それでも一緒に居られるだけでいいんですよ
「そしてミアちゃんも向こうに?」
「そうよ。きっと彼女の能力でこちらの情報は筒抜けね」
「そういや、俺の誕生日ばれてるんだった。それで俺の運命を見られてるのか、厄介だな。
……そうだ、じゃあ逆にこちらからミアちゃんの情報を得ることは?」
「っそれは残念だけど無駄ね……。私も試したのだけど、相手は能力を妨害してくるはずよ」
「そういえば数日前に能力を試してみたけど、俺も効果がなかった感じだった。
ガードが発動していたのか?」
「あの能力は敵に回すと、とても厄介です」
「でも黒☆ガードもこちらが力を上回れば、破れるんじゃなかったっけ?」
「そうだけど、今私たちは本調子じゃないのよ?相手にガードされるのも仕方ないでしょうね」
「うーむ……」
それは向こうも同じかと思ったけど……。
そうか、組織の人は俺の黒い炎の被害を受けていないのか。
「……時間も経ったし、他に能力が回復している方で一緒に行ける方はいないんですか?
私たち三人だけで行くより少しでも仲間がいたほうが……」
「残念だけどまだね……。もちろんいないわけじゃないんだけど。
能力がまだ十分に発揮できなかったり、数回使うと力不足になったりするらしいわ。
それに優秀な人ほど、回復に時間がかかったりしていてね……」
「そうか……」
一人思い当たる人がいるけど?あの人まだ牢屋か?
◇
「ミアちゃんは……そうあの時。
ちょうどエルクの護衛になるんだって喜んでいたわ」
「ちょっと待って……」
「何?」
「相手が向こう側についている時点で、先の展開が読めたんだけど」
「どんな?」
「ミアちゃんがエルクさんの護衛になってわーい→これからも一緒にいられるね→
そういえば最近一緒にいるあの女は……→そして衝撃の光景を目の当たりにした。→
エルク様ひどい……ぐれてやる→こんな感じでしょ?」
「ま、まあ……大体そんな感じかも知れないわね……」
「ミアちゃん……可哀そすぎる」
「でもエルクに気がないなら仕方ないし……」
「それでも一緒に居られるだけでいいんですよ。
ちゃんと言わない、エルクさんもエルクさんだし……。
ミアちゃんがここから挽回できるチャンスはありますか?」
「クロアが、人の事を応援するなんてね」
「……心に余裕ができたのでね。
というか別に俺は最初からミアちゃんを応援しているんだが?」
「そうなの?」
「ミアちゃんあんなに健気なのに、可哀そうじゃないですか?
俺も割と世話になったのもあるけど。
とにかくまだ間に合うなら、何とかうまいこと話をつけてこちら側についてくれないかな?」
「そ、そうね……」
ビアさん……エルクさんの相手は自分の姉だろうに興味ないのか?
そういや、その姉は今何してんだ?
今日まで何故か話題にも出なかったけど……。
いや、その話題を出そうとすると、はぐらかされていたっけ。
……エルクさんもそのことについて、何も言ってなかったよな?
ここは今一度聞いてみるとするか……?
◇
「それで俺たちは今、どこに向かっているんですか?」
「牢屋に捕まっている元組織の者がいるのという情報があるの。
昔の組織が使っていた牢屋よ」
「組織組織って、ややこしいな。俺が昔捕まったようなところですか?」
「そこである人物が捕まっているから、話を聞いてみましょう」
三人はごみごみとした街の中を、足早に歩いた。
◇
「ちょいとそこの兄さん、やっていかないか?」
「え?何を?」
クロアが声をかけられた方向を見ると、そこには大小様々な形のツボがたくさん置いてあった。
うわ、ガチの生きてる蛇じゃん。
「この蛇が、今はこのツボにいるだろう?」
「……次にどのツボから顔を出すか、当ててみろってことだな?」
「よくわかったね?」
「アロク、止めておきなさい。どうせ当たらないで、いいカモにされるだけよ」
「何を言っているんだ。俺は真剣にやっている。
今まで真面目にギャンブルをやってきたんだ」
……真面目にギャンブルというパワーワード。
「ほんとう?」
「それなら姉ちゃん、一回やってみろ。
一回はお試しでいいからさ、そしたら楽しさがわかるはずだ」
「ええ?そうなの?じゃあやってみようかしら」
「あの、俺たち急いでるんじゃ?」
ここでこんなことしている場合じゃないだろ?
◇
「よくわかったねぇ。じゃあ次からは料金をいただくよ?」
「もちろんよ、でも賭けるのはお金じゃないわ」
「ほぅ、それで?賭けるものは何だい?」
「賭けるものは情報よ」
「よっし、その勝負乗った」
ビアさん……そういうことか。
◇
「何度やってみても、私の勝ちね?これで文句はないでしょう?」
ビアさん普通に能力を使ったな?一回も外していない。
「俺がこんなに負けるなんてな、ははは……まいったな」
この男、黄色の能力を使っていた。
なのに全てに負けた。まあビアさんだからな、当然といえば当然か。
「それで?いったい何の情報がお望みで?」
「ある男の居場所よ」
「どんな男だ……?名前や特徴はわかるか?」
「えーっと……」
◇
◇
「……ふぅ、ずいぶんと面倒だったわね」
「これも能力で見えてたんですね?」
「そうよ、この情報が欲しかったの。私はもう知っているのだけどね。
知っていても、その通りに行動しなきゃいけないから、大変よね」
「それは確かにめんどくさいな」
自分が見えた未来と同じ行動をとらなくては、同じ未来にたどり着けない。
……だけど違う行動をとれば、少しは変わってくるのだろうか?
しかしそうならそうと最初に言ってくれよ。