そして女子力が増している気がする。
さて、ようやく地上へと出てきたか。
クロアはあたりを軽く見回した。
ここは明国のトルシュの街に近い場所か?
この辺りは影響が一番あったと聞いたけど……。以前と変わらないような……。
いや、ところどころちゃんと修復されていない場所があるな。
この辺りも少しひび割れているな……。塗装はよくできているが、急ぎでやったんだろうか。
外の情報はエルクさんにあまり聞かなかったけど、これは俺、結構やってしまっているな。
まあ俺のせいじゃないが。
◇
ここか?新しい組織の建物とやらは。
前の五つの塔か。それを元通りに綺麗にしたらしいな……。
まあ恐らく建物自体が黒くなったんで、上から塗装したんだろうな。
俺は黒いままでもかっこいいと思うが。
さすがに縁起が悪いと思われたんだろうな。もうそんなこと忘れていたけど。
……えっとこの左側の塔だっけ。
建物の構造は依然と変わっておらず、クロアは塔にすんなり入ることができた。
この世界の常識を今一度、思い出さないとな。
エルクさんに神官のバッジとこの世界の服を貰っておいて良かった。
これがないと、この辺りじゃまともに身動きが取れないもんな。
◇
クロアは受付で話をして、部屋に通された。
そこでは一人の白い輝く衣装に身を包んだ、金髪の女性が立っていた。
あれは……ビアさんか。
「クロア、よく来たわね……。待っていたわ」
「ビアさん……。お久しぶりになるのかな?」
俺は数日前に会ったはずだが、こちらでは数か月経ってるんだもんな。
ちょっと雰囲気が変わったか?
「そうね。こちらではそうなるわね」
「……時間が経過することを知ってるんですか?」
「まあそれなりにね。あれから私は……長い間クロアを待っていたの。
まあそこに座ってゆっくりと話すことにしましょう」
「はあ、じゃあ座りますけど」
ビアさん、ちょっと見ない間に随分としおらしくなったな。
そして女子力が増している気がする。
……多分気のせいではない。うん。
◇
「それで、あれから調子はどう?あの時は随分とダメージを負っていたと思うけど」
「あまり、調子が出ないんですよね」
主に能力のな。
「それはあんな事があったのだからそうでしょうね、体は大丈夫?」
「まあ、何とか」
そういえば元の世界に戻る時、ビアさんに無理やり返されたんだっけ?
……いやどうだったっけ?記憶が朧気だな。
「帰ってからはどうしてた?……いや、それは後で聞くとして。
あの後、みんな能力が使えなくなってしまったの。エルクに聞いたわよね?」
「それは聞きましたよ」
「それでも地下で影響を受けなかった数人の占い師が、
白☆チェンジで私たちを治してくれたわ。
でも、いつ能力が使えるまで回復するかはわからないの」
「そうですか」
なるほどね。あの時、事前に占い師達を地下に匿っていたってことか。
「……じゃあやはり使えないんですか?ビアさんも能力が」
「悔しいけどそうなのよ、白☆チェンジは何度かかけてもらったのだけどね。
治るまでにはどうやら時間がかかるらしいわ」
「そうですか……」
読めたぞ……。これは治るまで俺は帰れそうにないやつだな。
「とりあえずクロアも白☆チェンジをかけてもらってきたら?
そしたら調子も戻るかもしれない」
「まだ能力を使える人達がいるなら、希望がありますね」
「そうよね。それでやってほしいことはね……」
◇
「……じゃあ俺を今の大神官が呼んだってことですか?エルクさんを使って」
「ええ。それでできれば、役目を果たしてほしいらしいんだけど……」
……思えば、普通にガードしようとしたんだけどな。
俺の能力が弱っていたから、またエルクさんに呼ばれたわけだが。
……そういやエルクさんは能力を使えたってことか?
「……私が能力を使えるようになったら、すぐにでも元の世界に返すと約束しているから」
それはいったいいつになるんだろうな。ああ俺のチート生活よ、さらば。
◇
「……新しい制度が敷かれて、朝の運勢は強制的に聞かされなくなったし、
運勢が悪いものに強制的に白☆チェンジを掛けることも無くなったわ。
それでうまくいくのかどうかはまだわからないけど」
「前協会の制度がようやく変わりましたか。……それではあの人も願いが叶って喜んでそうですね?」
「まあね。それが一番の望みだったみたいだし?」
……それが原因で俺は振り回されたわけだが。
その上には大神官が居たわけだが、結局ボスが勝ったということでいいのか?
しかしこうなることを予測していたのかな。
「……ところでこの新しい連合の名前をどう思う?
二つの組織の名前を組み合わせてミスティフィア連合となったの」
「……ちょっと言いづらいけど、いいんじゃないですか?」
正直名前とか割とどうでもいいんだが。
「そう……。それで向こうの世界ではどう過ごしていたの?」
「別に、普通にここへ来る前と変わらないですよ。いたって平凡な日々で。
帰った日は懐かしいような、新鮮なような、少し変な感覚でしたけど」
「何か特別な変わったこととかは?なかった?」
「うーん……?」
能力が向こうで使える事は驚いたけど……。今言うべき事でもない気がする。
「……そうだ、紅茶でも飲んでいく?」
ビアはそう言うと、紅茶を入れる準備を始めだした。
「いや、俺もう行きます。
能力をかけてもらって、今の大神官に話を聞かなくてはならないんですよね?」
「そうなの……?じゃあ気を付けてね?」
ビアさんってこんなに話してくる人だったっけ?
もう少しツンツンしていた気がするが。うーん……昔より丸くなってるな。