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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十章 再異世界編
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世界は占いに支配されている

 三人は砂漠を越えて、組織の本拠地である光の塔へとやってきた。


「二人とも、乗り込む準備は万全ね?」


「まあ」


「大丈夫です、まずは手筈通りに……」



 三人は見張りに気付かれないように、物陰で小さな声で話していた。


「入り口付近には、青の占い師が配置されているわ」


「じゃあここは私に任せてください」


「よろしくね」


「何だか……つまらないな」


「何か言った?」


「いや」


 想定通りというか?もうわかってるんですよね?

 この後の流れを事前に聞いているし、未来が知れるというのは……。

 何というか……消化試合だな。



 三人は塔の内部に侵入し、見張りをうまく掻い潜って進んでいた。


「何事もなく予定通りに進んでいますね、やはりビア様はすごいです」


 塔の内部構造も、教えてもらった通りだもんな。


「でも予期せぬことは起きるものよ?私の能力も完全じゃないのだから」


「またまた、謙遜しちゃって」

 ここまではどう見ても完全ですよ?


「相手にあの黒の能力の持ち主がいる以上、能力に絶対は無いってことは知ってるでしょ?」


「そうでしたね」

 確かに俺はこの身をもってそれを経験してたんだよな……。


「それで……この通路を左に行けばあの人が……いるんですよね?」


「予定通り、ならばね」


 じゃあ、いよいよ俺の出番がくるのか……。



「あの人がリーダーで間違いないですよね?」


「どうやら、そうみたいだな」


 話には聞いていたけど……能力で見ても、やはり相当な力があるみたいだな。


 向こうもわかっていたんだよな。これまでの流れが、ミアちゃんの能力で。

 でもそれすらもわかってしまう、こちらの能力のほうが一枚上手……か。


「……やはり隣にいるわね」


「予定通りでしたね」


「クロア、心の準備はいい?では指示通りに」


 その掛け声を聞いたクロアは、リーダーの前に躍り出た。



 赤の姉妹を両隣に添えて、黒い衣装を着た組織のリーダーはクロアの前に姿を現した。


「こんにちは」


「やあ」


「あ、わかってました?」


「そうですね」


「それで、どうしますか?」


「いいや、この後の展開はわかっていますよ」


「じゃあ早速……」

 一応俺の力を示しておかないとな、予定通りに。


 クロアは黒い炎の能力を使用し、自身の周りに炎を豪快に放った。

 その炎はクロアを守るように、柱のように燃え盛りその煌めきを保っていた。


「これね、今は力もコントロールも効くんですよ。俺のほうが上ですかね」


「確かにそのようですね」


 その場で黒く燃え続ける炎。

 赤の姉妹はそれをただ呆然と見つめていた。



「こちらが抵抗しても、結局無駄なだけのようですね。

だから、せめて交渉しようと思ってます」


「いや、それも無駄ですよ?

俺も手荒な真似はしたくないんで、とっとと捕まってください」


 それから少し間をおいて、組織のリーダーは突然声を荒げて話しだした。


「……能力だとか関係なくてさ、なんとなくわかるんだよ。

あの時と同じで……。でもそれを変えてみたくてさ」


「それでも変わらないこともありますよね。

どうしても変えられないことはある。俺もやっとわかってきましたよ」


「……何が言いたいんですか」


「この世界は、言ってみれば能力に支配されているんですよ。違いますか?」


 俺一言一句、間違えないで言えないよ?

 多分覚え間違えてるけど、ビアさんに大体で良いって言われてるし問題ないよね?


「まあ、そうかもしれないですね。上に立ってわかりましたよ。

でもこれから少しづつでも変わると思いますよ」


「なら連合がそれをこれからやっていくんじゃないですか?

……そもそもなんでこんな組織を立ち上げたんですか?」


「それは言えないな。未来にも言わない。

誰にも知られたくない。でも意味はあるよ。

君がここに来たことこそが未来に繋がるんだよ」


「なるほど、わかりました。俺が今こうしてここに立っている。

それ自体が何らかの意味を持つんですね」


「まあそういうことですよ。

自分なんか捨て石同然で、あの時にあんなことがなければ……」


「……そちらの事情はよく知りませんが、そろそろいいですか?

美女達を近くで待たせているので」


 はたしてこのセリフは必要だったのだろうか。


「いいよ……。でも……せっかくだからさ、最後にさ比べてみない?」


「……?」

 この展開は聞いてないぞ。


「本当に力が及ばないのかをさ」


「む、無駄だと思いますよ?」


「どうたら動揺しているようだね?」


「いや……?」



「じゃあ始めようよ」


「くっ」


 予定ではこのまますんなりと捕まってくれるはずだったんだが。

 こうなったら能力を惜しみなく使うほかはないか。


 その場では何も起きていないように見えた。

 しかし二人の間では見えない能力による攻防が繰り広げられた。


 青☆凝視を使いながら、相手の能力を見定める。

 赤☆刹那を使ってその運命を変える。

 場合によっては複合的に能力を使う。


「……なかなかやるね、さすがに普通の能力じゃ駄目なようだ。じゃあこれは?」


 組織のリーダーは黒い炎を指先から、リズミカルに飛ばした。

 クロアは冷静に白☆チェンジで、その能力を相殺して消滅させた。


「……あの、そろそろやめませんか?俺があの能力をもう一度使う前に」


「そしたら?またああなってしまうもんね?力がありすぎるのも困りもんだ」


「いや、そんなことはないですよ。俺はもう力をコントロールできるので」


「そうか」


「どうやらそちらは……。その様子ではできないようですね?」


「この能力は怒りの感情を呼び起こすことで力が増すらしいね」


「そうですね」


「思いっきり力を込めたら、どうなるかな?」


 その時、隣に立っていた赤い姉妹がようやく声を上げ、二人の目の前に立ち塞がった。


「もう……いいと思います。それ以上は……」


「ミアちゃん……」


「もう当初の目的は達成したのでしょう?

これ以上は本当に意味が無いですよ。私の占いでもそう答えが出ています」


 ミルさん……確かにそう、だよな……。



「ふぅ……そうだね。やっぱりやめたよ。

君だけならともかく、君の後ろについている人達には適いそうにないしね。

無駄なことはやめよう」


 組織のリーダーはそう言うと、少し悔しそうな顔をして俯いた。


 一瞬想定外のことが起こって焦ったな。

 これが未来予知の能力が、阻害されるということか。

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