黒い傷跡
大神官の面会を終えた二人は、次の作戦について話していた。
「じゃあまずは占いの城によって、
占い師達の能力を白☆チェンジで戻してあげるわけですね?」
「そうだね、ここからならちょうどいい寄り道になるし。
あとは協会に属していた残党勢力がこの辺りにもいるらしいから。
もし見かけたらうまく対処しないと」
「私も少しお話を聞いてきました。私も言動には気を付けないとですね」
そう言うとセレネはフードを深くかぶった。
「作戦を決めておこうか。いざという時に使えるサインとか」
「わかりました」
◇
「そういや能力でさ、何とかならないかな?
俺が無事に任務を達成できる運命にするとか」
「私にそんなに大きな運命を変える力はありませんよ?
頑張ってもほんの少しぐらいの足しにしかならないです」
「そうかあ……。確か能力で変更後の運命がわかるんだったよね?
じゃあ実質、未来がわかるってことと同義か?」
「それは違いますよ、運命は簡単に変わってしまいますし……。
未来は確定ではないです。能力を使用しても、その望んだ運命により近付くという感じですよ。
……忘れちゃいました?」
「そうだったっけ……?」
普通に忘れてるよ?確か赤い能力の話を誰かに聞いたはずだったんだけどな。
「……じゃあさ、セレネさんの黄☆ルックって能力はどういう能力?」
「それはですね……簡単に言うと人探しの能力ですね。相手のいる場所がある程度わかるっていう」
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黄☆ルック
人を探しだす能力。力があるほど強く探し出せる。
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「そうか、それは結構便利な能力っぽいね。特に今のこの状況だと」
「確かにそうかもしれませんね?
……もし誰か探したい人がいるなら教えてくださいね。大体の場所はわかると思うので」
「それは助かるよ」
まあ、今のところ会いたい人はいないがな……。
…………いないよな?
◇
◇
占いの城の付近に来たか。大神官に寄って行けと言われたからな。
塔の近くだからか、ここまで何も問題はなかったけど……。
この街も随分と変わってしまったな。
もう少し明るい街だったと思うんだが、少し静かになったかな。
……俺のせいらしいんだが。いや元はといえば、大神官のせいだな。
「……クロアさん?あっ、じゃなかった……アロクさん」
「そうだよ?俺はアロクだよ?二度と名前を間違えないでね?」
大神官に言われたとはいえ、偽名に偽名を重ねることになるとはな……。
ただ反対にしただけなんだけど。
「そうですね、すいません……」
「気を付けてよ。周りに人がいなかったからまだよかったけど……。
ところでさ、この街にはどのくらいの被害があったの?実害的には」
「それは……向こうを見てください」
二人が見た方向には、ところどころ黒い傷跡が残っていた。
道が多少ひび割れていたり、カラフルだった町並みは多少黒みがかっていて、黒い炎の衝撃の跡が残っていた。
なるほど、数か月経ってもいまだに黒くなっている場所があるわけだ。
俺の能力の影響だよな……?
この辺は塔から割と近いからだな。あの時の事を思うと……こうなっても当たり前か。
「こっから向こう側は手付かずか……。なんで処置をしなかったんだ?」
「うーん……。たぶん教訓にしているんですかね?補修できるのに、わざとしないのは」
「……そう言えば一般人にはなんて言っているんだ?あの時のこと」
「協会の大神官と組織が争って、こうなったと。でも結局、平和的な解決をしたと……。
ここも、いずれは……どうにかすると思いますよ」
「そうか……」
◇
「相変わらず、すごい建物だな」
「ここの占い師たちは能力は使えないので、今は古来の方法で占っています」
「なるほどな」
この世界で能力を使わないなんてな。
俺も最初はそうだったっけ……。
「最近は落ち着いてきましたが、当時は混乱が凄かったです。私も対処に回ったんですけど」
「だろうな」
「……ここにいる占い師たちにできるだけ能力をかけて回りましょう。
大神官から話は聞いているはずですから」
「そうだね、できるだけね」
「でもアロクさん言動にはくれぐれも気を付けてください。正体がばれるとまずいですから」
「ああ、わかってる」
俺は蛇国の辺境の地出身の新人占い師、アロクだ。
そして二人は占いの城の占い師たちに白☆チェンジを掛けて回ったのだった。