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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十章 再異世界編
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今すぐにでも



「何とか無事に終わりましたね、少し想定外のことがあったけど」


「私たちの方が、上だったということの証明ね。

向こうも力の使い方がわからなかったのもあるんでしょうけどね」


「でも全員、連合に引き渡したから問題はないでしょう。

これからはビアさんが言う、平和になるんでしょうし?」


「さあ?それは私がそう見えただけで、実際のところはどうなるかはわからないけどね」


「あのリーダー、少し意味深なことも言っていましたけど」


「悔し紛れじゃないの?」


「しかし、俺がここにいること、大きな運命が変わったこと。

何かが裏でうごめいているのかもしれないですね」


「そうかもしれないわね……。でもクロアももうそんなことに惑わされないでしょ?

私との修行で、さらなる力を手に入れたのだから」


「確かにそうかもしれない……」


「妙に素直ね……。何か思い当たることでも?」


「いや……」

 俺はさっきとある能力をガードしていたのだけど、それは言わないほうがいいんだろうな。



「でもこの世界を能力が支配しているってとこ、言わされたのは何かしっくりこなかったけど」


「クロアが未来で言っていたのだから、実質クロア自身の言葉じゃない?」


「それはそうかもしれないけど、あの時別の言葉を話していたら……」


「それでもきっと変わらなかったでしょうね」


「なんでそう言い切れるんですか?」


「それが、未来予知という能力だからよ」


 答えになってるようでなってない……?



「はあ……。これで俺のやるべきことも終わったってことですかね?」


「そういうことになるわね……。

結局そういう確定された未来だったのかもそれないわね」


「それはなんか嫌ですね」


「なるものはそうなるじゃない」


「それでも運命に抗っていたいじゃないですか?

……だからこそ能力があるんじゃ?」


「それは人それぞれの気がするけど。

決められたレールを歩きたい人もいるし、クロアみたいな人もいる。

それを助けるのが能力うらないでしょ?」


「まあ確かに……。少なくとも前みたいな感じじゃなく、個人の自由は絶対に必要ですよね」


「それを守るのが法律なのよね?」


「えっ?」


「そっちの世界でいう」


「そう、ですね……」

 俺はそんなこと話してないけど?

 また未来で見た知識、出してきたな。



「アロクさん、どうもお疲れさまでした」


「ああ、セレネさんか。もういいの?事後処理のほうは」


「はい、連合の皆さんがやってきてくれたお陰で私の仕事はなくなりました」


「そうなんだ、それは良かったね」


「それにしてもすごいですよね、未来予知の能力って。

ビア様の家系に代々受け継がれているんですよね」


「まあね、でもその驚き様は……初めて知ったんだっけ?」


「作戦の時が初めてですよ。噂には聞いたことがありましたけど……。

今までは能力の詳細を話すのは、禁止されていましたからね。

でも連合ができて、公表することが可能になって……。

まあそれはそれで、デメリットもありますけど」


 そのことをベアさんは変えたかったんだよな。

 何ならそれが一番のきっかけだったもんな。


「それで?」


「でも今回身近にあの能力を感じて……すごいなって」


「まあ、そうだね」


「憧れの能力ですけど、私には一生使うことは出来ないんですよね……」


「まあ能力には、それぞれの良さってもんがあるからね。個性みたいなもんでさ」


「でも未来予知の能力は他の能力の、完全な上位互換の能力じゃないですか?

それに確かアロクさんも言ってたじゃないですか?

やっぱりこの世は能力が全て。実力主義社会ってことですよね?」


「まあ確かにそれはそうかも。なんでそれをそんなに喜んで話しているのかは知らないけど」

 思えば最初からそうだったっけ。


「だって、そうじゃないですか」


「なんでそんなに実力に拘るの?」


「……やっぱり、そういう風に育ってきたからですかね」


「ふーん。俺にはあんまり理解できないけど、なんとなくはわかる。

やっぱりさ、規則とかいろいろ厳しい感じだったの?」


「そうですね、私が置かれていた環境は特に。

明国の教育の制度とかって知ってますか?」


「いいや、ほとんど」

 割と全部な気もするが。


「明国では赤の占いが重要視されていて、何でも数字とかで表すんですよ。

運命や色々なことを数字で表すのが基本です。

だから自然と直感的よりも論理的な思考になっちゃうんですかね」


「なるほどな。でも黄色の占いは直感的な事を重視するよね」


「まるで反対なんですよね。だから苦労しましたよ、黄色の能力の取得には」


「確かに今までがそうだと、苦労しそうだね」


「はい……」


 論理的と直感的……か。



「……でも、アロクさんともこれで終わりなんですね。なんだかあっという間でした」


「そうだね……。でも今思うと、あの時セレネさんを選んで良かったと思ってるよ」


「そうですか?それは光栄ですね。……じゃあ最後に」


「最後に?」


 セレネは自分の鞄から、赤いお守りを取り出した。


「これを、お礼に」


「これは……何?」


「恋愛の神様が宿っているという、恋愛が成就するお守りです」


「ふーん、女の子ってこういうの好きだよね。この世界でも、そういうのを信じるんだ」


「……この世界では男も女も関係なく、お金がある人ならこういう物を持っていますよ」


「そうだな……。確かにこの世界ではそうかもしれない」

 そう言えば奇抜な男とかメイクした男とか、この世界には普通にいるんだったな。忘れてたぜ。


「普通にこの世界に伝わるアイテムなんですよ。恋愛運を上げることができます」


「なるほど、アイテムだったか」


「もしかして、余計なお世話でしたか?」


「いや……」

 その、どっちの意味にもとれる発言はやめてくれ。


「すいません、不要ならいいんです。ただ何かお礼がしたくて」


「まあ、もらっておくよ?俺が不要でも誰かにあげられるし」


「じゃあ……」


 クロアは赤いお守りをセレネから受け取った。




「それでクロアはこれからどうするの?」


「えーっと……?」


「そろそろ私の元の世界に戻す能力も使えるかもしれないわ。

今すぐにでも、帰る?」


「いや、いつでも帰れるならもう少しだけ……」


「何か心残りでもあるの?」


「少しだけ気になることがあるんです」


「そう……。もし助けが必要なら、私も手伝うわよ?」


「はい、その時はお願いします」


 ……ずっと気になっていた。


 いや、気にしていなかったのかも知れない。

 自ら思わないようにしていたのかも知れない。

 誰かにそう思わされていたのかも知れない。

 でも今は……なんだか、その鎖が解けた気がする。


 今更かもしれないけど……この世界は、一体なんなんだ。


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