本気の勝負
「本気で勝ちにいっていいんだよね?」
「そうしてもらわなくちゃ、待ってた甲斐が無いからね」
どうやら白井さんは相当な自信があるようだな。
「……ところでルールは?」
「基本は前と同じでいいでしょ?忘れてるならもう一度説明するけど」
「それは助かる。能力の使用についてはどうする?」
「じゃあさ……今思いついたんだけど回数制限はどう?」
「具体的には?」
「一つの能力をこの試合中一回しか使用してはいけない。……どう?」
「それはなかなか良い案かもな。
……ということはガードの能力を使うのも一回までって事か?」
「そうなるね。でも今回は能力の使用を見張る人がいないから、困ったね?」
「でも俺、白井さんが不正とかする人じゃないって知ってるし」
「そう?」
「もちろん、言ったからには俺もしないからさ。あ、今から事前に能力を使うとかも無しね」
「わかった」
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・ルール
数字は1から13まで。引いた数がそのまま得点となる。
だが指定された条件がある。縁起の良い数字3、5、8なら得点は二倍として、
縁起の悪い数字4、9、13ならその数字分減点だ。そしてスペードのマークは死。
得点はゼロ点。ジョーカーも同様に0だ。それぞれカードを三枚引き、その得点で勝敗を決める。
それを5回行い、勝ちが多いほうが勝者。
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「では早速始めようか。カードのシャッフルは交互にするんだったよな。俺からでいい?」
「いいよ」
クロアはトランプの山札になるカードをシャッフルしていく。
……いつの間にか、カードの扱いにも手慣れたよな。
これぐらいは余裕でできるようになった。
……俺の現在の所持能力は9つ。白井さんには一体いくつあるんだろうか。
しかし能力が一回しか使えないこの条件なら、俺にも勝ち目があるはずだ。
今までの能力の知識と経験を活かして、ここは勝とう。
「……なんだかとてもすっきりした顔をしてるね?」
「そう見える?」
「以前と比べたら全然ね」
俺の内に秘めていた怒りは、あの時にほとんど消えただろうからな……。
「……でもそれ、この勝負とは関係ない話だよな。
カードのシャッフルは終わったから……山札から一枚ずつ引くんだよね?」
「そうだよ」
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青☆凝視
対象者一人が発動している能力を見破る。力があるほど正確にわかる。
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青☆凝視
対象者一人が発動している能力を見破る。力があるほど正確にわかる。
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「なるほど、考えてることは同じか」
「ふふっ」
「じゃあ引きます」
クロアはカードを山札から一枚ずつ丁寧に引いて、机に置いていった。
「……6、11、7か。スペードは無い」
よし、中々良い数字が出たか?
「じゃあ次は私が……」
白井はカードを山札から三枚一気に引いて、机に置いた。
「8、1、12で、スペードは1の一つか」
……このあたりで発動しておくか。
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緑☆直感視
対象者一人を見ることですぐ先の行動を予測する。力があるほど正確にわかる。
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……よし、これで次に白井さんがやってくることが分かったな。
「えっとこれは……24対28で白井さんの勝ちか……。
でもまだまだ勝負は始まったばかりだし。
次はそちらが山札をシャッフルするんだよね?」
「ねえ、その前にちょっと手を見せてくれない?別に疑っているわけじゃないんだけどさ」
「……嫌ですよ、手を見て俺に能力を使う気なんでしょ?」
「いいじゃん、ちょっとぐらい」
「今だけは拒否します」
……青の能力、手相視か。
能力でどんなことがわかるのかは知らないけど、用心に越したことはないよな。
◇
白井はカードを受け取り、華麗にシャッフルしていく。
「なかなかうまいね」
「そうでしょ?こういうのは自信あるからね」
「……じゃあ、次はそちらが先にカードを引く番ですね」
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黄☆キャッチ
物を探しだす能力。力があるほど強く探し出せる。
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「では、どれを引こうかな……?」
そうはさせませんよ?
すかさずクロアは能力を使った。
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赤☆刹那
対象者一人の運命の一つを一瞬のうちに変える。
複数の人間の運命が絡み合う場合は無効になる。
力があるほど正確に願った通りに変わる。エルク・ウィンにしか使えない。
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「えーっとカードの数字は4、2、7で7はスペードか……。これは、能力を使ったんだね?」
「……それは言いませんけど」
「なんで?別に言ってもよくない?」
「まあ確かに、今はあの世界にいるわけでもないし……。
って勝負の最中じゃないですか」
「さすがに騙されなかったか」
「……こういうのもありなんですか?」
「こうやって会話で駆け引きするのもさ、面白くない?」
「いや、純粋に持っている運と能力の勝負なのかと思ったので。
そういうことならば俺も考えないとな」
「まあ別にやりたいようにやればいいと思うけどね」
「……じゃあ引きますね。
12、12、8……スペードはひとつもない。これは今までの最高得点が出ましたね」
「やっぱり能力を使ってるんじゃん?」
「さあ……?たまたま運が良かっただけかもしれませんよ?」
「この結果でそれ言っても、全然説得力無いよ?」
「……えっとこれはあからさまな結果で白井さんはマイナス2で俺が40なんで勝ちですね……」
「マイナスって……そんなのありなの?」
「ルール上の計算では、そうなり得ますね」
◇
「三回目だね、クロアの番だよ」
もう俺のことはクロアって呼ぶのね?
「じゃあカードをシャッフルして……。さっさと引いてしまおうっと」
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オレンジ☆シャッフル
対象者一人の運命をシャッフルする。
力があるほど正確に願った通りに変わる。
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「えっと、数字は9、3、10で3はスペードだったか……」
なんか思っていたのと違うな。能力を使われたか?
「……何だか浮かない顔をしているね?じゃあ私も引くよ?」
「どうぞご自由に」
この様子じゃ、能力を使っているのは間違いないな。
「……8、8、2だね。スペード無し」
「えっとこれは……1対34で白井さんの圧倒的な勝ちですね」
「いよいよ私が勝ちにリーチだね」
「そうですね……」
俺もそろそろ本格的に能力を使わなければ、まずいな。
「どう?少しは焦ってきた?」
「そりゃあもちろん、俺だって情報は得たいですしね」
「そっか。ならもっと頑張らないとだね」
◇
「……四回目ですね」
シロンは山札を華麗にシャッフルしていく。
「そういえば、叫び声は言わなくなったんですね」
「そりゃあ、あれでは人に迷惑をかけるからね」
「確かに」
あれは結構迷惑な奇声だったよな……。
「あの後、大変だったけど何とか癖を直したんだよ」
「……そうだったんだ。どうやって直したんですか?」
「そりゃあいろいろとね……って今はそんなことどうでもいいじゃん」
「確かにそうですね。次はそちらが先にカードを引く番ですよ」
少しでも時間稼ぎをしようと思ったが、考える時間はくれないか。
「そうだね。さて、どれを引こうかな……?」
さすがにあの能力を使うのはまずいよな?
まだ調整ができないわけだし……。
しかし白井さん相手に白☆チェンジを使うのも、何だか気が引けるな……。
「どうやら、さっきから何か考えている様子だね?」
「いや、次はどの手でいこうかなあ、と……」
「……ねえ、この四回目だけはお互い何も能力を使わないことにしない?」
「それは……」
ここでそういう事を言ってくるのか。
「一回ぐらい、純粋に勝負をしてみたくてさ」
「まあそう言ってくれるなら、こちらとしては助かりますけど?」
「じゃあそれでいいね?私、何も考えずに普通に引くね?」
「わかりました」
白井はカードを山札からゆっくり引き、机に置いていった。
「……5、8、4か。あ、マークが全部ハートだ」
「これは本当の運が試されますね?」
「そうだね、本来持っている運の強さがね」
ここは何としてでも同点にしておかなければ……。
クロアは心を込めてカードを一枚ずつ引き、机に置いていった。
「……5、7、3でスペードは無しか」
「……ということは私の勝ち?
あれ、これで終わり?なんだかあっけないな」
「ちょっと待ってください、これはどっちだ?」
「え?私の数字のほうが合計数は上だけど?」
「えっと、計算が厄介ですけどルールに則って計算すると……。
22対……23でギリギリ俺の勝ちですね」
「数値上は勝っているのに、負けることもあるのか。何だか現実と同じだね」
「そう……ですね」
何だか急に深い事言ってきたな。
……もしかしなくても占い力の事だろうか?
「しかしここにきて巻き返してくるとは……もってるね」
◇
◇
「……いよいよこれで最後ですね」
「これで勝ったほうが真の勝者。
互いにようやく最高の能力をぶつけ合えるってことだね?」
「いや、たかがトランプの一勝負ですよ?そこまでやりますか?」
「この勝負のために私は待っていたんだからね?たかがとか言わないでね?」
「そうですか、白井さんにそこまでの思い入れがあるとは思いませんでしたよ。
……ではカードをシャッフルしますね」
クロアはカードを受け取り、念入りにシャッフルしていく。
「ここは重要な場面だから用心しなければなあ……。
能力を使われたら怖いから、今から目を瞑って引こうかなあ?」
ここは少し探っておこうか。
「別にそんなことしなくていいよ?
せっかく盛り上がってきての最後なのに、能力の妨害なんてしないし」
「本当に?」
「うん」
白井さんがそういうのであれば……。
相手の妨害など考えずに、今出来る限りの事をしてみるとするか。
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グレー☆予感
これから起こることを今までの経験に結び付けて察知できる。
力が大きいほど正確にわかる。クロアのオリジナル能力。
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これである程度の事を事前に知っておいて。
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黄☆カミングパワー
運を引き寄せる能力。勝負事で使え、力があるほど強く運を引き寄せる。
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これだな。
クロアは二つの能力を組み合わせて同時に発動した。
「……今この場面で、最高な能力の組み合わせを見つけましたよ」
「そうなんだ。能力はうまく組み合わせて使うと相乗効果があるしね。
じゃあ、引いてみてよ」
「引いたカードは…………10、11、12。
マークはスペード以外が見事にばらけています」
「確かに言うだけのことはあったね」
「でしょ?じゃあ、次はそちらが先にカードを引く番ですよ」
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
グレー☆運命掌握
???
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「じゃあどれを引こうかな……?」
もう俺に今使える能力は……ないよな。
やれることはやったはずだし、あとは運を天に任せるとしよう。
「はぁ……残念だけれど、これで試合終了だね。私は私の能力が恐ろしいよ」
白井は迷うことなく、山札からカードを三枚取った。
「え?」
クロアは机に置かれた三枚のカードをまじまじと見つめた。
「クラブの8、ダイヤの8、ハートの8……」
「どうやら私の能力は無事に効果を発揮してしまったみたいだね」
「これって取れ得る最高の値では?どんな能力を使ったんですか?
その能力チート過ぎませんか?」
「……まあね。でもこれで私もようやく満足することができたよ」
第二部はこれにて完結です。
ここまで読んでくださり、ありがとうございました。