足を引っ張っていると追放宣言された女騎士だが、それは嘘であった。本当の理由はエロ過ぎて戦闘に集中できないからである。
「女騎士、おまえを追放する」
魔王討伐のために組まれた勇者パーティー。
その道中、宿屋にてリーダーである勇者は女騎士にそのように宣言した。
「ど、どうしてなの!? 私何か悪いことでもした!?」
女騎士は勇者の手を握って訴える。
「そ、それは……お、おまえがだな、こ、このパーティーの足を……ひ、引っ張ってるからだ」
先ほどの強い発言から一転、しどろもどろになって理由を述べる勇者。
この理由は嘘であった。
本当の追放理由は女騎士がエロ過ぎるからである。
正面からエロ過ぎるなんてこの童貞勇者からは言えず、このように嘘を吐いている。
女騎士の見た目は俗に言うビキニアーマーと呼ばれるものだった。
装備に魔法の力が込められているため、そんな見た目でも防御力が高いのである。
そうして魅力的な肢体を常時晒しているため勇者パーティーの残りの男たちはいつも目のやり場に困っているという状態だった。
「足を引っ張る? そんな、私はパーティーのタンク役としていつも前線で体を張ってるのに!?」
だから後ろの勇者たちが尻に目が行って戦闘に集中出来ないのである。
「あ、もしかして今日の戦闘で僧侶を守り切れなかったこと? でもあれは僧侶が私の防御範囲の外に出て……」
それはエロジジイの僧侶が横乳を拝もうとした結果なので自業自得だ。
「そういえば魔法使いも戦闘の後、鼻血を出して倒れちゃったな……いつの間にか敵の呪いがすり抜けてたなら私が悪いけど……」
倒れた魔法使いを起こそうと女騎士が屈んだことで谷間が見えたせいである。
と、このように女騎士が悪いわけではないが、これ以上一緒にやっていくのも限界だと判断して今回追放に踏み切ったのである。
「と、とにかく。パーティーの新メンバーも決まってるんだ。男騎士」
手を握ってくる女騎士を鉄の意志で振りほどいて、勇者は新しいパーティーメンバーを紹介する。
「はーい、よろしくねえん」
「……ん、あれ? 男性のタンク役ってことで募集したはずだけど……あれ?」
二人の前に現れたのは屈強なオネエの男騎士。
「そういうわけであんたの席はこのパーティーに無いのよ、子猫ちゃん」
「そ、そんな……」
相対して分かる彼我の実力差。子猫と呼ばれるのも無理ないだろう。打ちひしがれる女騎士。
「分かり……ました。勇者は魔王討伐のために強者が求められる……悔しいですが納得です。今までありがとうございました、勇者様」
女騎士は一礼して去っていく。
「あ、いや、やっぱ待って。追放は無しに……」
「うーん、勇者ちゃん。やっぱりいい男ねえ!」
「ひ、ひぃっ!!」
男騎士に太ももを触られて悲鳴を上げる勇者。
「これからどうしよう……」
途方に暮れる女騎士が宿屋から出てトボトボと歩いていると。
「あ、あの、すいません!」
同じく宿屋から出てきた一人の女性が慌てた様子で追いかけてきた。
「何でしょうか?」
「あの、今のやりとり見てました。その、パーティーを追放されたんですよね?」
「あはは、お見苦しいところを……」
「その、でしたら私のパーティーに入ってもらえませんか!!」
こうして。
「防ぎます!」
「ナイス、女騎士!」
「回復は任せて!!」
「よーし、アタシの魔法いっくよー!!」
女騎士は新たに女性四人のパーティーに入り活躍していた。
エロい目で見てパフォーマンスを下す仲間がいないことで、十全に力を発揮出来るようになり、パーティーは有名になっていく。
一方、その頃。
勇者パーティーはエロい目で見て事故こそあったものの、チームの紅一点、女騎士がいなくなり、ムサい野郎だけのパーティーではやる気も出ず、当然のことながら転落の一途を辿っていた。
「うーん、勇者ちゃんに劣らず僧侶ちゃんも魔法使いちゃんもいい男ねえ」
「じ、地獄だ……」
「生活の張り合いが……」
「女騎士戻ってきてくれよぉ……」