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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十一章 異世界の謎編
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ふーん、私のことよくわかってるじゃん

 ふう……。これからあのあまりいい思い出がない、功国へ行かなければならないのか。

 この世界の理を知るためだもんな。

 まあ、俺もあれから成長したし?何も苦労はないだろうけど。


 ん?誰か来たみたいだな。


 クロアの泊っている宿の部屋の扉を、誰かがノックしてきた。



「よ、クロア元気?」


「どなたですか?」


「ひどい、わたしと一夜を共にした仲だってのに」


「してませんが?」


「え?私とのあの一夜を忘れたっていうの?」


「お引き取りください」



「あの時以来だっけ?

こっちの世界に帰ってることは情報を得て知ってたんだけどね」


「帰ってるって?自宅は向こうでしょ」


「え?ここがホームグラウンドでしょ?」


「なんでそうなるんだ……」


「この世界は言わば私たちの家、でしょ?」


 青いお姉さんも一回殴っていいですか?(物理)



「それでここに来た理由は何ですか?」


「え?普通にクロアに会いたいから来たんだけど?」


「そうですか」


「……なんでそんな急に冷たくなってしまったの?久しぶりに私が会いに来たっていうのに」


「じゃあ俺にどう対応しろと?」


「うーんとね。

……それにしても久しぶりだな。あれ?何だか前と変わった?

前よりかわいさ増してる?みたいな一言ぐらい言えないの?」


「……まず第一に俺、そんなキャラじゃないでしょ?」


「確かに」


「そこは認めるのか」


「それでも付き合ってくれるのが、クロアだったじゃん?」


「それは俺の印象操作されてますよ」


 相変わらずのノリだな……。いやむしろ前よりグイグイ来てる気がする。



「……ていうのは冗談で、普通にさ話をしに、情報交換をしに来たわけだよ」


「まあ、そうでしょうね」


「でもさ、別の理由もあるんだよ?」


「なんですか?」


「なんだと思う?」


「じゃあいいです」


「え?気になるでしょ?」


「大体想像はつく」


「じゃあいいよ。もう」


「は?」

 そうきたか。


「わかったよ、気になるから教えてください」


「……じゃあ、みんながあの後どうなったか知りたくない?」


「まあ……」


「知りたいでしょ?」


「少しはね、実際今どうしているのか詳しくは知らないし」


「あの、クロアをかけて争った女たちが、今何をしているか知りたいよね?」


 もう一度ぶん殴っていいですか?(物理)


「まあ……ね」


「まず、セリスさんはあの後からすぐに大神官の護衛をしているでしょ」


「知ってた」


「そっか、大神官と会って来てたんだもんね」


「それで、他の人は?」


「あとは、ビア様のことは知っているだろうし……」


「そのことは本人と割と話したかな。

……赤い姉妹は見張り付きで牢屋から出してもらえてるとか聞きましたね」


「そうだね、それで今現在クロアを探しているらしいよ」


「それも知ってるよ……。じゃあもう話せることはないですね」


「……あれ?私は?」


「ああ、もういいですよ」


「えー興味ないの?」


「別に……」


「今は大神官様のお手伝いをしているのでした。知らなかったでしょ?」


「……その様子じゃ、頑張ってるんですね?」


「でしょ」



「で、そろそろ本題なんだけど、私もそろそろ元の世界に帰ろうかと思ってるの。

もう当初の呼び出した人の目的も果たせたみたいだし」


「じゃあ、一人でお好きにどうぞ」


「もう……そういうのいいよ」


「あ、真面目な話ですか?」


「うん、聞いてくれる?」


「まあ……」

 ふざけないならね。


「私、ここに来る前は……向こうで普通に大学通ってたからね。

今から帰っても、勉強とかついていけるか心配なんだよ」


「でも向こうではそんなに時間が経ってないはずでしょ?

それに大学って確か何年かかってもいけるんじゃないんですか?」


「まあそれはそうなんだけど、戻るのはいいんだけどさ。

こっちの世界にもう二度と戻れなくなると思うと……やっぱりね」


「確かに戻ったら、誰かに呼んでもらうしかここに来る方法はないんだっけ?」


「たぶんね。それでも戻るべきなのかなあ?」


「さあ……。戻りたいなら戻ればいいんじゃ?」


「それを悩んでるから、こうやって聞いてるわけ。

クロアはどうなの?もう、すぐにでも戻りたい?」


「いや、俺は今はまだ疑問が、やるべきことが残ってて。

……まあ自分の心の声に従ってるっていうか」


「なるほどね」


「そんなもんじゃない?その疑問が解けたら俺は帰るつもりだけど?

ここにいること自体、異常というか……。

本来は俺は向こうで生活してるわけじゃん?

この世界の言い方で言うとさ、運命のレールから外れてるんだから元に戻らないと」


「ふーん……」


「そう考えたら、やっぱいつかは戻らないといけないんじゃないですか?」


「確かにそうだかもだね。

……私ももう少し考えてみる。自分の心の声を聴いてみるよ」



「それでその疑問ってのは何なの?」


「それは……」


「それは……?」


「まあこの世界の成り立ちっていうか、その辺が疑問なんですよね。

ここは異世界なのに色々と気にかかる点があるし」


「言われてみれば確かに……。この世界はそういうもんだと思ってたよ。

何故か気にしたこともなかったよ。私はいつの間にか、この世界に馴染んでいたんだね」


「でしょ?でも最近なんか俺を縛っていたものから解放された感じがして。

それでそういう感情が沸いてきたんですよね」


「ふむふむ。こんなところに呼び出されたら真っ先に思うはずなのにね」


「まるで誰かが意図的にそう仕向けているような、ね?」


「それはないでしょ。

あの事件のことは私も詳しく聞いたし、もちろんまだ覚えてるけど……。

そう仕向けて得する人がいるとも思えないし。

そう考えること自体が操られていない証拠じゃない?」


「……!」


「どうしたの?」


「今なんて言いました?」


「誰かに操られてると疑問に思うこと、それ自体が操られていない証拠」


「なるほど、それは確かに一理あると思います」


「本当に操られてたら、疑問に思うことも無いはずだもんね」



「それで今から兵士の町へ行くことになってるんですよ。

そこで俺の疑問が解決するはずなんです」


「そうなんだ……」


「……リンさんもついてくる?」


「私も一緒でいいの?」


「そんなわかりやすい表情をされたらね」


「だってこんな話を聞いちゃったらさ、いかざるを得ないでしょ?

私も頭の中にも疑問がどんどん溢れてきたよ」


「そうですか。なら、いいですよ」


「ずいぶんと素直すぎない?」


「断っても、無理やりにでもついてきそうな気がしたからですね」


「ふーん、私のことよくわかってるじゃん」

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