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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十一章 異世界の謎編
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いや、何年剃ってないんですか?

「俺はすぐにでも行けるけど、準備とかしなくて大丈夫ですか?」


「別に問題ないよ?今は割と暇だし。

それにもうこの世界も平和になったわけだから、怖いことは起きないもんね」


「まあ、そうですよね」


 さすがにもうあんな連中はでてこないだろうしな。

 今の俺は力もあるし、大抵の能力は無効化できるわけだし。


「……それに、クロアもいるしね」


「それはどうも」


 そして二人は功国へと向かうことにした。



 功国に向かう馬車の中で、二人は話していた。


「このまますぐにその場所に向かうの?」


「そのつもりだけど」


「他に功国で行きたいところとかはないの?」


「……あの国には良い思い出があまりないですからね」


「でも私と初めて出会ったのは、あの時あの場所だよね」


「……」

 青いお姉さんの圧をひしひしと感じる。


「ね?」



 それからすぐに国境を越えて、二人は兵士の町にたどり着いた。

 目的地に向かうため、二人は馬車を降りて近辺を散策していた。


「ここなんか、いかにもって感じな場所だよね」


「荒れ果てている場所もあるけど……。ん?この辺りはなんだか見覚えがあるな……」


「そうなの?」


「こことか、日本のある場所に似てないですか?」


「私にはわからないけど……クロアはそう思うの?」


「……なんとなくだけど」


「謎は深まるばかりだね。この石像とか、誰が何のために建てたんだろうね」


「……ここで昔、争いがあったとか聞きましたよね。それも何か関係があるんだろうか」


「たぶん、そうなんだろうね」



「本当にここがエルクさんに聞いた場所で合ってるの?」


 兵士の街のはずれには、瓦礫が散乱している場所があった。

 その端に小さな目立つカラフルな小屋のようなものがいくつか立っており、

 時折そこから何か煌めくものが、チラチラと姿を見せていた。


 あたりに人は一人もおらず、その場は独自の哀愁を漂わせていた。


「そうですよ。この一番大きい小屋にいる老人を訪ねてほしいと言われていて……」


「お邪魔しまーす」


 少し古びている扉は、ギィーと軋む音を立てた。


「勝手に入っていいんですか」


「だってもうアポは取ってあるんでしょ?」


「それはそうですけど……」

 しかし、どうやってこんなに早く連絡を取ったんだろう。


「じゃあいいじゃん。この扉鍵もかかってないし、不用心だから注意してあげなくちゃ」



「中には誰もいないみたいだな」


 薄暗い小屋の中では、外からの風の音だけが響き渡っていた。


「誰かいませんか?」


 二人は玄関で人を呼んだが、どこからも応答はなかった。


「この先に上る階段が見えるよ。もしかしてそのご老人は上の階にいるのかな」


「そうかもしれないですね、それかこの小屋じゃなかったのか」


「じゃあ、せっかくだからもう少し奥までお邪魔しちゃおうよ」


「仕方ないですね……」



 二人は恐る恐る二階へと上がっていった。


「わっ!」


 先頭を行く青いお姉さんは、当然大声を上げた。


「どうしたんですか」


「扉の奥から物音がしたんだよ」


「じゃあ……」


「この扉の先に人がいるに違いないね」



 二人の前に、髭を蓄えた老人が姿を現した。


「あの、こんにちわ」


「エルクから話は聞いておる。まずは……」


 老人はじっくりと二人を見つめた。

 二人は顔色一つ変えずに見つめ返した。


 ふーん、この老人できるな。さすがエルクさんの知り合い。


 そして三人は握手を交わした。


「なるほど」


「なるほど……」


 そして少しの空白の時が流れた。



「……何なのこの無駄な時間は」


「いや、すまんすまん」


「それにしても、おじいさんお髭がすごいですね」


「そうじゃな……」


「どのくらい、いや、何年剃ってないんですか?」


「……」

 いきなり髭にツッコミを入れるのはやめようね。


「それで聞きたいことがあるんですが」


「話はエルクから全て聞いておる、この世界のことが詳しく書いてある歴史書はこの奥の部屋に厳重にしまってある」


 老人は奥の部屋へと進み、大きな本棚のある部屋へと二人を案内した。



 大きな本棚には、分厚い本が何段にも並べられていた。


「この本を全部読めば、この世界の事がわかるってことか」


「そうじゃな、でも全てをすぐに理解するのは容易ではない。

わしがここに書かれていることを話そうではないか……」


 それから老人は長々と話し始めた。

 二人は黙ってその話に耳を傾けた。そして数十分後、話は終わった。


 クロアが今までに知っていたこと、この世界が元居た世界に似通った場所があることなど。

 そのままの事を話されただけだった。


「お爺さん、ありがとう」


「うむ、何か知りたくなったらまた尋ねるがよい」


「はーい。それで、すっきりした?」


「いや、俺からすればすでに見知っていることが多かったですね」


「ほう」


「もう少し重大な何かがきっとある」


「なるほど」


「そういう予感がするんですよね」


「……もちろんこの話はまだまだ続くんじゃ。どれ、話すとするかのう……」


「まだ終わりじゃなかったのか」


「でもここからは重要機密情報じゃ、他の者に話さないでいられるか?」


「……」


「そりゃあもう」


 このお姉さんは絶対話すぞ。

 爺さん悪いことは言わないから、やめとけ。


「絶対話さないよね?クロアも」


「ちょっと、リンさんこっちに」



「リンさん絶対話す気でしょ?」


「そんなことないけど?」


「その顔は……絶対話すよね?」


「だったら何なの?」


「お爺さんに悪いとは思わないんですか?」


「話さないって」


「本当に?」


「まずは話を聞いてからだよ」


「ほら」


「それを言うなら、クロアだって話すかもしんないじゃん」


「俺は口は堅いほうですよ」


「なんでそんなことが言いきれるの?」


「色々と実績、があるから?」


「実績って何?」


「実績は実績でしょ……」



「……それで、どうするんじゃ?聞くのか?聞かないのか?」


「じゃあ、お願いします」


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