
「クロアも気合入れないと負けちゃうね?
まあ私としては、どっちが勝ってもいいんだけどね」
「そうですね、まあ俺もどっちが勝ってもおかしくはないと思いますよ」
「ほほう、いいおる」
「じゃあ俺も気合入れてみようかな」
「ここで10は出さないでね?おじいちゃんの負け確になるから」
「保証はできないですね、俺の真の実力が出ちゃうかもしれませんから」
「それじゃあ、勝負がつまらないでしょ?どうかほどほどにしてよ」