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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十章 再異世界編
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最後の仕上げ

「今日はいよいよ最後の仕上げよ、今までよく頑張ったわね」


「あの、ここ数日考えてたんですけど。

今までやってきたことって、もしかしてあんまり意味ないんじゃ?」


「……?」


「黒い炎のコントロールと強化をしてきたわけだけど……。

相手の黒い炎に黒い炎をぶつけても意味ないんじゃないですか?

余計に燃え上がるとか、相打ちになって爆発するとか……。

実際ぶつかり合ったらどうなるんですかね?」


「そりゃあ力が弱いほうが負けて、爆発するでしょうね。

でもぶつけ合うことを考えても意味はないわよ?……要は使い方じゃない?」


「使い方?」


「その能力で相手を脅すのよ?」


「脅す……いいのかそれで」


「……言い方が悪かったわね。こちらの力を見せつけるの。

力で向こうを威圧して、反抗させなければいいわけ。

実際には能力は使わなくていいし……。むしろ使わないに越したことはないわ。

それで、話し合いをして解決できるのならベストなのだけど」


「なるほど、つまり最初から俺の強さを見せびらかして、相手に何もさせないってことか」


「そうよ、相手が例えどんな能力を持っていたとしてもね、物理攻撃の前には勝てないでしょ?」


「そううまくいくかな……。

それじゃあ何だか上から押さえつけるみたいで、誰かがやっていた事と変わらない気もするけど」


「そのために今まで頑張ってきたんじゃないの?」


「それは……そうだけど」


「他に何かいい作戦でもあるというの?」


「うーん……他の能力で何とかならないですかね?」


「いったいどの能力をどう使うの?

向こうもガードくらい持っていても不思議じゃないわけだし。

物理的に攻撃できる、あの能力以外に勝ち目はないと思うわよ?」


「でもなあ……」


「私は一番良い方法だと思ったのだけど……。

クロアがそう言うなら、もう少し考えなければならないかもしれないわね。

見つからなければ仕方ないけど」


「……」


「クロアはこの数日間、私と一緒に修行をして力をつけたのだから、もう少し自信を持っていいわ。

その能力は唯一物理に干渉できる能力なのだからね」


「……あの、この能力って俺の世界でどんな風に言うか知ってますか?」


「確か、魔法だったかしら?」


 ……魔法、ねぇ。




 それにしても、この数日間はきつい修行だったな。

 わかってはいたけど、ビアさんはスパルタだからな。

 まあそのおかけで、火力とコントロールは何とか身についたわけだけど……。

 ……重要な問題はまだ残っているな。


「今日は、いよいよ敵地に乗り込むんですね?」


「ええ、でもその前にちょっと待って。

セレネさんあのアイテムを貸してちょうだい?」


「はい、あれですね。この日の為にしっかりと磨いておきました。どうぞ」

 セレネは淡く光る水晶玉をビアに渡した。


「さあ、能力を使って。これをよく覗き込んで見てみるのよ?」


「俺が、か?」


「他に誰がいるっていうの?」


 クロアは水晶玉に向けて能力を使った。

 水晶玉は光を放ち、ある人物を照らし出した。


「……なんだ、こないだとほぼ同じじゃん。誰なんだろうな、この人」


「私は、この人物を知っています」


「え?知ってるのか」


「情報はあるわ。セレネさんにもこの数日間、向こうの組織の情報を探ってもらっていたの。

この人は協会にたくさんのお金をつぎ込んで破産したらしいわ。

とてもお金を持っていたのだけどね。だから協会にとても強い恨みを持っている。

その縋っていた協会の長の大神官が起こした不祥事。

彼は裏で事情を知ってしまったのでしょうね。そしてその恨みが怒りへと変わったのね」


「それは……ちょっと同情できますね」


「彼は協会に相談に通う内に、自然と占いの基礎を身に着けていったのでしょうね」


「なるほど、それで能力を使えるようになったわけか」


「担当していたのは……確かミルさんだったかしら」


「ミルさん……」


「それだけ頼っていた協会が潰されたってのは言い方が悪いけど。

そうなったらどうなると思う?」


「お金が戻ってこないんですか?」


「連合には保証するお金はないでしょうね?だとしたらその怒りはすごいことでしょうね?」


「掛けたお金に比例していそうです」


「そう考えたら、確かに俺たちの想像を超える怒りを持っていてもおかしくはないかもな」

 まあ俺には劣ると思うけど。


「とにかく、その事を頭に入れておいて、交渉には必要な事かもしれないから。

……じゃあ今から行くところがあるから」




「地図にあるこの場所が目的地なんですよね?ここから少し歩きますね」


「……確かに組織が協会に対する怒りを持つのは分かったけど。

いったい何が目的なんだろうな?」


「さあ……?今までの怒りをどこかにぶつけたいんでしょうね?

特にクロアとか協会を滅ぼした悪人になっているそうだから、気を付けないといけないわね?」


「俺にかよ。俺はむしろ悪を倒した、ヒーローじゃないのか?」


「そう思われているなら、こんなことにはならないんじゃない?」


「……どこかで話がねじ曲がっているのか?

もう直接リーダーが俺に話にくればいいのに。そしたら説明するのにな」


「相手の組織には大勢の占い師がいるのよ?太刀打ちできると思う?」


「いや、それを上回る能力の使い手が……ここに」


「どこにいるの?」


「……いや、もういい」


「さすがに一人で複数の相手ができるほどじゃないでしょう?」


「でも、俺はこの能力で相手を脅すって作戦なんですよね?」


「それはそうだけど?それは作戦の内のひとつよ。

相手が複数で来られたら、クロアなんてひとたまりもないわよ?」


「あ、はい……そうですね……」

 怖いこと言わないでくれ。



「それで向こうは何人いるんですか?調査してたならわかってるんでしょ?」


「組織は協会に着いていた者と、どちらにも属していなかった人間が結託して作られたの。

だから数十人はいることは確実ね」


「ではどんな人物が?」


「わかっている中では、協会の序列7位だった白の神官アメルがいるわね。

元々協会に忠誠を誓っていなかった。簡単に向こうに流れたわ。

それ以外にも、あまり名が知られていない占い師が複数いると聞いたわ」


「そうですか、神官がいるとなれば手強そうですね」


「おまけに向こうもこちらの情報を得ているという話よ」


「つまり、情報を流している者がいるわけですね?」


「残念だけど、そういうことでしょうね」


「相手には能力者が?」


「それについては、あまりいないかもしれないわ。

もし能力を使えるなら私たちの居場所がわかったりするだろうし。

探りを入れてきたり、運命を変えてきたりするはずだもの」


 確かにこの世界に来てから、俺のガードの能力に反応はないな。


「あの水晶玉で見えた、リーダーが指揮を執っているのでしょうか?」


「恐らくそうでしょうね……」


 協会に恨みを持つ、俺と同じ能力を持つリーダーか……。


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