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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十章 再異世界編
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エルク氏、認める

「ここがその牢屋ですね?」


「そうよ」


 あの頃とほとんど変わってないな。暗くてじめじめして陰気な場所だ。



「……話さないと、どうなるかわかってるんでしょうね?」


「この人本当に怖いよ、今の内に話したほうが絶対良い。

君の運勢が、どうなっても知らないよ?」


「いや、話す、話すからそんな怖い顔はやめてくれ」


「あら、ずいぶんと物分かりがいいのね?」



「……俺はある作戦のため、この近くの町で待機していたんだ。

上から命令があればすぐに行動するつもりだった」


「情報を得るためにねぇ」


「その時に捕まったんだ。ほんの一瞬の出来事だった。

相手はこの界隈を治めてる女神官だったさ。あの輝く姿を見たときに、これはもう駄目だと思ったね」


「女神官か」


「だから何も言わずにおとなしく捕まったのさ。俺って潔いだろ?

もっとも相手は能力で色々と分かっていたんだろうけどな。

それでこの牢屋に入れられたんだが、どうやらその後、俺は存在を忘れ去られたらしくてな」


「それで?」


「上の者はそれっきり誰も来なくなったさ、まずい飯だけは来るけどな」


「……もういいわ。それで組織の居場所は?」


「ここから東の砂漠を抜けるとあるのが、組織の本拠地の光の塔だ」


 光の塔って名前で一気に胡散臭くなったな。


「砂漠の上にポツンと立っていると言われている光の塔ね」


「いいか?情報を……話したのは俺だということは誰にも言うなよ?約束は絶対に守れよ?」


「ああ、もちろんだ」

 多分ビアさんなら余裕で言うがな。


「……ということなのよね」



「で、結局敵地に乗り込むしかないと?」


「ようやくクロアの腕の見せ所がやってきたわね。

まずはその能力を見せびらかして相手を脅すのよ?」


「でも向こうも持っているらしいですからね?あの能力を。

うまく使えればいいけど……。いくら修業したとはいえ、まだ未完成ですからね。

俺の怒りの感情を高めるという課題もまだ解決していないし……」


「そうねえ、何とかして怒りを貯める方法はないかしら?」


「……何を考えてるんですか?」


「いや、嫌がることはしないで、貯める方法があるんじゃないかってね。

それで私ね、今気付いてしまったの」


「あ、ひょっとしなくてもこの流れってもう能力で見えてるんですね?」


「いいえ。これは未来予知でもわからなかったことなの、本当に今気付いたのよ。

あるアイテムとある能力を使うことでうまく怒りを貯めれないかしらね?」


「ある能力……?それってまさか……」


「たぶん、そのまさかよ。それであの時の状況をフラッシュバックさせるの」


「それは鬼畜すぎる……」




「これでようやく準備が整ったわね、あとは敵の本拠地に乗り込むだけね」


「随分と簡単に事が運びましたね」

 本当にうまく行き過ぎている。


「そうね。私の導きのおかげね」


 いや、未来予知の能力のお陰ね?勘違いしないでよね?



「そういえばあの時……。エルクが大神官の協力者だと発表された時は衝撃的だったわね」


「エルクさん、なんで認めることになったんですか?」

 俺も薄々気付いてはいたがね。


「それはね……」


 ビアは過去のエルクにあったことをクロアに語った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「……それで、どういう経緯かを詳しく話したらいいのかい?」


「そうですね、規則を変えるには今までの情報を知っておく必要があります」


「そうしてくれると、私も助かるのだけど?」


「……君にそう言われたら、さすがに断れないな。

……大神官は運命が決まり切っていたら、つまらないと言っていた」


「それで?」


「それは私も一理あると思った」


「なるほど……。それもあって?」


「だから協力を?」


「いいや、一番は大神官の持っている情報を得るためだった」


「何の?」


「……君には言わなくてもわかるだろう?」


「それ以外にも、何か情報はあるんでしょう?」


「ああ……」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「それでエルクは今の大神官と姉に、自分の知っていることを告げたらしいわ。

情報を得るために仕方なく仲間になったことや、元大神官の情報などをね。

そして牢屋に入れられることになったの」


「なるほど、だから元大神官の協力者になったわけか」

 何かしらの理由があると思っていたけど、やはりあの人がらみだったのか。


「……もう少し罪が重くなってもいい気がしますけど?俺を勝手に呼んだことも含めてね」


「それも連合はわかってはいるんだろうけど、自己申告では確証がないからね。

証拠がない。だから牢屋に入れているの」


「前にも言ってましたよね、証拠がないから罰を与えられないって」


「そうね、能力が絡むとどうしてもそうなってしまうわ」


「俺という存在が証拠になりそうだけど……」


「でも、エルクがクロアを呼んだという証拠は……やっぱりないじゃない?」


「それは確かに、そうか……」



「しかしエルクさんが協力者か……いくら情報が欲しいといってもな……。

そういえば前の組織のボス……。ベアさんはどうしたんですか?何故かずっと話題に出ませんでしたけど」


「……。何故だと思う?」


「いや、そんなこと聞くってことは何かあったんですよね?言いにくい何かが」


「……今は、消息不明よ」


「え?てっきり計画が上手くいったから、良い感じに過ごしているのかと?」


「確かに目的が達成できて、満足そうにしていたのだけど……」


「そうですよね、あれほど協会の制度を変えたいと言っていたのだから。

これから自分の手で連合を作りあげていけばいいのに」


「そうよね、っでもやっぱり公には顔を出せないじゃない?色々あるからね。

それで最低限の規則を決めた後、連合を今の大神官にまかせてどこかに行ってしまったの」


「なるほど……」


「まあそういうことだから……ね」


「……そうか、一時的でも能力も失ってしまったんですよね?ベアさんも。

俺のせいで、いや違うけど」

 確かあの人も怖い能力を持っていたんだもんな。


「それも一つの要因として、あるかもしれないわね……。

でも私は、時が経てばまたきっとここに戻ってくると思ってるわ」


「……だといいですね」


 それはいいんだが、エルクさんは何やってんだよ。

 その為に俺を呼び出した癖に、なんで寄り添ってないんだよ。

 そこは脱走してでもついて行けよ。


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