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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第九章 日本編
106/128

運命のいたずらってやつは恐ろしいね

「…………」


「いや、なんか言ってほしいんだけど……」


「俺と今度デートでもする?」


「……」




「もういいよ。十分。ここまで考えてくれたからさ」


「そうですか?」


 内心ほっとしたが、何ださっきの気まずい空気は。

 予感の能力を当てにした俺が馬鹿だったな。

 今俺の能力が使い物にならないのは、わかっていたはずなのにな……。


「……じゃあ仕方ないから、と言いたいところなんだけど」


「と……言われますと?」


「それは無理になりそうだね。向こうの世界から、もうすぐお呼びが来るみたいだよ」


「え?」


「残念だけど、クロアはまだ向こうでやるべきことがあるみたいだね」


「まさかまた俺を呼び出そうと?俺の能力を戻す件はどうなるんですか?」

 俺のチート生活はどうなるんだ?


「いつか、その願いが叶う日が来るかもしれないね?」


「それなら白井さんも一緒に来てくださいよ?俺の護衛だったでしょ?

契約はまだ継続しているはずだ」


「そんなこと言っても無理だよ。こっちから向こうに行く手段はないんだから。

こっちから向こうに呼ばれることしかできないんだよ」


「そんな……」


「クロアも大変だね、でも今度はきっと前よりは良い思いができると思うよ?

あの世界には今救世主が必要なんだよ」


「それって」


「クロアがしたこと、自分でもわかってるんでしょ?あの世界は今大変なことになっているんだよ?」


「でもこの間は、あの世界を忘れて普通に生きようよって言ってたじゃん?

白井さんが嘘をついていたなんて思いたくはないけど」


「運命のいたずらってやつは恐ろしいね。簡単に未来を変えてくる」


「そんなうまいこと言っても、俺はもう騙されませんよ?

白井さんは未来がわかるんじゃなかったのか?」


「だから、これから平和になるって言ってるのは嘘じゃないよ。

……大体察しは付くでしょ?たぶん要は尻ぬぐいだよ」


「そんなこと言われても」


「じゃあ、頑張ってきてね」


「ちょっと待って、せめて何か助言を……」


 この宙に浮くような感じはまさか。


「助言かあ。未来は大体わかるけど……。今は言わないほうがクロアのためかもね」


 ひやあああああ。ちょっとまって!


 クロアは懸命に叫んだが、その場にその声はもう届かなかった。



「あ、クロアの存在がまたこの世界から消えたね。なるほど、これは面白い仕組みだね」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「どうしてこうなってしまったんだ」


「どうしてこうなってしまったんだ」


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



「やあクロア君、君を呼んだのは他でもない」


「……」


 せっかくこれから楽しい日々を過ごそうとしていたのに、邪魔をするとは。


「聞こえているのかい?」


「聞きたくありませんね」


「どうやら今回も、うまくいったみたいだね」


「今度はいったい何の用事ですか?もう俺にかまわないでくださいよ?

すでにエルクさんの願いはしっかり叶えてあげたでしょ?」


「その件については本当にありがとう……。

でもこれは……私の願いじゃないんだ。

私が元大神官の協力者ということがばれてね、君を再び呼ぶことになったんだ」


「じゃあ俺、関係ないじゃないですか」


「君にだって罪はあるだろう?世界をこんなことにした罪がね」


「ないですよ、俺は仕組まれていただけですし。操られていただけなんで。

今すぐ元の世界に返して下さい」


「それは無理な話だな」


「何でですか……。そうだ、前に何でも言うことを聞くと約束したでしょう?」


「それはそうだし約束は守りたいが、今は君を元の世界に返せる能力者がいないんだ」


「ビアさんがいるんじゃないんですか?すぐにでも会わせてくださいよ。

それに他の神官にだって能力を使える人はいるでしょ?」


「ああ、そりゃあいるけど、みんな能力が消えたんだよ」


「は?」


「君のせいで、みんなの能力が消えたんだよ」


 クロアはエルクからあの後この世界に起きたこと、

 黒い炎のせいで人々の能力が失われたことの説明を聞いた。



「まあ今の状況は何となくわかりましたけど……。

それで誰の頼みなんですか?俺をまたここに呼んでどうしろと?」


「まあ落ち着いてくれ。確かにみんな大神官に操られていたのかもしれない。

だが君もその騒動の一部だったといえるだろう?」


「そうですけど、それは大神官が企んだことで俺は悪くありません」


「……確かにそうかもしれない。だから今回はこうしてお願いしているんじゃないか」


「……それで?俺に何かメリットはあるんですか?」


「君もやっと話が分かるようになってきたらしいね」


「あの、そういうのもういいんで」


「この世界の人々は君に感謝するだろう。それがメリットだね。

君はこの世界の英雄になれるんだ」


「……え?それだけ?」


「実に気持ちが良いものだろう?」


「それじゃあ納得できませんね」


「そうかい?でも今君が頑張らなければ、もう元の世界には戻る事はできないだろうね」


「やらなければ、戻れないのか?」

 これはまた脅迫に近いな。俺の怒りの感情がまた溢れ出てきそうだよ?


「少しはやる気が出てきたかい?出たならば協会……いや連合の別館へと向かってほしい」


「連合?」


「協会と組織が手を取り合ってできた新たな組織だよ。

もう立派な建物もできていて、しっかりと運営をこなしているんだ。

もちろん君の事も連合からのお頼みさ」


「……ちょっと待ってください。

俺がいなくなって、どのくらいの時間が過ぎたんですか?」


「そうだな、ざっと数か月は経っているな」


 そうか、向こうでの数日がここでは結構な日にちが経っていたということか。


「……わかりましたよ、とりあえず行ってみます。

ここで何か言っても、もうどうしようもないだろうし」


「話が分かって助かるよ。では今すぐにでも状況を向こうで詳しく聞いてくれ。

何かあれば私も全力で協力しよう」


「……じゃあ本当に困ったら呼びますから来てください」


「わかった」


「……ところでここはどこですか?」


「私が入れられた地下牢だよ」


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