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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第十章 再異世界編
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小さな運命と大きな運命

 蛇国に入る国境付近まできたのか?

 十分警戒はしていたけど、誰にも襲われなくてよかった。


「あとはここから蛇国に入って、まずは情報収集かな?

確か国境近くには大きな情報屋があると聞いたから、そこで」


「あの、ちょっと待ってください。

今私の能力で少し運命を覗いてみたのですが、大変な運命に切り替わってます」


「え?どういうこと」


「黒い炎は使う者によって力を大きく変えますよね。その威力が急に増えたようなんです」


「能力でそんなこともわかるのか……?それはまずいかもね」

 俺より怒りがあるやつなんているの?


「それで大神官様から話は聞いていたんですけど、

これはここぞの時に使いなさいって言われていて」


「うん、何?」


「……よっぽどうちに怒りを秘めていなければ使えないって話言いましたよね?」


「確か聞いたね?まあ俺も当事者だからわかるけど。

まあそんな怒りの感情を持っている人はなかなかいないだろうけど」


「それがいたんですよ。それでその人のことを……」


「俺ぐらいの怒りを持ってる人が?

確かに組織に恨みを持っている元協会信者ならいるのかもしれないけど」


 ……誰だろうな?


「それがわかれば苦労しないわけですが……」


「まあそうだね」


 セレネは自分の鞄から、淡く光る水晶玉を取り出した。


「というわけで、これを預かってきました」


「これは……いつかに見た水晶玉に似てるな」

 あまり良い記憶はないが。


「これに能力と思いを込めれば、その人物がわかると。

道中で使うようにと、メーティス様に頂いてきました」


「そうなのか」



「じゃあ、さっそく使ってみますね。

もし私でできなければアロクさん、代わりにお願いします」


「う、うん」


 セレネは水晶玉に向けて能力を使った。

 水晶玉は光を放ち、ある人物を照らし出した。


「……どうやらこの人がそうらしいです」


「いや、こいつ誰だよ。こんなやつ今まで見たことないが」


「私もこの人物がどなたかはわかりません。

相手の名前を知る能力があればいいのですが。

それを使える青い人達はまだ回復していないので……。

それが使えれば色々とわかると思うんですけど」


「確かにそれが使えれば楽なんだけどな」

 本当にいないのか?


「どうやら、青い人達は回復が遅いらしく」


「ふーん……?」


「疑ってますね?」


「うん、実際俺はこんなに早く治ったしね」

 やはり引っかかるな。


「それは私の力とアロクさんの力が凄かっただけで……」


「まあ、今はこの話はいいや、それで……。

とにかくこの水晶玉に映っている人物がリーダーで、捕まえればいいってことだよね?

相手の顔がわかれば、確かに有利かもしれない」


「はい、でも周りはおそらく名うての占い師で固められていますからね」


「そうだろうね……。

でも、やっぱりこちらに戦力になる人はいないの?神官たちは全滅なの?」


「残念ながら。皆さん明国に集められていたので、かなりの影響があったと聞いています。

地下にいた人や、遠くにいた人は無事だった人もいると聞きましたけど」


「そっか」

 やっぱり相当な被害が出たんだな……。

 俺のせいで。いや、俺じゃないけど。


「それで……どうしますか?」


「……ひとつ言っていい?

もう少し時を待てばさ、神官達も回復して何とかなるんじゃないの?

ひょっとしなくてもさ、今俺がやらなくても何とかなるんじゃないの?」


「あ……それは……」


「いや、セレネさんの立場も立場だからわかるよ?

……俺もあの人を目の前にして、それは言えなかったけどさ……。

でも適当に時間潰すって方法もあると思わない?」


「じゃあ大神官様の任務を放棄するってことですか?

ここまで来て……」


「いや、そうは言っていないし、ここまで来たらやるつもりだけどさ……。

いろいろ考えてみたら。なんでこうなったのかな、とか思ってて……」


「その答えなら簡単なことです。大きな運命が動いたからですよ」


「そうなの……?」

 やはり誰かが、また仕組んでいるのだろうか?

 それとも自然にこうなっていった?



「それでその大きな運命ってのは何なんだ?」


「アロクさん、忘れてしまったのですか?小さな運命は例えば個人の小さな望みとか。

一日の中で、例えばランチに何を食べるとか、いつ誰と出会うとか。

それぐらいの小さな出来事にまつわる運命。個人だけに関係すること。

簡単に言うとこんな感じです。これは力さえあれば、赤の能力で割と簡単に変えられます」


 つまり、赤☆刹那で変えられる運命だな。


「じゃあ大きな運命は?それも確か変更する能力があったよな?」


「そうですね、それが大神官様の使える能力です。

複数に跨っても使えて、規模が大きくてもいい。

その能力を使うことで、大きな運命はやっと少しづつ動くのです」


「だから前の、俺の事件の時にそれを変更していたわけか?」


「そうです。変えた結果はあのようになりましたが、あれはまだ良いほうだったようです。

下手をすればこの世界は滅亡していたらしいです」


 そう言えば……ビアさんもそんな未来が見えたと最初に言っていたな。


「それでそのことが、今の俺とどう結びつくんだ?」


「これは、言わないつもりだったのですが」


「何?」


「色々忘れていると思ってましたが、もう気付いていると思うので。

誰かがその大きな運命を変えたようですね。

だから結果的に、予想外にアロクさんがここに呼び出されることになってしまった」


「つまりその大きな運命を変えた人物がいるってことか……」


「予想外の出来事ですからね。でも大神官様がそう言われているだけですので。私には真実はわかりませんが」


「……ちょっと変なこと、聞いてもいい?」


「はい」


「また前みたいなことじゃないよね?」


「え?」


「セレネさんはどう思う?」


「そ、それは……」


 大きな運命か。

 それを見れる能力がないと、それを掴むのは不可能だし。

 人の言っていることも当てにはできない。


 力。見えない力が働いているわけで。


 それに……。

 絶対的には力を持つものが運命を支配できるわけだから……。


「わ、わからないよね。……ごめん、この話は忘れていいよ」


「確かにその可能性はあります。でも……」


「そうだね……それを言ったらきりがなくなってしまう。

まさか一度起きたことをまた繰り返すはずがないよな」


「でも、可能性はあります。

確かに大神官様は力もありますし、前大神官のように自分の思い通りに……。

大きな運命を動かすことはできるかもしれません」


「だよね……?」


「でも、信じるしかないんじゃないですか?」


「まあ例えそうだったとしても、俺達にはどうしようもないからな……」


「でもアロクさんは大神官様と話をしましたよね?直接会って話せばわかると思うんですよ」


「そう?」

 俺は……。わからなかったけどな。


「人の目を見れば嘘をついているかとかわかりますよね?」


「そ、そうか?」

 いや、わからんけど。


「人相学を学んでいれば、わかるはずです」


「お、おう……」

 知らんけど。


「だから可能性はゼロではないけど、そんなことはないと思っています」


「まあ確かに前大神官は人前に顔も見せないような人だったからな。

その話は一理あると思う」


「ですよね?」


「でも、もしそうだとしたら誰なんだろうな、その大きな運命ってのを裏で操っているのは」


「大神官様以外にこんなことができる人は……。私にはちょっと思いつきませんね」


「そうだね……もしかしたら……。いや、この話はもうやめようか」


「はい……」


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