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世界は占いに支配されている  作者: 米 春幸
第九章 日本編
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白井先生と呼んでもいいですか?

「あの、白井さん。ちょっといいですか?」


「何?」


「能力についてなんだけど、話いいですか?」


「うん」


 クロアは白井を人気のない場所に連れ出した。



「俺の能力が使えなくなったんだけどさ」


「へえ……。どうしてだと思う?自分で考えてみた?」


「俺が私利私欲に使おうとしたからか?」


「それは人として良いのかどうか疑わしいけどね」


「確かにそうだけど……。じゃあデメリットの影響か?」


「そんなに能力を酷使したの?」


「いや一日に数回使用した程度だけど」


「それぐらいなら影響は出ないと思うし、原因はたぶんそれじゃないよ」

 白井はクロアの体全体をやんわり見て言った。


「ん?」


「……薄っすらと見えているんだよね、黒い靄が」


「俺自身に?自分では全然気が付かなかった」


「そうだよ、体の周りに纏わりついてるね。黒いオーラみたいに。

でも治す方法はあるにはあるんだよ?」


「わかった……。白☆チェンジの能力ですね?

白井さんが俺にかけてくれれば、治るんじゃないですか?」


「……確かにそうかもね?」


「その顔はまさか……」


「どうしよっかなー」


「お、お願いします。白の神官、白井様」


「……私に何かメリットはあるのかな?」


「何でもご協力させていただきます」


「ねえ、知ってるよね?私に喜びの感情がないとチェンジの力は増えないんだよね。

力がないとクロアの能力は元に戻せないかもしれないよね?」


「喜びの感情……」


「私を喜ばすことができたら、考えてあげようかな」


 白井さんが喜ぶ事とは一体何なのだろう。


 ……俺には想像もつかないな。


「…………」


 クロアは遠くを見つめて考えた。


「表情が固まっているようだけど、何か思いついた?」


「どう考えてみても……物で喜ばす方法しか思いつかない」


 何故だか今になって、一瞬ミルさんのことが頭をよぎったな。

 予感の能力のせいだろうか?

 そう言えばあれから……。何の話もせずにこの世界に帰ってしまったんだよな。

 あの後ミルさんは、一体どうしたんだろうな……。


「そっか」


「…………」


 以前のミルさんなら物で喜んでいたんだろうな……。

 少ししか一緒にいなかったけど……。

 まだ俺の中にはどうしても前のイメージのが強くてな。

 協会側の人間であれは演技だったんだよな……。


「……どうしたの?私の話聞いてる?」


「いや、ちょっと考え事してた。何でもないし……頭では聞いてるつもりだけど」


「物じゃなくてね、気持ちで喜ばしてほしいかな……私は」


「それはなかなか難しい話ですね」



「それで一体何をしたら喜ぶんですか?」


「それを考えて発表するのが、今クロアのすべきことだよ?」


「どうしても思いつかないんですよね。喜びね……。喜び。

喜びとは……いったい?」


「一体クロアはあの世界で何を学んできたの?」


「うっ……急に頭が」


「大丈夫?」


「いや、大丈夫。……それよりもあの世界で学んだことか」


 なんだろう……。前よりももっと人が信じれなくなった気はするな。

 思えば、俺はいいように使われていただけの気もする。


「白☆チェンジを使っていた白の神官達は……。

どのように人々に接していたかを思いだしてみなよ」


「……神官は人々に崇められていた。

それが自身の喜びへと繋がっていたということか」


「それも一つの例だね。実際その感情が力になると知っていたかは別として。

協会はそういうシステムを作り出していたんだよ。

感情を得てそれを能力の力へと変える……。それで世界は回っていたわけだよ」


「そうか、自分が知らないところでも……協会はうまく機能していたんだな」


「ってちょっと脱線してしまったけど、

私が言いたかったのはそういうことなんだよ?どういうことかわかった?」


「……つまり勉強と同じで、ちゃんと復習をしろということですね?」


「そう。よく、わかっている」


「白井先生と呼んでもいいですか?」



「……少し考えて今やっとわかりました。俺が今為すべきことが」


「ようやくわかった?」


「つまり白井さんを喜ばすのは……俺のその……たった一言で良かったんですね」


「なるほど?」


「その一言を言える勇気を、俺はあの世界で学んだ気がします」

 ここだけはエルク氏に感謝だな。


「そうなの?」


「やっぱ復習は大事ですね。じゃ……じゃあ恥ずかしいですけど言ってみます」


 やはり予感の能力も、そう言っているか。

 ここは……セリスさん、あの時の言葉を借りますね。


「あの、何か勘違いしてないかな?」


「え?白井さんこそ、何か勘違いしてません?」


「いや、この感じはどう考えても違うでしょ?」


「でも相手を喜ばせればいいんですよね?」


「いや、確かにそうは言ったけど」


「じゃあ黙って聞いていてくださいよ、俺の一言で喜ばせますから」


「……わかったよ」


「おれと……」


「……」


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